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2007.04.18
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 2006年に、アフリカ映画で初めてのアカデミー賞外国語映画賞受賞をなしとげた作品。
 TOHOシネマズ六本木ヒルズにて鑑賞。

 『ツォツィ』 評価:☆☆☆☆

 最近、アフリカを舞台にした作品が富みに増えてきているように思う。
 今年に入ってからでも、『ダーウィンの悪夢』『ルワンダの涙』『輝く夜明けに向かって』『ラストキング・オブ・スコットランド』『約束の旅路』『ブラッド・ダイヤモンド』『四月の残像』、そして『ツォツィ』。
 また、東京・渋谷のアップリンクXでは、「シネマ アフリカ2007 ルワンダの記憶」が開催中(2007/4/7~20)だ。

 『ツォツィ』が他と大きく一線を画するのは、スタッフ、キャストのすべてが南アフリカの出身者ということ。
 なので、外側からみたアフリカではなく、内側からみた南アフリカの日常と社会問題――アパルトヘイトは終焉するも、その負の遺産はすぐには消えることなく、人種格差に黒人内格差も加わり、犯罪は激化し、エイズは深刻化し、ストリートチルドレンは救いようのない暮らしを続けている――を、命の脆さ・尊さとともに、鋭く描き出しているところだろう。

 タイトルの「ツォツィ」は、南アフリカのスラングで「不良、チンピラ」の意味で、主人公のあだ名だ。


【あらすじ】
 南アフリカ最大の都市ヨハネスブルクにあるタウンシップ(旧黒人居住区)の貧しいスラム街に、ツォツィは自分の過去と本名を封印して暮らしていた。彼の仲間は、なり損ない教師のボストン、冷酷なブッチャー、人のよいアープの三人。彼らは窃盗、強盗を犯して日々の糧を得ていた。
 ある日ツォツィは、豪邸に住む黒人の家から車を強奪するが、中には生後数ヶ月の赤ん坊が乗っていた。捨てるに捨てられず、自分のバラックに連れて帰り、新聞紙をオムツ代わりにする。赤ん坊の“食事”に困った彼は、窓から見掛けた赤ちゃんを抱いた若い女性ミリアムの家に入り込み、お乳を飲ませるようにと銃で脅す。
 バラックに戻って赤ん坊を寝かしつけたツォツィは、自分の幼い頃を思い出す……。


 まずは、全編ドキュメンタリータッチでありながら、骨太のストーリーを展開する脚本が見事だ。
 はじめはただ戸惑っていた赤ん坊に対する主人公の様子が、赤ん坊に話しかけるミリアムに接し、また子どもをさらわれた家に再び押し入った際の父親の子どもを心配する態度(自分の父親が非常な人下であったことと対照的)や、足の不自由な物乞いとの会話(「太陽の光を浴びたいだけ」とのセリフはインパクトがある)などを通して、徐々に徐々に変化していく。その内面の変化の過程を、主人公を演じたプレス・リーチュエニヤハエは微妙な表情の違いで見事に表現している。
 確かに言葉は少なめで、全体的にやや説明不足の感はなきにしもあらずだが、言説多くしてすべて語り尽くす(ような)ハリウッド映画に比較して、それが逆にリアリティを増しているように思う。
 自分が大けがさせたボストンに謝罪するシーンはちょっと感動的だった。

 そして、ラストの赤ん坊の父親がみせた態度が非常に印象的。たぶん子どもをさらったツォツィの罪を許してはいないだろうが、「罪を憎んで人を憎まず」。その「許し」が最後にツォツィを大きく変えていく。
 映画的にはもう一つ先まで描いて欲しかった気はするが、現実の南アフリカ社会が様々な問題を抱えて先が不透明な状況をあわせ考えると、微かに見える「希望」の暗示で幕切れが良いのだろう。

 俳優たちの演技はみな素晴らしく、そしていい眼をしていると思った。
 主人公の、普段は無表情に突っ張っていながらも、時折みせる寂しげな表情や、ミリアムと別れる際の、二人の微妙に変化していく表情などは、秀逸だと思う。
 そして、例えばクローズアップでは、カメラを、引いては観客をじっと真っ直ぐに見つめるといった演出と撮影が、役者たちを大きくサポートしている。

 なお、主人公の過去の回想シーンで、直接的な言及はないものの、母親が罹っていたのはたぶんエイズ。手を握るだけでは感染はしないが、その辺の病態が父親には分かっていなかったのだろう。
 そして、土管に暮らす子どもたち(ストリートチルドレン)も、いわゆるエイズ孤児(両親のいずれか、または両方をエイズで失った子ども)なんだと思う。その辺、話の流れを途切れさせてしまうが、多少のエクスキューズはあった方がより良かったように思う。
 ストリートチルドレンの数は国連の推計によれば1億人。アフリカではエイズ孤児が大半だが、ブラジルなどのラテンアメリカ諸国では貧困層による養育放棄だ大半だという。一部の国でのストリートチルドレンの実態は、日本ユニセフ協会のサイトで読むことが出来る。
http://www.unicef.or.jp/children/children_now/street.html

 不幸な生い立ちから悪行を重ね「ただ生きている」だけだった一人の青年が、だんだんと「生きていく」ことの大切さと意味を取り戻していく過程を丹念に描いた映画として、またアパルトヘイト終焉後は忘れさられた感のある南アフリカだが、いま現在どうなっているのかを知る映画として、お薦めだと思う。

ツォツィ』 TSOTSI

【製作年】2005年、南アフリカ=イギリス
【配給】日活、インターフィルム
【プロデューサー】ピーター・フダコウスキ
【監督・脚本】ギャヴィン・フッド
【原作】アソル・フガード
【撮影】ランス・ギーワー
【音楽】マーク・キリアン、ポール・ヘプカー
【出演】プレス・リーチュエニヤハエ(ツォツィ)、テリー・ペート(ミリアム)、ケネス・ンコースィ(アープ)、モツスィ・マッハーノ(ボストン)、ゼンゾ・ンゴーベ(ブッチャー) ほか

公式サイト
http://www.tsotsi-movie.com/


原作本

CDオリジナル
サウンドトラック






最終更新日  2007.04.18 13:53:10
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