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2007.06.19
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 イスラエル(とアフリカ。一部フランス)を舞台に、少年の苦悩と成長を描き、生きることの意味を鋭く問いかける傑作。
 東京・神保町の岩波ホールにて最終日に鑑賞。(乾燥が遅くなってしまった)

 『約束の旅路』 評価:☆☆☆☆☆

 今年鑑賞したイスラエル関係の映画としては、

 ・徴兵された二人の女性兵士の日常を描いた『クロース・トゥ・ホーム
 ・イスラエル占領下にあるゴラン高原(元シリア領)に住む女性がシリアの男性に嫁ぐ一日を捉えた『シリアの花嫁
 ・キブツを舞台に少しずつ壊れていく母親と13歳の少年の物語『甘い泥
 ・イスラエルの“いま”を切り取る四つの短編映画
 ・自爆攻撃に向かうパレスチナの二人の若者の48時間の葛藤を描く『パラダイス・ナウ

などがあるが、いくつかの短編を除けば、みな是非とも鑑賞して欲しい傑作だった(それぞれの感想はリンク先参照)。
 また、今月の下旬からは渋谷で『ジェイムズ聖地へ行く』も公開予定。

 そして、この『約束の旅路』。これもとても良い感動作であった。

 「感動作」と書くとたちまち陳腐にな表現になってしまうが、最近の邦画に多い「いかにも泣いてください」映画とは違って、心の底から揺さぶられて、自然と涙があふれ出てきてしまう、そういう映画であった。

 物語は、「モーセ作戦」を発端とする。
 エチオピアには、先祖代々ユダヤ教を信じ、いつの日か聖地エルサレムに帰還できることを夢みている、黒人のユダヤ人──エチオピア系ユダヤ人がいた(なぜエチオピアでユダヤ教が広まったかはよくわからないが、ソロモン王とシバの女王の子孫だという)。彼らをイスラエルに移送するのが、「モーセ作戦」(1984~85年)と「ソロモン作戦」(1991年)だ。
 実際は、当時の政権はエチオピアからの移住を禁じていた。そのため、スーダンの難民キャンプまで数千キロも逃れてきた者を救出するというものであり、彼らはスーダンの難民キャンプまで、数千キロの道のりを歩かねばならず、途中で4000人以上が死亡したという。
 モーセ作戦によって8000人、ソロモン作戦によって1万5000人が移住、ファラシャ(土地を持たない者)と侮蔑?的に呼ばれるようになる。
 エチオピアでは少数派のユダヤ人として差別され、イスラエルに“戻って”も黒人のユダヤ人ということで差別されてしまう。このあたりも、映画はじつに丁寧に描いている。

 少しはイスラエルについて知り始めたかなと思っていた私も、黒人のユダヤ人(エチオピア系ユダヤ人)がいること自体をまったく知らなかった。お恥ずかしい。

 主人公の少年は、このモーセ作戦のおかげでイスラエルに移送されるが、実は彼はユダヤ人ではなく、キリスト教徒だった。実の母親が息子を生き延びさせるために、子どもを亡くしたばかりのユダヤ系の女性に託して、イスラエルへと脱出させたのである。
 息子は幼かったために、なぜ自分が母親から突き放されたのかが分からない。

 この息子を突き放すときに、母親がかけた言葉が、原題の“Va, vis et deviens”だ。
 2005年のフランス映画祭で上映された際には、この原題を直訳して『行け、生きろ、生まれ変われ』とタイトルがつけられていた。これはいろいろに考えさせられる言葉だ。
 この3番目の「(何かに)なりなさい」というのが、特に青年になってからの主人公の悩みの一因でもなる。自分が何になれるのか、何ができるのか。
 (ネタバレになるが)結局、彼が選んだのは、育ての父親が望んだ銃で国を守る(=人を殺す)ことではなく、人を生かす──医者になる道であった。ここまで。そしてラストを見ると、『約束の旅路』というタイトルが非常に秀逸なことに気がつく。

 話を戻して、幼い主人公をイスラエルで迎え入れてくれた家族は、敬虔なユダヤ教徒ではなくリベラル(左派)に属していた。このある意味で自由な家庭環境が、逆に、自分が本当はユダヤ人でないことの悩みをより助長させ、偽りの日々を送ることの負担が彼を責め立てることになる。
 彼が初めて家族に打ち解けて食事をする場面は、大変に感動的だった。

 この後、映画は、少年時代から青年時代までを丹念に描いていく。

 個人的に衝撃が大きかったのは、(ネタバレになるが)主人公が留学のためにフランスへ旅立つ際に、育ての母親が「自分は養子を迎えることに大反対であった」と打ち明ける場面。
 幼年時代から、黒人ということで学校その他で差別される主人公を、暖かく包み込み、時には周囲に攻撃的になって、守ってきたとしか思えない彼女のこの言葉に、母親の愛情というのは、男性の私が思いもよらないほどに、本当に奥が深いものなんだなぁと、しみじみと感じ入った。

 衝撃的ということでは、(予告編でも流れているが)イスラエルに連れてこられた主人公が、シャワーを浴びた際に、流れていく水を見て、もったいないと泣き叫ぶシーン。
 直接ではないが、難民問題の深刻さが端的に表されていて、名場面だと思う。

 また、宗教的な意味合いはよく分からないが、肌の色の議論のシーンもいろいろと考えさせてくれて印象的。

 余談になるが、本作をアフリカ映画としている方が多い。確かに、映画の冒頭とラストはアフリカであり、エチオピアが物語の背景にあるので間違っているとは言えないが、私的にはイスラエルはアジアの一部という認識だったので、ちょっと意外だった。

