カテゴリ:日記
「あれ?どうして寝ちゃうんでしょう不幸くんてば」
倒れて意識のなくなったリーレウを、「疲れて寝てしまった」と解釈したバルト。 「まだ私がここにきた目的を知らないくせに、困った人だ…」 机につっぷしたリーレウを、抱き起こして、彼の足に自分の腕をくぐらせる。 まぁ、いわゆる「おひめさまだっこ」をして、バルトはリーレウの寝室へと彼を運んだ。 ベッドに寝かしつけた後、「さて、」とひとりごちたバルトは、足下にまとわりつく 黒猫の存在に気がつき、彼女に声をかけた。(どうやらメスらしい) 「あぁ、もう帰ってきたんですか。優秀ですねぇキィちゃんは」 応えるように、キィと呼ばれた猫は「な~」と鳴いた。 そして爪をたててひっかこうとした矢先に、バルトは彼女を抱き上げた。 「はいはい、わかりましたよ。キッチンに戻りましょうね」 キィを抱えたまま、彼はキッチンへ足を向けた。 翌朝。リーレウはベッドの上で意識を取り戻した。 一瞬、いつもの朝な気がしてしまったが、寝室に入ってきた人物を見て一気に現実にかえった。 「おはようございます♪」 冷や汗がどーっと背中を流れた気がした。 はっとして、リーレウは自分の着ている服を確かめた。 しかし、昨日の服のままなんら変わっているところはない。 とりあえず体の異常もなく、リーレウは相手の動向をうかがうことにした。 「昨日は不幸くんが寝てしまったおかげでだいなしになってしまったので、 今日しきり直すことにします。私はここで待ってますから、 お仕事にいっていらっしゃい」 何を!! ぼくはそうつっこみたかったが、内容を聞くのがこわかったので、 びくつく心をもったまま研究所へと向かった。 …帰りたくない… しかし、無情にも夜はやってくる。 またも守衛さんに追い出されたぼくは、仕方なく悪魔のいる家に帰った。 「おかえりなさい♪昨日より早かったですね」 キッチンは既に黒いカーテンに変えられていて、ぼくの白いマントがぼうっと浮いているように感じた。 「さ、食事にしましょう」 テーブルに並べられた食事の数々は、どれも豪勢なものばかり。 その中でも、ひときわ浮いていたのがセンターにどーんと置かれたケーキだった。 「これは…?」 椅子につき、おそるおそるケーキを指さすと、バルトくんは笑顔で応えてくれた。 「ケーキです。」 …そうですか… とりあえずレタスとブロッコリーのサラダにフォークをつけたぼく。 向かいの席で、バルトはうれしそうに鼻歌まじりで昨日のスープの残りをわけている。 「ところで、昨日がなんの日か知ってますか?」 唐突に彼が話を切りだした。 そうだ、朝そんなようなことを言っていた。 「知りませんよ」 そう返すと、今度はバジルチキンをほおばった。 「…そうですか。あぁいいです。そのままで聞いてください。 薄情すると、昨日はぼくの誕生日だったんです」 それでやっとこのバカでかいケーキに合点がいった。 「それで、私はあなたに誕生日プレゼントというものをねだってみようと思いました。 だって、18才だし、プレゼントが欲しい年頃でしょう? 不幸くんならくれるかなと思ったんです」 見た目でいくならぼくの方が若く見えるのに。 とい目の前の180センチはあろうかこの男は、とても18才らしくない 落ち着きはらった声で更に続けた。 「でも、あなたにはいつもいいものをもらってるので(楽しむ心を) この子にほしいものを聞いたら、白い鳥がほしいというので…」 そこで黒猫を捕まえたバルトは、いとおしそうに体をなでた。 そこまで聞いて、ぼくは目を見開いたまま思考をめぐらせた。 そういえば、今日の朝、ぼくのかわいい白い使い魔は空を飛んでいたか? 「そこで私は手紙にこう書きました。 ”誕生日プレゼントに白い鳥を頂きたいです。 OKならば、返事は必要ありません。 ぼくはもうあなたの家に向かっているので、あなたの帰りをお待ちしています。 もしイヤだという残念な場合は、私にお返事をください” とね…」 黒猫が、そこでにゃあにゃあ鳴いた。 バルトの腕から逃げると、ぼくの目の前にあるバジルチキンに近づき、つっついた。 …まさか!!! 「こらキィちゃん、あなたの分はこっちですよ」 ハハハと笑いながら、猫を抱き上げると、彼はスープを彼女の前に置いた。 ぼくはそこで意識を失った。 「あれ。また寝ちゃいましたよ不幸くんたら。」 バルトはまたもリーレウを抱き上げると、寝室へと向かった。 その寝室の小テーブルの前には鳥かごが置かれてあり、その中で ばさばさと白い鳥が逃げ出そうともがいていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004/03/10 09:03:38 PM
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