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分太郎の映画日記

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2007.06.08
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 傑作『羊たちの沈黙』でアンソニー・ホプキンスが怪演したハンニバル・レクター博士の誕生譚。シリーズの原作者トマス・ハリス自ら脚本を書いている。
 いわゆるロードショー公開で見損ねて、昔で言うところの二番館とも言うべき東京・銀座の銀座シネパトスにて鑑賞。

 『ハンニバル・ライジング』 評価:☆☆

 じつは、見るかどうかかなり迷って、そのためロードショー公開では見逃してしまった訳だが、結果は、まぁDVDでも良かったかな、というところ。

 “ハンニバル”ものではない作品として作られていれば、そこそこの佳作になったのではないかとは思うが、“ハンニバル”シリーズの第一作としては違和感がありすぎ。
 青年ハンニバルがギャスパー・ウリエルという点の違和感は脇に置く。

 一番の問題は、ハンニバルが妹の復讐のために殺人を展開すること。『羊たちの沈黙』や『ハンニバル』から受ける博士の印象・造形からは、目的を持った復讐劇を行う人物像は、とても想像できない。
 だから意表をついてよいという評価もあるかもしれないが、かなり奇をてらいすぎ。
 もっとも、この後次々と続編が作製されて、人物像の変遷が描かれて、『羊たちの沈黙』でのハンニバル像に結びつくようになる可能性はあるかもしれないが、情動的な心根が変化するには、よほどのイベントを用意しなければならないだろう。

 もう一つ、ハンニバルをハンニバルたらしめる人食嗜好――この理由が、結局わからないことが大きな難点だと思う。
 子供時代にあのような経験をすれば、ふつうは逆に、人間の肉には拒絶反応を起こすようになるはずだ。それが反転するわけだから、よほどのきっかけ――本人の意思ではない、外からの強制的な働きかけ――が必要だろう。それがない。
 復讐の一貫として(無理矢理に)食べたら予想外に美味しくて、というのもありだとは思うが、それであれば、最初の復讐(国境警備兵)の段階ですでに頬肉を食したらしいので、肝心のその場面を描くべきではなかったか。それを省略して、4人目(リーダー)の復讐の際に、ようやく頬に噛みつくシーンが描写されても、何の説得力も生じない。

 また、復讐劇の話としては、一学生でしかないハンニバルVS人身売買の組織のリーダーと(多数の)手下、という図式になるが、観客にはハンニバルの将来の無事な姿が分かってしまっているので、リーダー側が先手をとりハンニバルが危機に陥るように見えても、なんら緊迫感やスリルを生み出す演出になりえていないのも、大きなマイナス。

 話の展開で細かいことを言えば、最後の復讐対象者を、もったいぶってラストに登場させたにしては、私には意味なしにしか見えなかった。
 何か隠された深い意味などがある(あった)のだろうか? 強いて言えば、単にヨーロッパからアメリカ大陸に渡るきっかけ、か。なんかすっきりしない。

 せめて、“叔母”であるレディ・ムラサキとの関係描写が、もっと突っ込んで描かれていれば、それはそれで、ハンニバルの人格形成として面白い物語になったと思うが、そこも中途半端な感じだった。
 最初の殺人の際に、レディ・ムラサキが事後にある手助けをするわけだが、その後の展開でそれがあっさりスルーされてしまったのは、もったいない。

 そもそも、始めに映画ありきで企画がスタートし、それからトマス・ハリスが小説を執筆、ついで脚本も執筆、そして映画化という流れの本作。
 もしかしたら鍵となるのは小説かもしれないが、まだ未読。ちらちらとページをめくった感じでは、なんとなく雰囲気が映画とは少し異なっているようで、小説を読むと意外にすっきりするのかもしれない。
 なるべく早い内に目を通したいとは思うが、さていつになるか。

 青年ハンニバルを演じたギャスパー・ウリエルは、確かに演技力的には悪くないが、「新しいハンニバル像を想像する」という製作者の試みは、上述のような脚本・演出の違和感もあって、成功しているとは言いがたい。
(あと顔の外見はともかく身長が高すぎないか?)

 レディ・ムラサキを演じたコン・リーは、彼女のデビュー作『紅いコーリャン』から種々出演作を見てきているので(個人的には『きれいなおかあさん』が彼女のベスト)、どうしても日本人には思えず、その点もこの映画の違和感を覚える原因の一つであるが、これは仕方のないところか。
 私も、たとえばイギリス人とフランス人、ドイツ人の区別がつくかと問われると、かなり厳しいのも事実なので。

 と、いろいろと批判を書いたが、映像的には見所もあるし、役者陣の演技も悪くない。
 先に記したように、“ハンニバル”シリーズから独立させて、ハードボイルド復讐劇として作られていれば、それなりの佳作になったのではないかと思うと、何かもったいなかったようで残念。

 なお、“ハンニバル”ものは、本作を含めて5回映画になっているが、私の評価では『羊たちの沈黙』が☆五つ、『ハンニバル』が☆三つ(クラリスがジュリアン・ムーアというのに大きな引っ掛かりがあり)、『レッド・ドラゴン』ほ☆四つ(エドワード・ノートンが好演)、『刑事グラハム/凍りついた欲望』(DVDは『レッド・ドラゴン/レクター博士の沈黙』として発売)は☆二つ(こういう軽い?感じも悪くはないが、如何せん脚本が雑すぎ)、というところかな。


