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Aug 16, 2007
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カテゴリ:歴史
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▼     「八月ジャーナリズム」の時期がやってきた。 この時期になると、テレビでは、それまで見向きもしていない、「ヒロシマ・ナガサキ」を語りだす。 そして、「ヤスクニ」参拝の是非を問う。 八月は、出版メディアのかき入れ時なのか、本屋にも戦争本が並ぶ。


▼     この本も、そんな1冊、のはずだった。 


▼     しかし、その読後感は、これまでどの本でも体験したことのない、奇妙な、類例のないものであった。 もし、少しでも興味があるのなら、このブログを読むのをやめて本屋に行って欲しい。 この本は、内容そのものではなく、あなたに与える読後感にこそ、価値があるように感じるからである。 その苦い味わいをここで知ってしまうには、あまりにも惜しい。


▼     もう一度、訪ねたい。 これ以降、このブログを読んでいる皆さんは、最初から、読む気のない人なのですね?


▼     さて、本題に入ろう。 この本では、「日中戦争」「太平洋戦争」とは呼ばない。 当時の呼称にこだわりたい、という。 「支那事変」「大東亜戦争」……こういう用語を使うと、ともすれば右翼、と思われがちだ。


▼     しかも、著者の「軍神論」自体、実にたわいのないものである。 なにせ、日本近代史上最初の軍神は、「廣瀬武夫中佐」「橘周太少佐」。 第2章「乃木希典」。 第3章が「軍神にならなかった軍神」としての爆弾三勇士。 第4章が、日中戦争・大東亜戦争の軍神たち ――― 杉本中佐、西住戦車長、山崎軍神部隊(アッツ島玉砕)、山本五十六、加藤少将(加藤隼戦闘隊)、9軍神(特殊潜行艇) ――― というようになっていて、時代をこえて、わずかな事例を比較研究をしようというものだ。 なんとも、お手軽な企画ではないか。


▼     当然、軍神論は、皮相的で、あまり面白いものではない。 軍神とは、戦争によって強まった、日本人の一体感の中で誕生した、涙に縁どられた物語であって、栄光の物語ではない。 明治時代の軍神は、豪傑偉人で誰にでもなりうるものではなかった。 それが昭和期になると、おのれの命を味方のために捨てる決断をするだけで誰でも軍神になれてしまうという。 軍神の世界にも、デモクラシーが訪れたのだろうか。 とりわけ、士卒にすぎない「爆弾三勇士」「9軍神」の物語は、エゴイズムを押し殺して任務をはたす、日本民族固有の精神の発露とされただけではなく、「武士道」になぞらえられた旧軍神に対して、「国民道」の体現者(三勇士)、とみられたという。 男子は三勇士に、女子は三勇士の母親に、「泣く」ことで感情移入させていく。 かくて爆弾三勇士は、「9軍神」をへて、特攻隊への橋渡しとなる。 結果がどうあろうと、立派に死んでいったものを悼む……


▼     むろん、上記からみても分かるように、つまらない本という訳ではない。 乃木大将の殉死は、奥さんまで殉死したことで、庶民の異様な興奮をまきおこしたらしい。 当初、軍神は、近代西洋からの直輸入である「銅像」の形態で祭られていたが、乃木以降、「神社」として祭られる動きがすすんでいく。 東郷平八郎などは、「軍神にされるなどマッピラご免」と断っていたにもかかわらず、「神社」にされてしまったらしい。 とくに、大東亜戦争期の日本軍が、西欧化の波に洗われる中で、日本固有の精神「覚悟」を守り続ける中核とされていたこと、日本的精神の担い手は農村の住人だったことなどは、なかなか興味深いものがあるだろう。


▼      とはいえ、「武士道」「理屈を超えて感動を与える出来事」などとに分かれ「自決の意味」をめぐって混乱していること、または当時の日本人が「西欧人の評価」を異様に気にしていること程度に終始していて、新しい知見に乏しい。 とくに、爆弾三勇士の銅像建立が遅々として進まなかったことについて、「エリート層は案外冷静だった」(250頁)などと、おマヌケなことを言っていて呆れてしまう。 この点は、「新聞メディアの民衆扇動」として批判する前坂俊之『太平洋戦争と新聞』(講談社文庫)でも、同じだから困ってしまう。 たんに、「爆弾三勇士=被差別部落民説」という噂が流布することによって、庶民の「爆弾三勇士熱」が冷めてしまっただけにすぎない。 前者はエリートを高く評価しすぎ。 後者は大衆の自律性を過小評価しすぎ、である。 戦前の大衆の暗部になると、妙にスルーする傾向が大きいのは、納得がいかない。 


▼     しかし……


▼     この本は、最後、「詩」によって締めくくられる。 1945年7月28日、海軍航空機に搭乗中戦死した、パイロット、林尹夫。 かれは、「1億総特攻」が叫ばれる中でも、敗戦は不可避であることを知っていた。 そして、「自己犠牲」を逃れがたい運命と思い定めながらも、この国が遠からず屈服するであろうことを予測していた。  この希有の知性の持ち主が残した詩が、本当にすばらしい。 正字体・歴史的仮名遣いに改められているが、現代仮名遣いで全文収録したい。 (注 mitleben=ともに生きる)


▼     日本帝国終末


      没落と崩壊  デカタンス

      亡び残るものなにもなし

      すべての終末

      今年の秋は

      淋しく冷く風が吹きすさび

      残るものはなにもなくなろう



      そこに残る人は

      ちょうど今宵のような

      冷たい風が吹き

      松が鳴る音を聞きながら

      泣くにも泣けぬ寂しさに

      耐えきれぬようになろう



      お気の毒だが  私はもう

      あなた方とは縁なき者なのだ

      我らとmitlebenしうる者は

      今年の夏まで

      生きぬ者に限られるのだ

      そして  それ迄に

      死ぬべく運命づけられぬ者は

      我らとmitlebenしうる

      権利をもちえないのだ



      かつて存在した人間関係は

      すべて深い溝で切断され

      我ら  もはやなんの繋がりも

      持ち得なくなっている



      親しかりし人々よ

      あなた方はいま

      いったい生きているのか

      それとも  明日の再建をひかえて

      生命の源泉を培っているのか



      だが

      現在の生なくして

      なんで明日の生が

      存在しえようか



      すべては  崩壊する

      日本に終末がくる

      あの  ダブー

      カタストローフよ



▼     わたしは、何度となく指摘してきた。 靖国神社は、国のために死ぬことの「不可能性」を隠蔽するための装置にすぎない。 靖国に集う愛国者とは、「誰かが自分の代わりに騙されて、代わりに死んでくれることをもとめる」人たちにすぎないのではないか、と。    
 

▼     しかし、その考えは甘かったかもしれない。「不可能性」は、靖国と愛国者の間だけに横たわっているのではない。 かつて、わたしたちの祖先は、醜悪にも、かれらに続くことなく、生き残った。 鬼畜と形容した米英にひざまづき、命乞いをした。 卑怯者の子孫にすぎないわれわれは、彼らを「追悼する」「カワイソウと思う」「悲しむ」「後世の戒めとする」「英霊と思う」……そんな資格さえ持ちえないのかもしれない。


▼     この詩を教えてくれただけでも、この書はすばらしい価値がある、そう思われてならない。


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Last updated  Aug 25, 2007 04:47:23 PM
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