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ボヤキ・ツブヤキ・ヒトリゴト

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February 15, 2004
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パイオニア、レギュラーラウンド最終戦である今日は、茂原アルカスに3-0で快勝したらしい。3セット目には若手の控えを投入するほどの余裕だったようで、ミスもそれなりにはあったけど、ミスで自滅する展開ではなくて、本当に良かった。
スタメンそれぞれの決定率もソコソコ良かったし(レオ、得点王おめでとう!フランシー、スパイク賞おめでとう!)、サーブは、ジャンサに戻したのか、フローターのままで行ったかはわかりませんが、昨日ほどのミスの数ではなかったようだし、何とか流れを立て直したみたいで、本当に良かった。

パイオニアは、レギュラーラウンドを1位で突破するのは初めてらしい。
でも、セリンジャー監督のインタビューにもあったけど、「勝負はこれから。予選突破1位は関係ない」から、あと2週間、緊褌一番、頑張ってほしいな。

ところで。
昨日、私にとっては今期最後の観戦となる東レ戦を観て、吉原選手を見て、心底・・・誤解を恐れずに言うなら、この選手は、なんて不器用で愚かなんだろう、と思った。

第2セット。
もう、風は轟々と音をたてて東レの方に吹きまくっていて、パイオニアのコートの中がだんだん元気がなくなっていって、昨日も書いたけど「負けるかもしれないな・・・」なんて思いながら観ていて。
「でも、ここで負けてもどうせ消化試合だし、リベンジは決勝ラウンドですればいいし、1位突破は揺るがないわけだし・・・」
なんて自分を慰めていた時、吉原選手がレシーブミスをして。

自分を殴りながら、本当に悔しそうな顔をする吉原選手を見ていて、「ああ、この人はまだ勝つ気なんだな、諦めていないんだな。よし、じゃあこっちも本気で応援しなきゃ!」って思った。
でも、流れはやっぱり東レのもので、どんどんコートの中の雰囲気が澱んでいって。
その時、誰かが弾いたボールを、吉原選手と内田選手が必死に追って、そしてふたりは、ベンチに頭から突っ込んだ。

ふたりは、必死の顔で、ボールだけを見て走っていった。
でも、どう見たって、どんなに速く走ったって間に合いそうにないボールだった。
ベンチといっても、パイプ椅子を並べただけのもので、ちょっと見にも「ぶつかったりしたら危ないな」と思えるようなものだった。

だから、まさか止まるだろうと思った。諦めるだろうと思った。
だから、ふたりが全然減速しないまま突っ込んでいって、派手な音と同時にふたりの姿が消えて、一瞬場内が静まり返って、誰かが「転んだ!」って叫んで、誰かの悲鳴がした時、嘘だろ?って思った。

そのあと、ふたりが転んだ場所に選手やコーチが駆けつけて、ふたりの姿はぜんぜん見えなくなって、それから、ちょっと恥ずかしそうな悔しそうな顔をしながら(やっぱりボールは拾えなかった)ふたりが起き上がってコートに戻った時も、頭がクラクラするような感覚だった。
そのあと、流れが変わって勝利した・・・んだったらドラマチックだけど、そんなこともなかったわけだし。

なんで?
これから決勝ラウンドがあるんだよ?
「今年だけは絶対優勝したい」んでしょ?

吉原選手。あなたは、決勝ラウンドが終わったらすぐに全日本の合宿があるんでしょ? 5月には最終予選で、それを突破してアテネに行くんでしょ?
アテネは、「最後の大きな挑戦、最後の大きな夢」なんでしょ?
今、あなたが戦っている試合は、「消化試合」なんだよ。
ここで怪我したら、全部なくなっちゃうんだよ? どうして?
そりゃ、「今はリーグのことだけを考えて戦っていてほしい」と思っていたけど、これは話が別だよ。

そう思った。でもそれと同時に、「たった今すぐ、バレー人生が終わっても後悔しないように・・・」と吉原選手の言葉を思い出した。

この人は、「目標はアテネでメダル」と言い切るこの人は、たとえ消化試合で怪我をして、自分の夢が消えてしまっても、絶対後悔しないだろう、と思った。
目標はあくまでも高く。
でも、今そこにあるボールがすべて。今戦っている試合がすべて。
全力を尽くす。たとえ、その結果、夢を失う事になったとしても。

消化試合なのに、間に合わないボールなのに、突っ込んでいける人だからこそ、高い目標を持つことが出来るんじゃないだろうか。
ここで突っ込んで行く事が出来ない人が、高い目標をいくら掲げたって、叶うはずがない。叶えられるはずがない。

そんなことを考えていた時、マラソンの高橋尚子選手の事い出した。

吉原選手が愚かな選手だとすれば、高橋選手は賢い選手じゃないだろうか。
大切なもののために、「消化試合」は切り捨てる。これは当然のことで、何ら間違ってはいないし、スポーツマンシップにも反していない。
一方、吉原選手が取った一連の行動は、冷静に客観的に見れば、「向こう見ずで愚か」な行動だ。だって、ちょっと手を伸ばせば届くところにある大切なものを、もうちょっとで失うところだったんだから。

でも、競技が違うとはいえ、個人競技・団体競技の違いがあるとはいえ。
もし、高橋選手がバレーボール選手だったとしたら、あの時ベンチに突っ込んだだろうか。
もし、吉原選手がマラソン選手だったとしたら、アテネのメダルのために目の前の大会を切り捨てただろうか。

でも、ひとつだけわかるのは、もし、吉原選手が高橋尚子選手と同じ立場に立ったとしたら、彼女は間違いなく、目の前の大会を全力で戦って、大切なものに向かって突っ走っていく人なんだろうと言う事。
たとえそれで失敗して、なにもかも失って、周りから罵られても、決して後悔しないだろうと言う事。

吉原選手と高橋尚子選手。両極端なふたりのアスリート。
多分、ふたりとも最後のオリンピックになるんだろうと思う。
だから、その意気込みも半端なものではないはずだ。

どちらのアスリートを素晴らしいと思うのか。どちらのアスリートに感動するのかは人それぞれ。
でも、私は「消化試合の、絶対取れないボールに向かって突っ込んでいった吉原選手の顔」を、一生忘れないと思う。

吉原選手、レギュラーラウンドにおいて、アタック決定率6位、サーブレシーブ成功率6位。まさに攻守の要ですね、おめでとう。
雑誌のインタビューで「私はなんでも一番です」と豪語するこの自信家は、言葉にする事でわざわざ自分を追い詰めていくこのアスリートは、大切なものに向かって、これからどんな風に進んでいくんだろう。

不器用でも、バカでもいい。
6位だけど、あなたが一番ですよ、吉原さん。





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Last updated  February 16, 2004 11:06:37 PM
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