 なお、『約束の旅路』ブログ募金キャンペーンが展開されているので、バナーを貼っておく。
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 この映画は、単に少年の成長物語としてだけでなく、人種や宗教的な差別の問題、“母親”の無償の愛、難民問題の深刻さなど、さまざまなものを訴えていて、多くの人に鑑賞して欲しい傑作だと思う。


【あらすじ】(ネタバレあり)
 1984年、スーダンの難民キャンプ。エチオピア系のユダヤ人だけがイスラエルへ脱出できることを知った母親は、9歳の息子に「行きなさい、生きなさい、生まれ変わりなさい」と旅立たせる。2人はキリスト教徒だった。その日、子どもを亡くしたばかりの女性ハナと医師の手助けで、息子はイスラエルにたどり着く。
 エチオピアのユダヤ人たちはファラシャと呼ばれ、歓迎される一方、移民局の厳しい審査を受けなければならなかった。なんとか入国が許された少年は、役人からシュロモというユダヤ名を与えられ、ハナは病で逝ってしまう。
 シュロモは、リベラルなヤエルとヨラム夫婦の養子となる。一家は愛情をもって接するが、黒人の少年への差別は厳しく、またシュロモも本当はユダヤ人でないことを誰にも打ち明けられず、一人苦悩する。
 ある日シュロモは、テレビで知った宗教指導者のケス・アムーラに会いにいき、難民キャンプにいる実の母親にエチオピアの言葉で手紙を書いてくれるように頼む。その晩、シュロモは初めて家族と打ち解けた。
 1989年。シュロモは成人の儀式を向かえ、パーティでエチオピアの踊りを踊る。ケスは、これからは自分で手紙を書けとシュロモに告げる。
 学校では、友達がサラという女の子に出す恋文を代筆していた。彼女の誕生日祝いにシュロモも招待されるが、黒人を嫌う父親に追い返されてしまう。サラが家まで来て、シュロモを路上のダンスに誘う。そしてシュロモは恋をした。
 サラの父親に本当のユダヤ人であることを示すために討論会に参加、「アダムの肌の色は何色だったか」との議題に見事勝利するが、かえってサラの父親に悪魔よばわりされる。そんな彼を励ましたのは、一警官だった。
 徐々に養父ヨラムと対立するようになったシュロモは、ヤエルの薦めでキブツ(集団農場)に行く。ヤエルの父はキブツの創設者の一人だった。しかし、ここでも彼は孤独だったが、心配して訪ねてきた祖父に、土地は分かち合うべきだ、と教えられる。
 1993年。シュロモはテレビでアフリカの干ばつと飢餓を知る。実の母親を探しに行きたいと訴えるシュロモにケスは、自身の悲惨な過去を語り、今ここで生きることの大切さを説く。荒れて警官に捕まったところをケスに助けられ、シュロモは過去の一切を打ち明ける。そして母親の真の気持ちを教えられるのだった。
 傷を負っていたシュロモを、ケスは知り合いの医師のところへ連れていく。彼は、かつて赤十字の一員としてスーダンの難民キャンプにいて、シュロモの脱出を手助けした、あの医師だった。シュロモは、ようやく自分の進むべき道を見つけた――医者になるためにパリ行きを決意をする。
 ヨラムは兵役拒否をするのかと猛反対したが、ヤエルは息子を励まして送り出した。出発の日、ヤエルは秘密を打ち明ける。実は自分は養子をとることに反対であった、強引に彼を迎えたのはヨラムで、彼のおかげで家族になれたと。
 2000年。シュロモはイスラエル軍の軍医として、戦場と化した町にいた。アラブ人の子どもを助かるが、負傷してしまう。
 病院を訪れたヤエルは、サラは10年もあなたを待ったのだから、愛してると言いなさいとシュロモを威す。自分の家族を捨てて、サラはシュロモと結婚した。初夜の晩、秘密を明かそうとするが、結局言い出せない。
 サラが妊娠した。シュロモはやっと真実を語るが、10年のあいだ自分を信じてくれなかったと、サラは怒って家を出てしまう。ヤエルは、心から愛しているから失うのが怖くて言い出せなかった、これは愛では、とサラを諭すのだった。大勢の母親に愛されているのね、とシュロモのところへ帰ってくる。
 しばらくの後。
 国境なき医師団の一員として、シュロモはアフリカの難民キャンプにいた。携帯電話にかかってきたサラと片言を話始めた子どもからの電話にでるために、テントの外に出たシュロモの目に、一人の女性が映る。母親だった。


約束の旅路』 Va, vis et deviens

【製作年】2005年、フランス
【配給】カフェグルーヴ、ムヴィオラ
【監督・原案・共同脚本】ラデュ・ミヘイレアニュ
【脚本】アラン=ミシェル・ブラン
【撮影】レミー・シェヴラン
【音楽】アルマンド・アマール
【出演】ヤエル・アベカシス(義母ヤエル)、ロシュディ・ゼム(義父ヨラム)、モシェ・アガザイ(幼年時代のシュロモ)、モシェ・アベベ(少年時代のシュロモ)、シラク・M・サバハ(青年時代のシュロモ)、イツァーク・エドガー(ケス・アムーラ)、ロニ・ハダー(シュロモの恋人・妻:サラ)、 ラミ・ダノン(おじいちゃん) ほか

公式サイト
http://yakusoku.cinemacafe.net/


原作本






最終更新日  2007.06.19 18:58:26
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