分太郎の映画日記

2007/05/28(月)10:30

『東芝の電気車輌』

日本映画(1951~60)(36)

 宮沢りえ主演『父と暮らせば』、原田知世主演『紙屋悦子の青春』などで知られる黒木和雄監督のデビュー作。  タイトルにあるのように、いわゆる劇映画ではなく、東芝のPR映画である。  東京国立近代美術館フィルムセンターで開催中の特集上映「追悼特集 映画監督 今村昌平と黒木和雄」にて鑑賞。併映は『海壁』『ルポルタージュ・炎』。  『東芝の電気車輌』 評価:☆☆☆  原題は『ELECTRIC ROLLING STOCK of Toshiba』で、海外向きに作られたもののようだ。  東芝(当時の正式名称は東京芝浦製作所)の府中工場で造られている電気機関車の製造過程を、20分という時間内でコンパクトに紹介するもの。  当然ながら、コンピュータによる支援のない1958年当時の、車輌製造の実際を手際よくまとめている。  他の製造現場もそうだったと思うが、現場は一人ひとりの職人芸によって支えられていた様子がよく映し込まれている。ヘルメットや手袋無しに作業しているのは、今からすると非常に危険と感じるが、当時は、そういう安全管理基準だったのだろう。  しかし、東芝が電車を造っていたとは知らなかった。ナレーションによれば、明治時代の電車の黎明のころからだそうだ。  そして、台湾やインドなどにも相当数が輸出され、現地で走っている様子も撮られている。世界の東芝ですな。  ラストは、当時新しく走り始めた、先頭車輌を細長く丸めた、小田急のロマンスカーの紹介で締め括られている。うーん、時代を感じる。  たぶん“鉄っちゃん”な人には、大変に面白い・興味深いものになっているのだと思う(逆に批判も多いかも)。  現在の車輌製造過程(新幹線など)を捉えた映画があるならば、併映されると、より多くの人に楽しめるのではないかとは思う。  黒木監督の演出は、この時点ではまだオーソドックスなものだが、この後、編集を他人任せにしないで自ら行う姿勢は、すでにこのデビュー作から実施されていたという。  産業技術史的には意義のある一作だと思う。 『東芝の電気車輌』 【製作年】1958年、日本 【製作】岩波映画製作所 【監督】黒木和雄 【脚本】高村武次 【撮影】藤瀬季彦 自著『私の戦争』佐藤忠男著『黒木和雄とその時代』

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