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テーマ:社会関係の書籍のレビュー(95)
カテゴリ:社会
![]() ▼ 読書が趣味だと周りに知られると、ある作家を読んでいないことについて、しばしば非難されることがある。 「えー、京極夏彦読んでいないんですか。 てっきり読んでいるものとばかり」 悪かったな。 森博嗣ともども新本格は嫌いなんだ。 「『裏切られた革命』読みましょうよ」 だから、俺はマルクス主義者じゃないんだって。 ▼ 小谷野敦は、そんな読んでいない人の一人である。 ごたぶんにもれず、「『もてない男』は面白いですよ。 小谷野敦は貴方にあうと思いますよ」なんて、わざわざお節介焼いてくれる。 いらんお世話だ。 だいたいアカデミズムには、「一学者、一仕事」 ――― 学者にとって、本当に素晴らしい仕事は、生涯に1つだけである ――― という恐ろしい格言があるのだよ。 他にも、「学者は処女作に向けて成熟する」というのもあったな。 ▼ 小谷野敦や福田和也や仲正昌樹や香山リカには、膨大な著書がある。 ということは、たくさんの仕事をしているのでは、無論、ない。 逆に「何一つ仕事をしていない」とみるべきなのだ。 彼らが死ぬ直前になって、「俺の真の仕事はこれだ!!」とでも遺言を出してくれたら、まあ読んでみようかね…… ▼ などなど、減らず口を叩いていたのだが、本屋で偶然、小谷野敦の新刊が出ていたので手に取って立読をはじめたら止まらない。 つい、購入してしまったのである。 うーん、仲正のときとパターンが同じじゃん。 進歩していないねえ。 ▼ 要するに、ヘナチョコ知識人は去れ、という本である。 エッセイである。 気楽に読む本である。 個人的に面白かった部分を列挙すると…… A 今の若者は、司馬遼太郎すら読まない。 高校と大学を減らせ! B 豊かな社会になると、遺伝によって、 かえって階層移動は起こらなくなってしまう C 武士層は徴税権だけもって土地を持っていない奇妙な貴族階級 D カルスタ派と「江戸ブーム」派の野合で、江戸時代がパラダイスに E 舞妓・芸妓は、徳川期の売春文化の名残 F 「妻」は関東武士の嫁取婚で発生した同居女性、 「女」は通い婚の女性 G 近世を知らない知識人 …… フロイト・ニーチェの悪影響 H 「○○とは何か」は決して真正な問題ではない I 近年、「病理」が多いように感じるのは、 昔はそんなことに構ってられなかったからだ J 所詮、2チャンネルにできることは「うがち」や「ちゃかし」 K 笑われることを恐れるな L ポストモダンは「やけくそ哲学」(『知の欺瞞』の池田雄一書評) M 「家族の多様性」「男女平等」をいいながら男性の貞操義務違反、 「夫が働かない」という訴えに飛びつくフェミニスト弁護士 N 女性のフェミニスト学者は、才色兼備で結婚もしていながら、 そのことを隠し「結婚は桎梏だ」などといいやがる O 性表現を取り締まるんなら、暴力表現も取り締まれ! P 国文学の4悪人、中村真一郎、梅原猛、加藤周一、丸谷才一 Q エンタシスは法隆寺に影響、写楽の正体は不明……はウソ R 禁煙医師連盟に精神科医を加えないのは、体質的に不可能な人 もいることが解ってしまうからだ!!!! S 「喫煙することで世界を我有化するのだ」(BY サルトル) T 嫌煙運動が隠蔽しようとしているのは、 遺伝子が寿命を決定するという事実だ! ▼ うーん、たしかに面白い。 なにせ、天皇制反対で再軍備賛成、であんまり考えが違わない。 おまけに、文学の世界なんかあんまり知らないので、結構、目から鱗が落ちたりした。 わたしの友人の見立ては、実に正しかったのかもしれない。 ▼ ただ、どうみてもオカシイと思える部分も多い。 シニシズムをファシズムと結びつける北田暁大を「シニシズムを礼賛している」と書いたり、あとがきでイスラムの教義の危険性を主張して「異教徒など問答無用で殺しても良いのである」と絶叫したり。 アホかいな。 キリスト教の教義では、「愛」が強調されているから、キリスト教徒は愛溢れて危険のない人々なのか? そんなもの、キチガイを初めとした読み手側が、「聖典」「教義」の中で、「啓示」(欲しいと思っていた文句)を「発見する」だけだろう(小谷野がそうであるように)。 教義うんぬんなんかでは断じてない。 ▼ 禁煙ファシズムの部分は、暴走というしかない。 「自動車の排ガス」こそ、肺ガンの原因で、禁煙推進団体は自動車から金を貰ってる!!!! まあ、禁煙ファシズム批判全体を知っているわけではないので即断できないが、小谷野は途上国の都市に行った経験がないのだろうか??? 一度でもいいから、途上国の都市に住んでごらん。 日本とは排ガスが比べ物にならないほどキツイから。 目黒区なんて、ぜんぜん排ガスがない地域だよ。 日本くらい、都市の空気が綺麗な国は、本当に少ない。 小谷野の妄想が正しければ、途上国では日本の何倍も排ガスなどの化学物質が舞っているんだから、男女問わず(あたりまえだ)、肺ガン発生率が高くなっていなければおかしい。 そんな統計、すぐ出せるだろう。 くだらないこと言わないで、とっとと実証すればいいのに、何故しないのだ? ▼ 私自身まったくタバコを吸わない。 しかし、タバコの煙は、あまり気にならない。 「ちょっと失礼」といわれて、「吸わないでくれ」なんていったことは、一度もない。 てか、タバコの臭いは、子供の頃、好きだった。 ただ、そんな僕でも、吸って良い場所だろとばかりに、何の断りもなく吸い始められたら、さすがにムカっとくる。 この辺が、タバコを吸わない人の典型的な心性ではないだろうか。 結局は、そんな些細なことから、「自動車団体から金をもらう」という誹謗中傷にいたるまで、喫煙者にはデリカシーというのが乏しいのだろう。 「禁煙ファシズム」的状況とは、自らが蒔いた種、としか思えないので、同情する気がまったくおきないのが困りものだ。 ▼ しかし、文庫版で廉価だし、一応買って損は絶対ないとおもう。 評価: ★★★ 価格: ¥ 500 (税込) ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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