風鈴文楽夢綴り🌸 🌸 今日も笑顔で毎日ルンルンスキップ しよう🌸

2019/12/06(金)14:34

「最 良 の 選 択 」  11/29

頭  出  し  小  説  等(110)

  ☆彡 最  良  の  選  択 ☆彡 ​  冬の日曜日の昼前。   駅への道を、一人の男が歩いている。   歳は40歳なのだが、小柄で髪が薄く、   顔も青白いから、それよりは老けて見える。   おまけに、紺のコートはいささか色褪せており、   ポケットに両手を入れ、背をまるめて歩いているので、   かなり貧弱な感じがする。   場所は、郊外に位置する公社団地の一画。   だから、眼をあげれば寒空の下、建設後20年に近い   棟群が何度かの補修を経つつも、薄汚れた色で   連続しているのが眺められる。   だが、いま彼の視野にそれらは映っておらず、   歩道のアスファルトのみがつづいている。   いつものようにうつむき、いつものように   頭をにうかぶままに、あれやこれやと、   ものを考えながら足を進めているからなのだ。   「・・・・・・挨拶か」   と、彼、すなわち小野寺文夫は思う。   「そういうのは、本当に苦手なんだ。だけどまあ、   なんとかなるだろう。昨日の夜、ちゃんと紙に書いて   練習したんだからな」   コートの下に黒い礼服を着、純白のネクタイを   しめている彼は、その文言を思い出す。   「ええ。ただいま、ご紹介をいただいきました、   小野寺でございます。片桐さん、良江さん、   おめでとうございます。   御両家の皆様方、本当におめでとうございます。   心より、お祝い申し上げます。」歩きながら   そこまで暗唱し、ふっと気になって、彼は考える。   作 者:  かんべむさし​​

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