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2008/11/08(土)14:11

失った大切な友達

モントリオールの日常(42)

ずっと、ここに書きたいなー、と思っていた新しく出来た友人がいた。 友人というには失礼なほど年上で 私と旦那にとっては叔母みたいな存在だった人だった。 仮にイクさんとする。 イクさんとは知人の紹介で、 旦那がイクさんの家をリフォーム(壁の修正とかペンキ塗り)させてもらっていた。 旦那の前の人は時給$20でやってもらっていたそうだが、 旦那はメキシコではプロでやっていたが、 ここでは資格も無いし、 他の仕事もあるので$15で引き受けていた。 私も行くたびに良くしてもらい、 キャベツやザーサイ、買ったけど辛すぎて食べられないチキン、 他にもランチに頂いた北京ダックの残りや、 ランチにわざわざ買ったチキンがおいしくなかったからと頂いて帰ったりした。 私にとっては その気持ちも食べ物も大変、ありがたかった。 ところが、外で買ってきた物、手作りの物にこだわらず イクさん家でごちそうになる度に 帰ってきてから気分が悪くなり、 私だけなぜか全て戻していた。 ふと、おかしいな、彼女とは何か合わないのだろうか、と思ったが 「まさか、あんないい人に限って」とその思いを打ち消していた。 3度目からそれは治まった。 亡くなったお母さんの手編みのセーターも「着ないから」と頂いた。 「捨てないでね」と。 イクさんは癌を2度、克服しており、 その病気療養中に日本から送ってもらった 小説等も頂いた。 頂いてばかりで申し訳ないので、 すっぱりもの、辛いもの、キャベツが好きで、 お酒も甘い物もあんまり、と言うイクさんの為に キャベツの酸っぱい煮物を調べて作って持っていったり、 得意のスイーツを作っていったりした。 私と旦那は週末にブレックファストを カフェで食べる事を楽しみにしており、 イクさんをブレックファストに誘ったりもした。 私達の思い違いではなく、 私達とイクさんとはとてもいい関係を築いていた。 旦那の仕事が割と早く片付いた日などは、 夜の10時頃まで話にハナを咲かせた時もあった。 旦那の丁寧な仕事にイクさんはもちろん満足していた。 彼女は年配の割には家電に詳しく、 その内、フラットTV(プラズマTVなど)を購入する予定で、 旦那にあれこれ聞いていた。 家もこの1、2ヶ月以内にフラットTVを購入する予定だったので、 旦那もいろいろと知っている範囲でアドバイスをしていた。 イクさんは「仕事が終わってもあなた達との関係は大切だし失いたくないわ、 あなたはPCの事や家電関係にも詳しいし」と言い、 一緒に、フラットTVを買いに行く計画も立てていた。 アンティークが好きな彼女と趣味が合う旦那は 一緒にアンティーックショップ巡りツアーも計画していた。 2、3ヶ月ほど前、最初に伺った頃、彼女は 「どうして私がこんなに裕福に暮らしているのか教えてあげる」 と言って、カナダの税金システム等を教えてくれた。 彼女は裕福だった。 それが、ストックマーケット(株価)が 暴落してから徐々に彼女は変わっていった。 行くたびに落ち込んでいて、 それでも私達は彼女を元気づけようと ケーキを買っていったり、 かなわなかったけどディナーに誘ったりした。 私の書類を翻訳してくれた時、(彼女は翻訳家) 「お礼なんて・・・」と言っていたのに、 次の給料日には「翻訳代は給料から引かせてもらったわ」と言った。 裕福な頃には「作業はゆっくりでいいの、 ゆっくりでいいから丁寧にやって欲しい」 という彼女の要求が、 「作業は冬までに終わらせて欲しい」に代わり、 最初はペンキ塗りだけの仕事だったのが、 壁の修理工がこないから、というので 壁の修理も受け、 「早く終わらせて欲しい」という彼女の要求に応える為、 最後の二回は私も旦那を手伝った。 彼女も「早い」と喜んでくれていた。 最後から二回目は終わったのはなんと夜の11時だった。 私も次の日は月曜日(彼女の仕事の日)なので申し訳ないな、と思ったのを覚えているが、 その時まで彼女は親切だった。 スノータイヤに代えたら、 古いタイヤは来年の春まで家の地下に置いておいていいわよ、と言ってくれた。 