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ココロの森

2007.07.07
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私は大人になるまでも、大人になってからも、
星座を探すような歯がゆさを何度も味わった。
「あの星とこの星を結んで」と説明しても、
並んで夜空を見上げるひとに、正確に伝わっているのかどうかはわからない。
確認する術もない。
多くの人が体験したことがあるであろう、歯がゆさだ。

そんなとき私は、文蔵と見た夜空を思い起こす。
全天の星が掌に収まったかのように、すべてが伝わりあったあの瞬間を。
あのときの感覚が残っている限り、信じようと思える。
伝わることはたしかにある、と。




これは、この短編集のなかで一番印象深かった作品
『冬の一等星』の中の一文だが
この、すぐ隣にいるひとに、
自分の見ているもの、感じていることが伝わらないもどかしさ、
切なさのようなものが、どの作品にも共通している。

同じものを、同じ場所で見ているはずなのに、
どこかそれを信じられない。
確かめられる術もない。
でもそれでも信じたい。

それが表題「きみはポラリス」に込められた所以だろう。
「ポラリス」というのは、「北極星」の意。

いつも、確かにそこにいるのに、手が届かない。





三浦しをんさん、初の恋愛短篇小説集。
どれもこれも、一筋縄ではいかないような
11の、ちょっと風変わりな恋の形が収められている。



一目惚れと玉砕を繰り返す懲りない友人・寺島の頼みで
ラブレターを書く手伝いをする事になった岡田。
「寂しければ、俺が一緒にいるよ」
その文面は、寺島の気持ちの代筆ではなく・・・

                   「永遠に完成しない二通の手紙」


かわいい妻と、生まれたばかりのかわいい息子。
早く会いたい、帰りたい。
そんな気持ちがつのるあまり、裏庭から居間に入ろうとした夫が目撃したのは
妻が息子の小さなペニスを愛おしそうに口に含む場面だった・・・

                      「裏切らないこと」


あの夜以来、私は彼に縛られてしまった。。。
昔の彼との、誰にも言えない秘密の思い出。
友人のウエディングドレスを縫い上げながら
今も、これからも、私はきっと、彼以外愛せない・・・

                     「私たちがしたこと」


信仰とは「信じる」とか「信じない」ことではない。
ただ、そこに「ある」ものを「感じる」か「感じられない」か。。。
純粋で、真っ直ぐな真理子の愛を、「感じられる」のは、誰?・・・
                 
                    「夜にあふれるもの」


女が大学に行くなど珍しかった時代。
大卒後、心ならずも家業を手伝う私の秘密の宝物は、
密かに心を寄せていた、大学の先生の骨だった・・・
           
                     「骨片」


水族館で偶然再会した夫の後輩は、ペーパークラフト作家。
何かと理由をつけて会いに来る彼が、私に伝えたい事とは・・・

                    「ペーパークラフト」



夫婦同然に暮らしている彼は時折まとまったお金はくれるものの
何を生業にしているのか謎な男。
彼の仕事は一体なに?? ある日の午後、彼女は彼を尾行する・・・

                     「森を歩く」



究極のロハス生活。
どうせやるなら徹底的に!という彼と一緒にはじめてみたものの
でもそれって・・・???

                    「優雅な生活」



一人暮らしの麻子に拾われた春太。
たまに家にやってくる冴えない男が
どうやら麻子の「新しいオトコ」らしい・・・
        
                    「春太の毎日」



車の後部座席で眠るのが、どうしてもやめられない私。
それは、幼い頃からの癖。
車の中でこっそり眠っていて文蔵に連れ去られたあの日。
また、こうして待っていれば、彼に会えそうな気がして・・・
 
                     「冬の一等星」



文化祭の最終日。
うっかり体育倉庫に閉じ込められてしまった岡田と寺島。
二人の運命は如何に??・・・

               「永遠につづく手紙の最初の一文」



先にも書いたが
この短編集のなかで一番印象深かった作品は『冬の一等星』だ。

家族とは、うまく心を通わすことのできない主人公は
いつしか、車の後部座席が唯一心落ち着く場所となる。
幼い頃のある日、いつものように
こっそり母親の目を盗んで車のキーを開け、後部座席で眠っていると、
見知らぬ男が乗り込んできた。
不思議と怖くなかった。
母親とは通じない心が、
何故かこの「文蔵」という見知らぬ男は通じ合う気がして・・・




同じ場所で、同じ星を見上げているのに
何故か伝わらないような、いたたまれない想い。


その相手が
同性や、身内や、友達や、夫など
身近なひとであれば、尚のこと。




でも。 私は信じる。

私の見ている、あのポラリスを
あなたもきっと、見ていることを。

私が信じているのは、貴方ではなく
貴方を信じている、私自身だ。


   










最終更新日  2007.07.08 02:04:44
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