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書評日記  パペッティア通信

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Jan 24, 2007
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カテゴリ:経済
2007-01-24 18:45:45

▼   とても良い本だわ。 何よりもメッセージが明快。 定義できるはずもない「国益」「国策」によって翻弄された、戦前日本を病理を徹底的に暴き出しているの。 満鉄創立100周年の2006年。 時宜をえた本ね。 これを読んだ貴方は、「国家戦略」などと語る奴を信用しなくなるでしょう。 とても良いことだわ。


▼   みんな知ってる通り、満鉄は国策を体現する会社だったはず、でしょ。 でもね。 日露戦争時、満鉄の元になった東支鉄道南部支線は、なんの位置づけも与えられていなかったの。 負担を考えて、鉄道王ハリマンに手放す意見もあったんですって。 でも、経済的収益をどうやってあげるのか、経営的成功の見通しもないまま、「血と犠牲」でえられたものだからというエモーショナルな観点で、講和条約では譲渡要求せざるをえなかったのよ。 会社作りという話だけ、先行してしまったの。 また、関東都督府だけでなく、領事館警察を掌握して邦人保護にあたる外務省、満鉄のいわゆる「満州の三頭政治」が始まってしまうの。 役所の縄張り争いのひどさは、今の非じゃないわね。 


▼   満鉄は、初代総裁後藤新平が経営を軌道にのせるわ。 しかし、満鉄の位置づけの曖昧さに我慢ならなくて、後藤は桂太郎に接近して中央政界に進出するの。 目指すは、全植民地経営を統括する機関の設置ね。 しかし原敬が、立ちふさがるの。 満鉄「経営」を前面に押し出して満州を安定化させたい後藤と、あくまで政府のコマとしか満鉄をみない原。  経営は、2代総裁中村是公の手腕で安定化するんだけど、長州閥と個人的つながりしかない後藤は、政党政治家原敬に屈服する運命にあったのよ。 原以降、満鉄には政党勢力が浸透していって、草刈り場のようになっちゃうのよ。


▼   ひどいわよね。 寺内内閣は、3頭政治を解消するために、「満鮮一体」の統轄機関をつくることを考えて、関東都督府に満鉄監督権限を与えるわ。 ところが、原内閣では、都督府を解体して民政(関東庁)・軍政(関東軍)に分割、満鉄中心の植民地経営に舵を切るの。 それは、政治では張作霖を押し出して、経済では満鉄を押し出す政策だったわ。 一〇年間、日本の満蒙政策のスタンダードになるくらいなんだから、やはり立派な政治家みたいね。 政党で政権をえる原敬は、満鉄を政友会の利権にしなければならないの。 満鉄を舞台とした政治資金捻出がばれたのもキッカケとなって、東京駅で暗殺されてしまうわ。 田中内閣になると、今度は「拓務省」による統一的植民地政策の遂行が指向されるの。 いったい、どこまで制度をいじって遊んでいるのかしら。 どっかの国の、首相補佐官制度みたいよねー。 恥ずかしいったらありゃしない。(笑)


▼   結局、満鉄の歴史で一番重要なのは、松岡洋右らしいの。 「満鉄中心主義」が採用された後、理事に入って、副総裁・総裁と一〇年間つとめるから。 とくに、この時代は、ロシア革命以降、満州南北分割の密約が反故にされて、東支鉄道と満鉄が競合する時代に突入したとき。 満鉄拡大政策の陣頭指揮をおこない、支えたらしいわ。 松岡って、国際連盟脱退、日ソ中立条約のバカイメージしかないのけど、ソ連と手をむすぶためには、ソ連を可能な限り満州から駆逐しなければならない、と考えていたんですって。 へー。 この拡大路線をめぐって、外務省と満鉄は激しく対立。 「満鉄―関東軍―張作霖」ラインが形成されるわ。 これは満州事変の時の、軍と満鉄二人三脚の遠因になるそうよ。 山本条太郎社長時代には、副総裁昇格。 満鉄による「製鉄・製油・肥料」の三大国策・重工業化を指揮するの。


▼   そんな満鉄全盛期を築いた「山本―松岡」体制だけど、パートナーの張作霖が、全国政権的になってくると、日本の言うことをばかりはいられないのは当然よね。 そんな当たり前のことを理解しないで、関東軍が逆恨みして殺してしまい、ジ・エンド。 バカはどこにもいるものよ。 おかげで、満鉄はパートナーを失い、怒りに燃えて、「国権回収」をめざす張学良に、「満鉄包囲線」で追い詰められるわ。 本当は、銀安によって、安い鉄道運賃の中国側路線に貨物が行っちゃった上、大不況で購買力が減少したためなんだけど、満鉄は逆恨み。 満州事変をおこす関東軍に、満鉄は協力してしまうの。


▼   満州事変以降の満鉄は、「猿回し」の猿のよう。 悪の親玉は、十河信二。 元々中堅・若手は、張学良などへの不満を鬱積させていたのね。 彼は、後に「焦土外交」でしられる時流に便乗しか能のない、内田康哉社長をうまくのせて、満鉄と関東軍の完全な一体化に成功させてしまうわ。 1935年には東支鉄道がソ連から譲渡されて、懸案の1つは解決。 また関東軍は、領事館権限を外務省から接収。 1934年には、満鉄改組騒動を巻き起こしながらも、関東軍は、関東庁権限と満鉄監督権を拓務省から奪っちゃうわ。 これによって関東軍の権力が確立。 満鉄は、事変後、鉄道会社としては絶頂期を迎えるけど、もはや政治的役目は終わって、ただの関東軍・満州国が要求する「国策」を実行するだけの組織に成り下がるの。 満鉄は、自分の死刑執行命令書にサインしたのね。


