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書評日記  パペッティア通信

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Sep 18, 2007
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カテゴリ:経済
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▼     良著。 面白い。 お勧めである。


▼     空前の好景気で金余りの日本。 バブルの傾向さえみられる。 世界の富の4割は、わずか1%の人間が持っているらしい。 ところが、地域社会での医療・介護・福祉活動、環境保全、地球にやさしいエネルギーの開発 ……… そんな「非営利活動」や「公益性」の高い分野には、国・自治体の財政の厳しさもあって、全然お金が回ってこない。 非営利活動へ資金供給はおこなわなくていいのか。


▼     本書でとりあげられる、「非営利」「公益性」領域への資金供給を目指す人々たちは、実に多様である。 「エコバンク」「女性バンク」「グラミンバンク」「(坂本龍一の)APバンク」といった独立系「NPO」もあれば、地方政府と密着してNPOに資金を貸し出す「NPOバンク」もある、というように。 どれもこれも、自然エネ、環境、省エネをかかげているように思われるかもしれないが、実はそうでもない。 岩手信用生協は、「多重債務者保護」をかかげるが、かれらが編みだした方法がまた面白い。 地方政府は、預託金を銀行に入れ、その2倍の金額を信用生協に貸し付けさせる。 さらに信用生協は、自己資本とあわせて多重債務者にその倍額の貸し付けをおこない、多重債務者の債務整理をおこなう。 この方法は、全国に波及。 なかなか面白いでしょ?


▼     それだけではない。 「市民ファンド」という形式も出現しているという。 自然エネルギーの建設、地産地消の推進、ベンチャー企業・若者企業の育成をはかる、市民ファンドが続々と誕生。 団塊世代の退職金などの資産が、流れこんでいるらしい。 また、日本だけではない。 アメリカとイギリスの金融NPOの活躍も丁寧に描かれていてあきない。 「地域再投資法」と「地域開発金融機関」の設置によって、営利金融と非営利金融を財政資金をくみあわせながら循環させている、という。 また、凄いものになると、金融NPOがそのまま「コミュニティ・バンク」になっている事例もあるのだとか。 アメリカのコミュニティ・バンクは、低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)の破綻を受けても、大手銀行とちがい、ほとんど影響を受けていなかったらしいから驚かされる。 


▼     そして、日本政府は、あいかわらず、こうした活動への理解が足りないようだ。 NPOは、当初、便法として「貸金業」で登録していた。 ところが、貸金業法改正のとき、「高利貸がNPOを隠れ蓑にするかもしれない」という理由で、あやうく登録要件の強化・厳格化をくらいそうになったらしい。 また金融商品取引法改正では、監査義務付けを食らいそうになったので、「無配当」を理由に難を逃れた。 しかし、法律で無配当を強制するようなことは、他の国では見られない。 そのため、組合員に配当を実施しているカトリックの共助組合などは、つぶれる寸前だという。 非営利金融の活躍を広げるためには、NPO方式よりもNPC化(非営利株式会社)の方が良いので、模索しているNPOもあるのだという。


▼     なにより本書で驚かされるのは、「医療はお金が来ない分野」ということだろうか。 非営利性をもち規模も小さい。 おまけに、不定期で巨額な金がいるため、銀行は金を貸したがらないらしい。 そのような状況下、病院経営の透明性・公開性の向上、地域医療における患者と医者の連携強化まで考慮にいれつつ、「医療機関債」発行のためのスキームづくりのお話は、かなり感銘をうけるのではないか。 また、日本企業は意外と寄付をしており、(寄付優遇税制・支援組織がないこともあって)日本にないのは「個人が寄付する文化」である、というのも、意外感を持つ人が多かろう。  しばしば讃えられるが英米の金融NPOだが、金利の上限規制がないため、かなり金利が高いことも、盲点といってよいかもしれない。 成果をとわない釣銭型寄付から、寄付者に「達成感」を味あわせる「社会変革型寄付社会」になる可能性を指摘されると、ワクワクさせられる。   

▼     でもさあ。 アメリカで金融NPOが大量に存在していたのは、要は人種や移民問題や社会的流動性の高さなどが絡んで、「情報の非対称」性が強い社会だったからでしょ。 日本における金融NPO「設立機運の盛り上がり」は、格差社会によってモニタリングコストが高くなったということであって、あまり喜べるような話ではないのではなかろうか??。 なに? 前々からそんな非対称性があったのであって、近年モニタリングコストが高まったのではないって??  でも、そうだとするなら、非対称性を緩和することができる「何か」が、日本にはあったということになるよね。 それは一体、何だったんだろう。 それは、頼母子講からにしてもそうだけど、「共同性」ではないのか。 


▼     そうやって、本書『金融NPO』をながめてみると、事例のほとんどが「共同性の再建」話であって、いささか食傷気味になってしまう。 成功の秘訣は、「相互扶助と信頼」「借りたら返す」「人をみて貸す」だそうだから、なおさらであろう。 今も昔も、「共同性」によって、モニタリングコストを減らしていただけ。 頼母子講は、断じて「非営利金融」なわけではない。この辺の理論的アプローチの欠乏は、不信感がのこる。 


▼     さらにいえば、「共同性の再建」以外の「成功のための方策」も、さして珍しいものではない。 「長期」にわたる安定的出資者がいれば、銀行のように流動性維持に四苦八苦する必要はない。 とくに、アメリカの地域開発金融機関や「コミュニティバンク」の成功は、「資産・負債の双方が長期だから」で、ほとんど説明できるのではないか。 NPOの成功は、手品でもなんでもない。 とくに後者の負債面。 負債が「出資」という形式をとれば、銀行のように「要求払預金」を負債にしない分、簡単に引きあげられることはない。 低利長期の投資もヘッチャラである。 サブプライムローンでなぜコミュニティバンクは損害が少なかったのか? 銀行経営の鉄則を理解していれば、別に不思議でもなんでもない。 


▼     とはいえ、たいへんおもしろかったのは確か。 胎動する新しい動きを理解するためにも、一読をお勧めしておきたい。


評価: ★★★
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Last updated  Sep 19, 2007 12:44:26 PM
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