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カテゴリ:私の居場所 番外編
6.<まるまじろ>
ユナ達は、クロノスの魔法の光に頼りながら、相変わらず薄暗い洞窟を進んでいる。 洞窟は長い。 途中、コウモリの姿をしたモンスターや、アブラムシのように動きが早く、羽が 生えたモンスター達に遭遇したが、ユナの武器であるムチで素早く倒し、二人は 先を急いだ。 「気持ち悪い敵ばっかり~」 身体がぞわぞわして、痒くなる感覚を覚える。 「そだな、早く帰ろ」 さっきから、洞窟がどんどん狭くなっていってる気がする。 土のモンスターを倒した時には、二人横に並んで両腕を伸ばしてもぶつからない ぐらいの空間があったはずなのに、今は一人片腕を伸ばすのが精一杯だろう。 洞窟はさらに狭くなり、やっと人一人が通れるぐらいのスペースにまで縮んだの だが、 突然、道が開けた。 「わっ!」 クロノスが急に歩みを止め、後ろから着いてきていたユナは、クロノスの背中に ぶつかった。 よく見ると、そこには大きなもさもさの、灰色の毛をした巨大鼠のモンスターが いた。爪が鋭く、べっとりと血がついている。 それは空気に触れ、どす黒く変色していた。 人間の血なの...! マジロ村の人達の...! ユナはぞっとした。 「コイツか。」 ついに、まるまじろらしいモンスターを発見し、ユナ達は身を構えたのだが、 巨大鼠ーまるまじろはいびきをかいて、眠っているようだ。 「ユナ、静かにしてろよ。」 クロノスはユナの耳元でそう囁くと、魔法の詠唱にはいった。 まるまじろは眠ったままだ。 クロノスは詠唱を終えると、杖から火の玉を出し、まるまじろの腹に命中させた。 だが、まるまじろはびくともしない。 「効かない、だと?」 クロノスは違う魔法の詠唱に入り、まるまじろに雷を浴びせてみたが、 やはりまるまじろはびくともしない。 それを見かねたユナが、まるまじろをムチで叩いた。 バチン! すると、まるまじろは赤い瞳を開き身体を起こした。 怒ったまるまじろは、鋭い爪をユナに向けて降り下ろしたが、ユナは反射的に仰 け反り、それをかわした。 「ぶ、物理攻撃は効くみたい~!」 まるまじろは、視界の隅でクロノスの姿をとらえると、方向を変え、大きな口を開け飛び付いた。 鋭い牙が目に入った。 「クロノス!危ない!!」 クロノスは避ける暇もなく、あっけなくまるまじろに喰われた。 「そんな!!!ク、クロノス...!」 悲しむ間もなく、まるまじろはユナに向き直ると、じりじりと歩み寄った。 「い、いや...!」 あたしも、喰われる...!! まるまじろとユナの距離はどんどん縮まり、 再び鋭い爪がユナに向かって降り下ろされようとしたが、 急にまるまじろの動きが止まった。 腹を押さえると、苦しみだした。 「ウゥゥ...!!!!」 まるまじろは暫くのたうちまわっていたが、押さえていた腹が突然爆発し、 その肉片が辺りに飛び散った。 「な、なにが起こったの...」 ユナは突然の出来事に呆然とした。 目を凝らすと、人影が見えた。 そこには、まるまじろの血を浴び、全身血みどろになったクロノスが立っていた。 「ク、クロノス」 「ユナ」 あまりにグロテスクだったが、クロノスが生きている事が嬉しくて、ユナは抱きついた。 「良かった!!生きてたの~!!」 「あたりまえ。」 「何がど~なったかよくわかんなかったけど、よかったよお!」 はしゃぐユナに対し、クロノスは冷静に答えた。 「まるまじろの身体の中で詠唱して、爆発させた。 とっさに自分の身体にバリアをはったから、喰われても無傷ですんだ。」 「そ、そ~だったの!」 ユナは涙が止まらなかった。 気がすむまで、クロノスの胸の中で泣きじゃくった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.06.24 20:11:22
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