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2021/09/10(金)09:13

文楽小 説 断 片 集 「 青 年 の 山 脈 」 2005年 11/8

小    説   断   片   集(30)

​      ​♪ 青 年 の 山 脈 ♪ ​ ​​​​​​       疲れた体を横たえて彼は陰湿な       山小屋の片隅でひとり本を読む。       時々、本を体からはなさずに窓を       開けて自然を眺めては新しい精気を       感じ大きな深呼吸をして彼は瞳をとじる。       ああ神よ神よといって彼は祈る。       この世の哀れみに神よ 力を貸して下さいと。 ​      彼は瞑想したままで小さな声をだして祈る。​       谷は快い水音を発し風はさわやかなる       陽光のなかで舞っている       眼前に開けた大自然は静かな緑のなかで       それぞれに深呼吸をしているように感じた。       古き本の色ぼけた汚れにも彼が手にとると       なぜか生き生きとした力強いものを感じる。       なだらかな斜面の粗末な家のなかで       人界からかけ離れたこのような土地で       彼は何を求めて生きようとしているのか。       私には彼の生き方に同情こそすれこれほどの       生活をするとは思ってもみなかった。       自然の大地のなかで彼は少しやつれた       ような気がしないでもない。       彼は人間本来の生活を体験しょうと       しているのだろうか       人間の将来に絶望し自己を逃避して       このような行者めいた生活をして       いるのではないだろうか。       市井の人からみれば、まさに       その生活は狂人の体であった。       誰がみても人間の生き方にあらず、       不思議な青年としてみられたものだ。       衣は長い着物を着て髪はのび、       眼光は凛として生気をおび求道の       心がみちみちていた。       彼は、朝薄暗きうちに目を覚まし小屋の       斜面をつたって山の頂上に登り毎朝       真っ赤な太陽が昇るのをみるのだった。       一面が朱に染まるような大きな太陽が       あらわれし時、彼はまた瞑想する。       私は一度、彼と一緒にその山に       登った時彼に聞いたことがある。       山の頂上付近にきた時、私は聞いた。         「  このような生活をいつまで          続けるつもりなんだ””  」       彼は、私の方を真剣な表情でみながら       「 僕にもわからない!! 」       「 わからないからもう僕のこと         など心配せずに帰れ!!  」         と大きな声で彼はいった。​​​​​​​​​​

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