(あらすじは省略)


ハンニバル・ライジング』 HANNIBAL RISING

【製作年】2006年、イギリス、チェコ、フランス、イタリア
【配給】東宝東和
【監督】ピーター・ウェーバー
【原作・脚本】トマス・ハリス
【撮影】ベン・デイビス
【音楽】アイラン・エシュリケ、梅林茂
【出演】ギャスパー・ウリエル(ハンニバル・レクター)、コン・リー(レディ・ムラサキ)、ドミニク・ウェスト(ポピール警視)、リス・エヴァンス(逃亡兵のリーダー:グルータス)、スティーヴン・ウォルターズ(手下:ミルコ)、ケヴィン・マクキッド(手下・カフェの主人:コルナス)、リチャード・ブレイク(手下・国境兵:ドートリッヒ) ほか

公式サイト
http://www.hannibal-rising.jp/

コン・リー出演作DVD

『きれいな
おかあさん』

『紅いコーリャン』

原作本(上巻)

原作本(下巻)

DVD
『羊たちの沈黙』

DVD
『レッド・ドラゴン』

DVD
『ハンニバル』





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最終更新日  2007.06.13 14:56:29
コメント(8) | コメントを書く
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こんにちは。   マサラ0517 さん
TBありがとうございます。
やはりシリーズに思い入れがあると、かなり違和感があると思います。
せめてアンソニー・ホプキンスに似た雰囲気の俳優を使って欲しかったなぁー。
(2007.06.13 15:50:46)

Re:こんにちは。   es1-Bunbun さん
マサラ0517さん
コメント、TBありがとうございます。

> せめてアンソニー・ホプキンスに似た雰囲気の俳優を使って欲しかったなぁー。

その通りですね。
何か続編も作られてしまいそうな気はしますが……。
今後もよろしくお願いいたします。 (2007.06.13 18:52:15)

TBども!   高知県の果物大好き!小夏 さん
あまりにもすっきりしないので小説買いました。
ちょっと納得行きましたけど…。
映画ははしょり過ぎたかなあと思います。
せめてレディムラサキは小雪とか日本女優にやってもらいたかったですね。 (2007.06.18 21:57:37)

Re:TBども!   es1-Bunbun さん
高知県の果物大好き!小夏さん

コメントありがとうございます。

> あまりにもすっきりしないので小説買いました。
> ちょっと納得行きましたけど…。

やはり小説は読んだ方が良さそうですね。

> せめてレディムラサキは小雪とか日本女優にやってもらいたかったですね。

そうですね。
ただ、日本人女優があまりハリウッドに出て行っていない現状、制作側にも選択肢がなかったのではないかとも思います。
今後もどうぞ宜しくお願いいたします。 (2007.06.19 10:33:38)

こんにちは。   ぴろき☆ さん
TBどうもありがとうございます!
私も羊たちの沈黙が一番面白かったです。
今回やや消化不良気味なので、小説を読もうかどうかなやんでいるところです。。。
今度映画を観る際には分太郎さんのブログを参考にさせて頂きます! (2007.06.24 10:04:38)

Re:こんにちは。(06/08)   es1-Bunbun さん
ぴろき☆さん
こちらこそコメントをありがとうございます。

> 私も羊たちの沈黙が一番面白かったです。

やはりそうですよね。このシリーズに限らず、第一作を上回るのはなかなに難しい(ジャンル違いますが『スター・ウォーズ』は第2作がベストかなと思います)。

> 今回やや消化不良気味なので、小説を読もうかどうかなやんでいるところです。。。

読んだ方がすっきりはしそうですよね。私もツン読状態で、実は枕元に置いていたりしますが、なかなか手が出せない感じです。(他に読みたい本もたくさんあるので)

>今度映画を観る際には分太郎さんのブログを参考にさせて頂きます!

駄文を書き連ねているだけなので、ほとんど参考にはならないと思いますが、今後もどうぞ宜しくお願いいたします。 (2007.06.25 13:16:11)

こんにちは。   える・とーます さん
TBありがとうございます。
どうにも物足りない感じが残る映画でしたね。

私は『レッド・ドラゴン』出版当時からレクター博士とのお付き合いがあります。だからこそ、違和感がとてつもなくあるのかも。
映画と原作は違うんだと分かっていても、不満が噴出してしまいます。
『羊たちの沈黙』の出来が良すぎたのかも。です。期待しすぎてしまうのでしょうか。 (2007.07.01 13:02:11)

Re:こんにちは。(06/08)   es1-Bunbun さん
える・とーますさん
コメントなどありがとうございます。しばらくアクセスできなかったために御返事が遅くなってしまいました。

> どうにも物足りない感じが残る映画でしたね。
まったくその通りですね。

> 『羊たちの沈黙』の出来が良すぎたのかも。です。期待しすぎてしまうのでしょうか。

確かにあの作品が傑作だったために、どうしてもそのレベルまで言って欲しいと期待してしまいますね(といってもプロデューサーが違いますけど)。

このままだと続きも作られてしまうような気がするのが怖いところ……。

今後もどうぞ宜しくお願いいたします。 (2007.07.05 17:50:14)

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