下手の観客入口に現れた髭顔に白塗りの大森は、バーンとではなくあくまでモジモジするように、入口でたたずみそして静かに舞台に登ってくる。舞台をゆっくり走りながら気持ちを落ち着かせるようにして、緩い踊りを踊る。大森の踊りは緊張感の強い舞踏ではない。自然体と自然態に基盤をおくように、緩い。しかしそれが見ているうちに踊りとして立ちあがってくる。主宰する天狼星堂の舞台では、その魅力があまり伝わらないが、ソロをじっくり見ると、舞踏の一つの形が見えてくる。自然に生きることと、恐ろしく不自然である人前で踊るという行為を一致させることができる舞踏家は極めて少ないが、大森はその一人だ。
上手奥に立てられたアンモナイトの張子。その傍に寝転ぶ大森。袖に引っ込むときも決してカッコよく決めない。黒い衣装で登場、かなり悪魔的な姿だが、大森の踊りはそれとは裏腹に静かで優しく、山頭火風の俳句の言葉、詩の一節をモゴモゴと吐きながら這いまわる。さらに割烹着姿になって、舞台中央で手を静かに上げていく。弘田三枝子の「人形の家」が強く響くなか、手を上げることで裸身の股間が見えてくる。白塗りの性器がほんのりと見える。このラストは音楽の強さに引かれてかなりカッコいい。しかしここでできれば再び、緩い大森に戻って終わってほしかった。しかしそれはともあれ、舞踏として素晴らしいソロだった。
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最終更新日
2004年07月22日 20時50分22秒
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