これだから歯医者は嫌いなのだ!
昨日歯医者に行ってきました。家から歩いて3分ほどの広場の一角にあるのですが、実は初めての歯医者だったんです。以前は家のすぐ近く(歩いて30秒!)の歯医者に行っていましたが、残念なことに2年ほど前に引退して医院を止めてしまいました。いい人だったんですよね。歯科医としての腕も良かったし、英語も話せたのでよく世間話や冗談も言える、歯科医としては申し分のない人でした。この人の口ぐせが『金は唸るほどあるのに、忙しくて使う暇がない』というもので、アメリカ特に東海岸に行きたいがヴァカンスをとる時間がない、という何とも贅沢な悩みを持つ人でした。その彼が引退後、私が初めて行く歯医者でした。実はうちの家族が全員その歯医者に通院していたので、ある程度は安心して予約を申し込んだのですが、何とその歯医者はヴァカンス中で不在だとか。一日でも早く治療してもらいたいくらい痛みがひどかったので途方に暮れていると、そのアクサン(方言、訛り)の強い秘書が『お急ぎでしたらもう一人Dentistがいますよ』ということで、その医師にお願いすることにしました。実は歯医者に限らず専門医(眼科、皮膚科、栄養科など)は予約を取るのには通常数か月かかります。つまり今日予約すれば6月末か7月末が普通なんです。勿論、いわゆる急患のように一刻を争う場合(今回の私の場合のように)は、数日後に予約を入れてもらうこともままあります。要は説明、お願い次第です。今回は痛くてしょうがないというだけではなく、私の家族全員がお宅に通っています、というLoyalityを強調しました。ただ、痛くて仕方がないから行く訳で、できれば歯医者何て行きたくはないのです。初めての歯科医となれば尚更です。正直怖いクリニックに入ると聞き慣れない言葉が聞こえてきます。仏蘭独伊英西語、ポルトガル語、ウクライナ語、ロシア語でもない、今迄に聞いたことがない言葉、発音の様です。何か異国の歯医者に来たみたいで、心細く増々落ち着かない気分になりました。出来るならばすぐにでも逃げ出したいような…。すると、その気持ちを察したかのように秘書かアシスタントの人に問診表を渡されて記入するように言われました。仏語でも英語でもいいようです。電話した時も感じたのですが、彼女たち(そこには医師も含め3人全員が女性でした)のアクサンが強くてよく聞き取れないところがありました。そうしているうちに診察台に案内されます。何がどうしたのかどこが痛いのか説明すると、X線写真を撮ってからさあ治療を始めますよ、と例のキイ―ンと唸り声を上げる機械を取り上げて、治療がスタ-トしました。合図はこの言葉です。「痛かったら言ってくださいね」一見親切な言葉ですが、「痛い」という信号を送る、つまり私が「痛み」を感じて初めて拷問、いや間違えました、治療を一旦止めるということです。これが4,5回ほど続きました。その間の私はと言えば、まな板の鯉、断頭台に上った死刑囚、といったところで緊張しつつも神妙に、ひたすら嵐が過ぎ去るのを待ちます。私の右に医師が、左にアシスタントが立っています。聞こえてくるのは異国の聞いたことがない言葉ばかり…。何となく異国に潜入して捕らえられたスパイの気分です。周りは拷問を愉しむ相手方の秘密警察の連中といったところでしょうか。暇なので、正確に言えば、恐ろしい治療から神経を逸らすために、どこの国の言葉を話しているのか、名探偵をまねて推理を始めてみました。前に書いたように、ヨ―ロッパ西側の言葉ではありません。ラテン系の言葉のような気もしたが、どうも違うようなので、ルーマニアも除外。北欧のスウェーデン語、ノルウェー語、フィンランド語、バルト3国でもない。残るは東欧の言葉であるハンガリ-語やポーランド語、そしてロシア語以外のスラブ語の何からしい、というとこまでは推察したのですが。会話を聞いているうちに、ロシア語系(つまりスラブ語)の独特の発音が時たまあることに気がつきました。ということはチェコ語かな…? そうこうしているうちに、やっと拷問も最終段階に近づいていったようです。道路工事で言えばバッコ―ンバッコ―ンと大きな音を立てて路面を掘り起こす作業が終わってアスファルトを流し込む作業、歯の治療で言えば詰め物を入れる奴ですね、これは痛くないので安心です。ほっと一息。そう思ったらどっと疲れを感じて眠気さえも催してきました。もう推理は出来ないようです。それから20分ほどかかったでしょうか。やっとのことで治療が終わりました。トータル約45分ほどの拷問で、ただただ疲れたの一言でした。やはり初めての歯医者は、相手の治療の進め方が分からないので、かなり緊張していましたね。何しろベルギ-に来て以来、あの『金はあるけど使う暇が無い』と豪語してはばからないミスタ-Hしか知らないのですから。ほっとして医院を出る時、ふともしかしてギリシャ語かもしれない、という考えというか推理が頭をよぎりました。私が唯一知っているギリシャ人と言えば『恐怖のジョン』と恐れられた男しか知りません。なんで恐怖というあだ名がついたかと言えば、彼は質問魔だったのです。欧州の各販売会社から技術責任者が集まった会議で、彼は質問を連発したのでした。いわゆる数珠つなぎになった質問で、一つの質問が終わると次の質問が飛び出す、それが延々と続くという、普通では信じられないことが起きるのです、彼が出席した会議では。それは司会者が止めに入るまで続いたのです。彼は決して嫌がらせをしているのではなく、それが彼の仕事のスタイル、いや人生のスタイルだったのです。まあ敢えて言えば、顎のタガが外れた輩というのがぴったしかもしれません。但し彼の名誉のために一言。ギリシャ出張時に彼と港町で食事を共にしましたが、親切で心遣いも抜群で、その食事のひと時は楽しい時間だった記憶が残っています。いい奴だったんですよ、彼は。話を戻します。彼女たちは顎のタガが外れてはいなかったので、どうもギリシャ人でもないようです。まあ名探偵の私としてはチェコ語というかなり論理的な推理を導き出したのですから、次回訪問する機会があれば、私が真の名探偵であるかを確認してみたいと思います。ところで治療費ですが、236ユ-ロでした。日本円で約37800円ですから本当に高いこのうち140ユーロほどはPartenaのDentaliaに加入しているので還付されますが、それでも滅茶高いですね!2つのブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村