渋田利右衛門
若き日の勝海舟にとって後援者となった渋田利右衛門は、箱崎インキュベーションセンターにほど近い永代橋のあたりに東京での居を構えていたそうです。氷川清話の序盤にて語られる、渋田から勝への支援行為ですが、単なる篤志家の善行とするよりは、もっと深いストーリーが秘められているように思います。知識人、読書人であった渋田は時代の流れを敏く感じ取り、かなり切実な期待を勝に寄せ、資金や知己を勝に託していたように思われます。幕末から維新にかけての小説では、往々にして突出したヒーロー像が描かれていますが、渋田の話などを良く考えると、勝のように突然あらわれたかのようなスターも、時代の要請や数多くの人々の期待や導きにより必然的に生み出された存在であることがわかります。