シャガの頃
新緑が色を濃くして濃密な空気をまき散らす頃になると、道路脇の山肌に、一斉に咲くシャガの花。私は、この花が子どもの頃から好きでした。私が子どもの頃に心惹かれた花、というのは園芸種でない、人が植えたものでないのに見事な美しい姿をしている花…だったように思います。カタクリもしかり。シャガの花も、見た目が派手な割には山際の緑の陰にひっそりと(集団だけど)咲いてるのでもちろん名前なんて知らなかった当時は野草なのか?誰かが植えたものなのか?と迷いつつおそるおそる摘み取って、家に持って帰った覚えがあります。その名前がシャガというのだ、と知ったのは大人になって自然に深く目がいくようになった随分あとのこと。ルーツは中国から入ってきたものらしくやっぱりもとは園芸種だったのかもしれません。植物観察を始めて、図鑑を片手に野山を歩くようになって身の回りにある全ての野草に名前があるんだなあ~、という当たり前のことにしみじみ感動したこともあります。名前を知ることで、その植物とぐっと近くなれたような。幼い頃からずっと身の回りにあったものたちが名前を知って、より新たな存在になったというか。シャガを見るといつもそんな気持ちを思い出してまた、幼い頃に野山を駆け回って遊んでいた頃の優しい記憶がよみがえってなんともいえない心地よさに包まれるのでした。今年もシャガの頃。タニウツギの鮮やかなピンクと一緒に摘み取って玄関に飾りました。