▼   そんなとき、松岡が今度は総裁として戻ってくるわ。 今度は、中国進出なんていうんだから笑っちゃうわ。 そんな野望もむなしく、満鉄は最後のトドメをさされちゃう。 1934年以降、中央から満州に革新官僚がどんどん送りこまれたの。 そうなると、満鉄は産業開発・企画立案でも、用済みになっちゃうわ。 1937年、日産の満州移転にともない、「満州重工業」が発足するわ。 改組しちゃえ!! 鉄道事業以外の付属事業は、切り離しがすすみ、満州重工業などに譲渡させられるの。 これを主導したのは、何あろう、松岡の親戚で、アベ首相の祖父、岸信介。 岸に背後から松岡ちゃん刺されちゃったのね。 やることが違うわ、長州人。 


▼   第二次大戦になると、大豆流通は壊滅。 大連は衰退するわ、自由闊達な空気は無くなるわ。 「大陸=満州=朝鮮半島」経由で日本に物資輸送を命じられるけど、港湾と停車場設備が未整備のままだから、物資が朝鮮半島で野ざらしなのよ。 おまけに対ソ戦に備えるべく北満向輸送を強化するべきなのか、内地向輸送を強化するべきなのか、迷走しまくり。 結局、どっちもまともにやれていないまま、戦争に負けてしまう。


▼   満鉄の最後は、笑うしかないわ。 満州国も8月18日に消滅。あれほど偉そうにふるまった関東軍が、満鉄に150万人の日本人の命運をすべてを押しつけて、45年9月5日に消滅。 ソ連軍は、満州国の旧日本資産を没収・移送をおこなうなど、12億ドルの大損害を東北地方に与えたのに、没収した資産は、ドイツのも含めてみ~んな野ざらしなのよ。 インフラなしでは鉄くず同然。 いい気味よね。 本書の最後では、満鉄の国策性を忘却してノスタルジーとして扱われることに警鐘を鳴らしているわ


▼  「国策」なるものがいかに無責任か。 満州国がいかに「官僚にとっての天国」にすぎないものであったか。 権力の割拠性がどれほどの被害をもたらしたのか。 日本社会の病理のシンボルこそ「満鉄」であって、今こそ病理に向き合わなければならない。 なかなか格好良くて、痺れるわねー。

 
▼   なにより新鮮なのは、田中義一内閣の評価かしら。 陸軍随一のロシア通は、ソ連と満州の利権分割によって取引可能と見ていたらしいの。 政策立案できる有能な軍人で、政党の重要性を理解していた最後の長州閥らしいわ。 また、あの中国残留孤児を生んだ「満州移民政策」は、実は権限は大きいのに組織がなく、リストラされる危機にあった、拓務省の組織拡大・防衛策のため案出されたものなんだって!! 許せないわよねー。 高橋是清なんか、松岡同様、移民で苦労したから、「移民なんて可哀想だから止めとけよ」で予算計上しなかったらしいの。 苦労人がいない、アベ内閣に爪のアカでも煎じて飲ませてやりたいわ。 豆知識も、いっぱい。 複線と単線では、輸送力に3倍以上の差が出るらしいの。 満鉄東京支社は、今、アメリカ大使館になってるそうよ。


▼   ただ、やっぱり弱点があるように思うのよねー。 なんといっても、満鉄「全史」のため、政治「事件史」に堕してしまい、満鉄経営の部分や中国ナショナリズムとの衝突など、肝心の部分を把握できかねてしまうわ。 いくら、「国策」と満鉄の絡みを描いているとはいえ、「満鉄」をとりまく満州の状況をもう少し説明して欲しかったわ。 


▼   それに、「権力の割拠性」とか同床異夢の状況などをとりあげて、無責任さが問題視されているけど、これって日本だけの現象かしら。 「国策」「国益」「国家戦略」なるものは、当事者各々が勝手に定義できるがゆえに、徹底的に無責任なものだったのではないかしら。 満鉄と日本をとりあげること自体、あらゆる時代、あらゆる国家の「国策」は、無責任で不統一でテンデバラバラであるという構図を取り逃がしてしまうのではなくって? この次元でこそ、誰も厳密に定義できないがゆえにめいめいが勝手に描いている、「国策」「国家戦略」「国益」の幻想性を批判できるのではないかしら。 また、鉄道線路拡大のときの路線図説明が本当に分かりにくくて腹がたったわ。 それぞれの日中交渉別に色分けするなり図に工夫がほしかったと思う。


▼   それでも通史的な価値は、相当なものね。 講談社選書メチエにしては、いい本だと思うわ。 講談社現代新書に買う本がないぶん、すすめておきたいわね。


評価  ★★★☆
価格: ¥ 1,680 (税込)


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Last updated  Sep 2, 2007 02:19:23 PM
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いつも楽しみにしております   bt さん
初めて書き込みさせていただきます。いつも読ませていただいております。
ところで、おねえ言葉はいつまで続けられるのでしょうか?それともこのままずっと、この言葉づかいでいかれるお考えなんでしょうか。 (Jan 27, 2007 01:59:48 AM)


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