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書評日記  パペッティア通信

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Jun 13, 2007
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カテゴリ:政治
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▼     鉄道を通してみえる近代日本。 ただの「鉄っちゃん」のオタク話と思うと、とんでもない大間違い。 前作『鉄道ひとつばなし』の続編だが、続編特有のいい加減さは皆無。 「ひとつばなし」と銘打たれていることから分かるように、講談社『本』に連載されていたコラムをまとめただけ。 まとめただけにすぎないはずなのに、とてもそのようには思えない。 40以上のテーマで、縦横無尽に鉄道を論じていて、とにかく楽しくてたまらないのである。


▼     田舎に新幹線を走らせると、普通、東京に出やすくなると思いがち。 でも実際は、ローカル線の廃止や本数削減によって、かえって不便になってしまう。 東北地方は、東京に出やすくなって東京依存を強める一方、隣県への移動が困難になり、いっそう地方の分断化が進んでいる!!!という戦慄すべき現実をご存じだろうか。 本書では、そんな「常識の罠」を次々と否定していく。 戦時下でも、行楽客であふれた関東私鉄沿線。 地上の専用軌道が環状線運行されている所は、ベルリン以外、大阪と東京しかないという。 地下鉄環状線を含めても、ロンドンに次ぐ古さをもつ、山手線。 高級イメージとは乖離した、東急田園都市線の混雑ぶり。 西武鉄道は、当初学園都市を目指し土地買収こそ積極的だったものの、西武沿線を開発したのは、日本住宅公団や東京都住宅供給公社であって、西武本体ではなかったらしい。 そのため西武駅前は都市計画がないデメリットとして、住宅が密集してバスターミナルもないのだとか。 正力松太郎の夢の欠片、全国唯一の新聞社名の付いた駅名、「よみうりランド」物語も面白い。


▼     近年は、マーガレット酒井順子先生のような、女性の「てっちゃん」が増えているとはいうものの、筆者は、大学生以降、「鉄道オタク」と女の子に思われないように、「隠れキリシタン」のような生き方をしてきたという。 そのためか、故・宮脇俊三先生のあとをついで、自己を妙に客観視する鉄道紀行があるかとおもえば、「あさかぜ」廃止を嘆くくらいなら、鉄道オタクよ、連帯して抗議せんかい!!などと、熱血漢ぶりを示す箇所もあるなど、振幅の激しさがおもしろい。 宮脇先生の衣鉢を継いで書かれた「日本鉄道全線シンポジウム」(なつかしい!)は、スピード化批判が駅名自慢に脱線したりしていて、抱腹絶倒の面白さだった。  「独断・日本の駅100選」ともども、必見の箇所といえよう。 
  

▼     むろん、原武史は、何もかわっていない。 1876年輸入された御召列車には、鉄道運転制御装置がついていたのに、1891年輸入御召列車には付いていない。 これは「馬車の延長として鉄道を自由に止めることができる」天皇から、「あらかじめ設定されたダイヤに従わざるを得なくなった」天皇への移行があるのだ ……… 。 平成天皇は、グリーン車を利用するなど、開かれた皇室を目指しているため暗殺の危険が増大しているが、「暗殺の対象になる天皇」というものが、昭和で終わってしまったことを示すのだ ……… 。 2003年8月10日に沖縄空港~首里城間に開通したばかりの沖縄都市モノレール「ゆいレール」は、時間や行列にならぶことに無頓着な沖縄市民を教育する役割を担っているのだ ……… 。 地下鉄は、皇居の存在を希薄にしたように、北京・紫禁城の存在を希薄にするだろう ……… 。 女性専用車と在来線グリーン車の時を同じくした復活は、「70年代型民主主義」が破綻したことを示す ……… 。 あいかわらず、原武史節が炸裂していることがお分かりいただけよう。


▼     むろん、テーマは日本国内だけにとどまらない。 オレゴン州ポートランド。 そこは、中心部50万/都市圏180万人の人口にすぎないのに、アメリカの都市とは思えぬ70キロもの鉄道路線をかかえ、2~4両の路面電車が、郊外では時速70キロで走っているという。 また、台湾や中国大陸の鉄道事情も収録されているが、イギリス鉄道事情が大変な面白さだ。 ロンドン・ケンブリッジ間は、平均120キロをこえる列車が走るのに、特急・急行・普通といった区別がないらしい。 アリストテレスのいう最高の生活、「観想的生活」をも可能にする、イギリスの緑あふれるホンモノの田園都市の優雅さにはため息がもれてしまうだろう。 私鉄による路線整備が進められたイギリスでは、1948年から1996年しか国鉄は存在せず、汽車を前提として鉄道路線が敷設されたため、橋やトンネルの高さが低く、第三軌条方式でしか電化できない所が多い。 そのため、せっかくのユーロスターも、イギリスではスピードを出せないという。 また、イギリス鉄道は意外と遅れない。 「鉄道は英国の自由主義の実現だ」 ―――― 長谷川如是閑の言葉にはうならされる他はない。  


▼     本書の白眉は、「失われつつあるもの」「存在しなくなってしまったもの」への哀悼・渇望にあるといえるだろう。 戦前の名残ともいえる客車列車が、国鉄からJRへの移行を契機として消えてしまったこと。  イギリスは鉄道マニア大国だけど、日本とはまったく違うこと。 日本各地の「駅弁」「駅そば」文化を絶滅の危機に追いやる、JR直営店の強引な市場参入に対する告発。 宮脇俊三『時刻表2万キロ』(河出書房)への惜しみない敬意と愛情。 これぐらい郷愁をかき立てられる秀逸な鉄道紀行は、なかなかお目にかかるものではない。 


▼    あいかわらず、理論的にいい加減な部分が散見され、ホンマカイな?というような部分も多い。 たとえば、隣県どおしをつなぐ鉄道や、東京へ向けた鉄道幹線の建設がなかなか進まなかった四国地方では、鉄道とともに全国に普及する「1分単位」で時間を気にする感覚がなかなか定着しなかった、という。 あいかわらず、ラジオやテレビ・学校教育では、1分単位で気にする時間感覚が育てられない、とする説明がどこにもない。 鉄道が走っても時間にルーズな人々はいくらでもいるではないか。 また、PASMOの導入は、「官尊民卑」を打破するのではないか? と言われても、そんなもので無くなる訳がないだろう、とツッコミを入れたくなってしまう。 筆者によれば、鉄道オタクは、助手席に女性を座らせたいというギラギラした所有欲をもつ車オタクとは違い、権力欲とは無縁の「男らしくない」集団だから、鉄道マニアには女装趣味者が現れるのはおかしくはないのだそうだ。 『萌える男』『電波男』の本田透かよ!!!!!お前は!!!(笑)


▼     とはいえ、旅行記としても、鉄道うんちく話としても、日本近代史としても、いずれにおいても、水準を満たしていてすばらしい。 鉄道マニアは言うまでもなく、旅行好きな人、日本の近代について考えてみたい人、など、すべての方々にお薦めしておきたい。



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追伸   A 相生のかきめしは美味しいらしい。 一度食べてみたい。

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Last updated  Jun 14, 2007 11:18:17 AM
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