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分太郎の映画日記

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2007.04.10
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カテゴリ:韓国映画
 韓国の男性は兵役義務によって軍隊生活を送らなければならないことは、昨今の韓流ブームによって日本でも衆知の事実となった気がするが、その軍隊における男(人間)の“業”を鋭く描き出した作品として非常に秀逸。

 東京・渋谷のシアター・イメージ・フォーラムで開催中の「韓国アートフィルム・ショーケース」にて上映の最終日に鑑賞。

 『許されざるもの』 評価:☆☆☆☆☆

 少し詳しい話の内容は、下記のあらすじ(公式サイトより転載)を読んでいただくとして、簡単には、新兵として入隊した主人公が、上官による理不尽な命令・しきたりに遭遇し、自分は絶対にそうならないと誓っておきながら、いざその立場になってみると、知らず下の者に厳しく辛く当たってしまい、その結果、ある悲劇が起こり、それが更なる悲劇を生み……というもの。

 軍隊における厳しい階級制度は、それが非常時(戦争)の際の指揮命令系統を1本化する(でないといたずらに死傷者が増える可能性がある)という点で維持されるべきものだとは思う(って正直なところよくわからないが……)が、それを背景に、与えられた権力を特権と勘違いした上官・先輩は、かつての意趣返しと自己満足などのために非合理的な命令・指示を出すことで加害者になり、下の者は被害者になる。そして時間が経って立場が上がると、被害者であった者は今度は自分の部下に対して加害者になっていく。

 その繰り返しの構造は、日本で言えば、とくに学校における部活動などで見られると思うが(意味もない先輩によるいじめや横暴を経験した人は数多いのではなかろうか)、ある意味、ヒエラルキーの存在する組織に生じがちな人間の愚かさであり、現実社会の矛盾でもあろう。

 それを、彼らを取り巻く息苦しさや閉塞感とともにをきっちりと鋭く描き出している脚本と演出は素晴らしいと思う。
 また、あらすじでは過去と現在に別れて書かれているが、映画では過去と現在が交互に描かれていて、観客を飽きさせずに手放さない手法も見事と思う。

 韓国の映画界的にインパクトが大きかったのは、この作品がまったく無名の映画学科4年生の卒業作品として製作され、そして、映画の中で、大変に印象的ないじめられる新兵の役を演じていた俳優が、監督ユン・ジョンビン自身が演じていることだろう。
 今後が大いに楽しみだ(次作のプレッシャーはかなり大きいだろうが)。

 主役の一人、ハ・ジョンウは、現在公開中のキム・ギドク監督作品『絶対の愛』でも主演しており、こちらでも見事な演技を披露している。

 タイトルが、クリント・イーストウッドのアカデミー賞受賞作と同じ(こちらは「者」表記だが)というあたりが損している気はするが、映画を観ると非常に適切な感じはするので、悩ましいところだ。

 公開は終わってしまったが、機会があればDVDなりで鑑賞することを是非ともお薦め。


【あらすじ】(公式サイトからの転載です)
 テジョンは2年間軍紀班長として模範的な軍隊生活を送り、まもなく除隊を控えている兵長である。規律正しく平穏な毎日を過ごしているテジョンだがある日、彼の生活に思わぬさざ波が立つ。中学時代の同級生スンヨンが内務班の新兵として入隊してきたのである。上官の靴を毎日ピカピカに磨いたり、新兵のパンツを平気で取上げる古参兵がいたりと軍隊特有の不条理さになかなか馴染めないスンヨン。テジョンは事あるごとにトラブルを起すスンヨンに対して友人として色々と面倒を見、庇い続けるが、自身の立場も悪くなる一方だ。命令通りに行動するのが楽と、テジョンがスンヨンを諭しても彼は自分が古参兵になったら軍の古いしきたりは是正すると大口を叩き一向に聞入れない。そんな折、スンヨンもジフンという新兵を迎え入れることに…。のろまな新兵ジフンに対して自分の所信を貫き色々と目をかけるスンヨン。だが古参兵達から冷たい視線を浴び、部隊内で孤立しつつあるスンヨンを知ってか知らずかジフンは自分勝手に行動し続けた。
 1年後、除隊したテジョンのもとにスンヨンから突然電話がかかってくる。休暇がもらえたので是非会いたいと言うスンヨン。テジョンはスンヨンに会う気は無く恋人を呼び出すが、スンヨンは強引にテジョンのもとを訪れ、話したいことがあると思いつめた表情で懇願する。テジョンの除隊後、スンヨンには一体何があったのか。


許されざるもの

【製作年】2005年、韓国
【製作】エイ・アンド・ディー・ピクチャーズ
【配給】チョンオラム
【監督・脚本】ユン・ジョンビン
【撮影】キム・ビョンチョル
【出演】ハ・ジョンウ、ソ・ジョンウォン、ユン・ジョンビン ほか

公式サイト
http://www.kaf-s.com/lineup/yurusazaru/





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最終更新日  2007.04.10 17:43:21
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