つ ば め を 見 る 男
つ ば め を 見 る 男 そのすごさは雀と比較してみるとよい 雀はちゅんちゅんと小さな声で鳴きながら 店先にぴょんぴょんと来て食べ物をさがす 近寄ればさっとどこかに逃げさっていく そんな雀を見ていると燕というのは まさに鳥としての英雄ではないのか 渡り鳥として何万キロの旅をして・・・ 波濤をこえて日本にやってきて・・・ 泥の巣をつくり子育てをして・・・ 飛び立てばその舞はサーカスであり アクロバチックであり曲芸飛行である 宙返り飛行や遊覧飛行だって行う 雀のように地上には降りない 燕にとっての地上は地獄の海だ!! 降りてしまえばそれは死となる!! 飛び立てば常に飛び続けて 虫を捕まえるだけである 疾風のごとく天空を飛び 街の中を舞う燕の美しさ”” そのフライトは見ごたえがあり 見事としかいいようがない どんな鳥にも真似のできない オンリーワンの優雅さがある 雀と同じくらいの大きさであっても 飛ぶ力と美しさはまったく違う 燕の飛ぶ姿はまるでグライダー いやそんな生やさしさではない 超音速の空飛ぶ小さなグライダー 燕は優雅な空を飛ぶ大スター 男はいつも燕を見ると思う 燕のようにスイスイと世の中を 飛べればいいんだがなあ~と・・・ いつも燕になりたいと思っている ああ~なんという鳥だろうか 泥で巣を作り地上には降りずに 飛ぶことだけに命をかけて・・・ 仕事に忙殺されている男にとって 燕は憧れの鳥なのである 燕のように優雅に飛びたい”” 高速飛行でビルの谷間を 突き抜けるように飛んでいる その遊泳術にいつも酔いしれる すごい鳥というしかないなあ~ しかし俺はもう年老いてしまった 燕のようには絶対に飛べないよ 悲しいけれど雀にしかなれない 燕は見ているだけの鳥なんだ”” 地味ながらもかわいい雀になって 生きることしかできないなあ~!! 燕は燕””雀は雀””それでいいのさ”” 燕を見る初老の男はそうつぶやいた 見上げればいまフライトを終えたばかりの 2羽の燕が電線に止まり羽根を休めている 燕になれない男を涙ながらに笑っていた