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ベルギ-永住ミステリー小僧のブログ

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2025.01.31
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カテゴリ:ミステリー

​​シリ-ズ第4作はちょっと変わったタイトルですが、3連続密室殺人の内容と密接に関係した歌の歌詞から来ています。
このシリ-ズは密室殺人が多いのですが、前第3作「笑わない数学者」で出てきた宇宙を模したトリックとは打って変わって、『名探偵コナン』に出てくるようなトリック、と言ったら分かってもらえるでしょうか?

                                   


それはさておき、「詩的私的ジャック」(英文タイトルはJack the Poetical Private)では萌絵の大学生活が詳しく紹介されています。勿論、事件がらみでですが。
N大工学部建築学科3年の西之園萌絵は、他大学で起こった女子学生連続密室殺人事件に興味を持ってしまいます。興味の枠を超えて、のめり込んでしまった、というのが正解なのですが。
密室の謎が解けないなか、捜査線上に浮かびあがったのがN大在学生で犀川が担任をしていたロック歌手でした。
今回もいつものように萌絵が犀川を事件に引っ張り込んで、2人で事件の構造を解体し推理していくことになります。

ただ、私がここで書きたいのは、密室トリックがどうだの、二人の推理がすごいだのではありません。そんなのはどうでもいいんですよ、今回は大笑い
今回は萌絵の感情、行動が一段と過激にストレ-トに大胆になり、ついには『萌絵の犀川に対する思いが爆発』というところまで進みます。そうなんです、二人の仲が急接近していくんです。
その場面の一つが次のシ―ンです。酔った萌絵が犀川に絡みながら告白しプロポ-ズするシ―ンなんですが。
少々長い引用になりますが、大事なところなので....。
​​

​​​​​​​​​
少し、彼女の顔を覗き込む。小学生のころの面影がまだ残っている。
「何か私の顔についていますかぁ?」
「ああ、自分で自分が分かりません、って書いてあるね」
「どうして、そんなに、私のことがわかるの?​ そんなに、わかるなら、どうして…?」
「君が言わないからだよ。相手の思考を楽観的に期待している状況…、これを、甘えている、というんだ。いいかい、気持ちなんて伝わらない。伝えたいものは、言葉で言いなさい。それがどんなに難しくても、それ以外に方法はない
「私、先生が好きです」

「気持ちと思い込みは違う」
「私と結婚してください」
「いつ?」
「いつでもいいわ…。今でも…」
「今は出来ないね」
「どうしてですか?」
「酔っぱらっている君を、送っていかなくちゃいけないから」


この『甘えている』という言葉が、私の胸に突き刺さるような気持ちがします。
随分と甘えてばかりいたなあ…。妻に対して申し訳ない気持ちでいっぱいです。今更ではありますが....。

こんな場面もあります。
犀川のことなら誰よりも何でも知っている、と思っていた萌絵だが、意外な話を聞かされて愕然とする。事件のことや大学院進学のこともあり、犀川にいろいろ相談したいが当人は1週間の中国出張中で不在。
思い余った萌絵は、意を決して助手の国枝桃子に相談するが、どういう訳か上手く説明できない。

「犀川先生に直接ご相談すれば?私に訊いても無意味ね。そういうことは」

「先生は中国に行かれているので…」
「帰ってこられるでしょう? 来週。それが待てないわけ?」
「はい」萌絵は、初めて本心が素直に言えた。
「ふうん....。じゃあ、中国までいったら?」
「え?」萌絵は国枝が冗談を言ったと思った。だが、相変わらず国枝は真面目な顔をしている。萌絵が何も言えず黙ってみていると、
「私なら、行くよ」

今まで国枝桃子のことは書いていませんでしたが、実は回を追うごとに彼女の存在感が増してきているんです。彼女の魅力はとにかく「ストレ-ト」なこと。
犀川は国枝を次のように評しています。
『背の高い痩せた女性。男物の白いシャツにジ-ンズ。黒縁の眼鏡をかけて髪型は男性のようだ。これほど第一印象の悪い人間も珍しい。挨拶というものを一切しない、口調は攻撃的、笑顔など魅せたことの無い、無口で愛想の無い人物である。けれど、犀川は彼女の能力を高く評価していた』

続きがあります。
「そこまで深刻というわけじゃあ…」
「言っていることが矛盾している」
「あ、はい、そうですね」
「西之園さん、貴女、犀川先生が好きなの?」
「はい」萌絵は上を向いて、国枝を見る。
「あそう。それがわかっているなら、十分じゃない」
「え? どういうことですか?」
「貴女としては、それで充分だということ。何が不満なの?」

このようにストレ-トで核心を突かれると、犀川との『飛躍する』やり取りに慣れている萌絵でさえ圧倒されてしまいました。でも、こうやってはっきりと言ってくれる人は、人生で貴重です。


殺人事件のトリックの解明と犯人捜しにのめり込む萌絵に、苦言を呈する犀川。
「西之園君、忠告していいかな?」
「熱を上げるな…、でしょう?」萌絵はにっこりと微笑む。
「上げないほうがいいね」
「私、熱なんて上げてません。仕方がありません。熱って、勝手に上がるんですから....。私のせいじゃないもの


その通り。屁理屈だけど、そう即答できるのが彼女の魅力。


では、今度はいかにも『犀川らしい』表現、考え方です。

①普通の青年じゃないか、と犀川は思った。滅多にない事だが、教師をしていて、少しは良かったかな、と思える瞬間がたまにある。おそらく、自分の中の生活活性化委員が見せるイリュ-ジョンだろう。

②「将来を決めてしまうなんて、恐ろしいじゃないか。僕は自分の人生にシナリオは書きたくない。そんな恐いことはしたくない。台風の進路だって、扇形に広がっているだろう? 人間の進路はもっと広角だ」

③大学のクラスにも一応形ばかりの担任教官がいる。卒論生(4年生)は講座の配属になるので指導教官が付くが、それまでは、担任が書類上の指導教官として必要となる。書類上必要な時は、事務に預けてある印鑑が使われるだけだ。そう言った「影の仕事人」と呼ぶべき勤勉な印鑑が日本には沢山ある。

犀川という人間、難解な言い回しを使うけど、直感で理解できる内容なんですねスマイル。このシリ-ズを読んでからは、この手の表現に出会うと『嬉しく』なってしまいます。

最後に、萌絵から2つの『一生のお願い』を聞かされ、その押しつけがましい(でも萌絵にとっては切実な)願いに笑い転げる犀川。

「そうそう、先生」萌絵は思いついたように言った。「夢と希望の違いって何?」
思い浮かんだ回答は、なかなか気の利いたフレ-ズで、犀川はその構文を頭の中で三回組み直した。
だが、結局、犀川はそれを口にしなかった。しゃべれば意思は小さくなるからだ。(たった今、君が突然言い出した、押しつけがましいお願いが、希望で…、僕がそれを断った、言葉では説明できない曖昧な理由…、それが夢だ)

やっぱり彼は理屈っぽいですねぇぺろり

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最終更新日  2025.01.31 18:08:04
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