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分太郎の映画日記

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2007.06.17
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 映画史的には、森繁久彌と淡島千景による名作『夫婦善哉』の原作者として有名な織田作之助による同名の小説の映画化。明治から昭和に渡る大阪を舞台にした人力車夫の他吉と、彼をめぐる人間模様を描いた一代記。南田洋子が一人二役に挑戦している。
 東京・京橋にある東京国立近代美術館 フィルムセンターで開催中の「映画監督 川島雄三」 にて鑑賞。
 なお、本作はDVDが発売されている。

 『わが町』 評価:☆☆☆☆

 原作はほとんど入手不可能なので、未読。

 いわゆる川島作品(若尾文子とのコンビなど)をイメージして鑑賞すると、肩すかしを食うかも知れない。しかし、この作品は傑作だ。

 もともとは戦時中に溝口健二監督が撮る予定だったらしいが、溝口監督が戦時協力的なことを嫌ったことと、織田作之助による脚本が気に入らなかった?らしく、お蔵入り?していたものを、織田氏の死後に、盟友?の川島雄三監督が追悼の意味合いも込めて撮影したもの、らしい(自分で調べたわけではないので……)。
 ご存知ない方のために触れておくと、川島監督のデビュー作『還って来た男』は、織田作之助の短篇「清楚」を映画化したものである。

 話的には、原作は未読なので何とも言えない部分はあるが、少し尺が短い(約100分)感じで、時間が大幅に飛んでしまうところ(とくに戦時中)はもう少しじっくりと描いて欲しかった気もするが、映画製作の当時としては、まぁこれが限界だろう。

 フィリピンで、数百人の日本人の死者を出したというベンゲット道路の建設工事に従事していた、通称ベンゲットのタあやん※が、大阪の下町に帰ってきて巻き起こす人情ものだが、その大阪の下町──天王寺の裏町・我太郎長屋を中心とした──の様子が実に生き生きと描かれて、当時の(関西の)日常風景が活写されているが、過度に近寄るでも突き離すでもなく、適度なポジションで捉えている演出がgood。

※単行本『花に嵐の映画もあるぞ』に所載の川島雄三監督と辰巳柳太郎との対談での表記による。

 そして、何よりも主人公を演じた辰巳柳太郎と、同じ長屋の隣人を演じた殿山泰司の演技が素晴らしい。辰巳柳太郎の映画というと『人生劇場 飛車角と吉良常』くらいしかすぐには思い浮かばないのだが、頑固だが人情味あふれるタあやんの不器用な生き様は、彼の代表作となるものではなかろうか。
 また、娘や孫を演じた高友子や南田洋子も大好演。

 ただ、欲を言えば、個人的には主人公を阪東妻三郎が演じた作品で(も)見てみたかった気はする。バンツマの傑作『無法松の一生』での人力車夫姿と、本作がダブル部分があることもあるが。

 この映画のもう一つのポイントだと思うのは、数少ないプラネタリウム物語にもなっていることだ。

 後半、孫娘の君枝と幼なじみの次郎が、タあやんが折に触れて語るフィリピンの星空を見に、大阪私立電気科学館(四つ橋)に行く場面があり、そしてラストシーンは、このタあやんとプラネタリウムのシーンで終わる(この場面、涙なしでは見られない)。
 私の知る限り、映画の中でプラネタリウムが重要な形で登場したのは(そしてプラネタリウムでなければならない)、これが始めてではないかと思う(外観などは別にして)。

 なお、作家の瀬名秀明氏が、プラネタリウムを題材に、織田作之助氏と『わが町』にオマージュを捧げた作品として『虹の天象儀』を著している。短い作品だが(文庫本)感動的なので、この映画をご覧になられた方は是非ご一読を。

 次のボーナス(って出るのかな?)で、やっぱりDVDを買うことにしよう。


『わが町』

【製作年】1956年、日本
【製作・配給】日活
【監督】川島雄三
【原作】織田作之助
【脚本】八住利雄
【撮影】高村倉太郎
【音楽】真鍋理一郎
【出演】辰巳柳太郎(佐渡島他吉)、南田洋子(他吉の妻:お鶴/他吉の孫:君枝)、高友子(他吉の娘:初枝)、大坂志郎(初枝の恋人・夫:曽木新太郎)、殿山泰司(長屋の隣人:桂〆団治)、北林谷栄(長屋の住人:おたか)、小沢昭一(おたかの息子:啓吉)、三橋達也(君枝の幼なじみ:花井次郎)、長岡秀幸(少年時代の次郎)、大友美鶴(少女時代の君枝)、志摩高子(少女時代の初枝) ほか



DVD

大谷晃一著
『織田作之助』

藤本義一著
『川島雄三、サヨナラ
だけが人生だ』

川島雄三著
『花に嵐の映画
もあるぞ』

瀬名秀明著
『虹の天象儀』

プラネタリウム
小説の傑作
『せちやん』

プラネタリウム
の解説本
『地上に星空を』





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最終更新日  2007.06.18 16:03:40
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