カテゴリ:(小説)バルト×リーレウ物語
「どうせ、持ってかれたのは一つだろ」
道にいた背の高いそばかす顔の少年が肩をすくめて言う。 「まだ、中身見てねーやつじゃん」 「あんまいい財布じゃねーかんじだったからなあ、ちぇ」 草の中を探していた少年達は惜しいことをしたと、 未練がましく草をかき分けながら道へと戻ってきた。 そのまま口々に愚痴を言いつつ、リーレウの姿を求めてきょろきょろと 頭を動かしながら小屋へと戻っていった。 遠ざかる少年達の声を聞き、リーレウはやっと一安心した。 しかし、状況は手放しで喜べるものではなかった。 姿が見えなくなったリーレウは、大量の草を編み込んだ蓋の閉まる 落とし穴に落っこちていたのだった。しかも、すり鉢状の狭い所に 腰から落ちて、V字型の姿勢になったため身動きがとりずらい。 蓋の上で鴉が跳ねながらカーと一声鳴いた。 人が落ちる事を前提にしていなかったのだろう、 幸いなことに穴に深さはなかった。 リーレウは頭を反らして上にいる使い魔に蓋をどけてくれるようにお願いする。 ティーナイはくちばしを使って器用に蓋をずらして行った。 「僕はなんて不幸なんだ…」 リーレウはそう歎息すると四肢を突っ張り、 不格好な姿勢のままじりじりと穴から這い出て行った。 珍しく月がかげり、星がよく瞬く夜だった。 疲労した肉体を引きずりながら、白い鴉を肩に乗せた男は 町の安宿に吸い込まれるよういに消えて行った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/02/10 02:58:40 PM
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