おかしいな、と思ったのは最後の日。 旦那も悪いんだけど、 「日曜日に行けなければ月曜日に工具を取りにいきます」 と言っておいて、 工具を取りにいくだけじゃなく、 せっかく来たのだから、と作業も始めてしまった事。 週に月、火しか働いていないイクさんは、その日仕事から帰ってきて、 パジャマに着替えて夕食をとっていた。 実は、その前にも行って足場を作ったんだけど、 スノータイヤに替える予約があり、 2時間ほど出掛けていたのだ。 「スノータイヤに替えてきた」というと、 いきなりイクさんは旦那に向かって、 「ノー!ノー!」 あなたのタイヤを地下に置く事は出来なくなったわ、と言い出した。 友達が、 「あなた来春から地下を人に貸すのに タイヤを置くスペースを貸すなんて馬鹿よ」と言ったらしい。 「馬鹿じゃないの」って言われちゃったのよ、と 彼女はちょっと困ったように笑っていた。 足場(階段の踊り場)もそのままで、 後片付けもしてなかったから彼女もびっくりしたんだろう。 「今日は来ないって行ってなかったけ?」 「いや、来るって言ったよ」 どちらも本当で、どちらも本当じゃない。 私も複雑だった。 あんまり彼女と顔を合わせられなかった。 彼女は作業が終わるまで、リビングのソファで横になってTVを見ていた。 いつもならちょこちょこ顔を出して、 ちょっかいを出したり、 足りない物は無いか聞いてくれたりしたのに。 私も、仕事だったので疲れたのだろう、くらいに思っていた。 それが、今回の約束の日、 とうとう旦那が仕事で疲れて行けなくなってしまった。 明日行きます、と留守電に入れた日の夕方5時15分、 恐らくイクさんが仕事から帰宅した時間ぴったりに電話がかかってきた。 「あなたにはもう来て欲しくない。 給料はチェックで送るから住所を教えて」 旦那は驚いて、 「どうしてか教えてくれますか?今日、行かなかったから?」 「そうよ、もっと『信頼できる人』に仕事を頼む事にしたの。  だから住所を教えて」 「住所を教える事は出来るけど、  明日、念のため僕の作業道具をチェックしに行きたい」 「もう、チェックしたわ。あなたの私物は無いわよ」 「それでも、もし可能なら自分でチェックしに行きたい。  あなたが来て欲しくないなら別だけど」 翌日、旦那はドライバーを持って彼女のうちに行った。 どんな理由であれ、 あの滑りやすい階段から彼女を守りたいから、階段だけは直すんだ、と。 しかし、彼女はもう聞く耳を持たなかったらしい。 「こんにちわ」に当たる、「ハワイユー」に返事もせず、 いきなり、 「合鍵、持ってきた?」 「どうしたの?大丈夫ですか?」と旦那が聞くと 「ダメよ、ダメ!もう疲れたのよ、 あなたとあなたの奥さんのランチを毎回作るのは!」 ・・・・? ランチ、ですか。 「9月から始めて、今までで12回しか来ていないし。」 作業はゆっくりでいい、と言ったのはどなたでしたか。 「あなたが本来の仕事5日間を終えて、 その後の休日5日間、作業をしてくれるって言ったじゃないの」 いえ、言ってません。 イクさんだって、僕が12時間労働(二交代)をしているの知っているじゃないですか。 そんなに働いたら、休む日がありません。 「その上、毎回奥さんを連れてきて」 すみません、会いたくないならそう言ってくださればいいのに。 僕はゲコさんとあなたはとてもいい関係を築いていると思っていました。 「もう、あなたが壁の修理で出すホコリにはうんざりなのよ」 僕もうんざりです。 「それは仕事のうちでしょ」 だったら、それを依頼したあなたもそれを覚悟すべきでは。 と言った、さっぱり的を得ない分けの分からない理由で激怒、 仕事を解雇されてしまった。 旦那は本来の仕事の合間、アルバイト的に受けていたので 金銭的にはそれほど痛くないが、 今まで築いてきた信頼関係を裏切られたのが痛かった。 もちろん、旦那も仕事を完了できないのは心残りだろう。 壁にセメントを塗った時点で終わりにされてしまったのだから。 もちろん、滑りやすい階段もそのままだ。 しかし、今になって納得できる事がいくつかある。 「はす向かいに住むドイツ人ファミリーが  掻いた雪を家の前に捨てるのよ! 「何するのよ!」と言ったら、 「フランス語で話せ!」だって。 こちらの人は都合が悪くなると、 何でも「フランス語で言え!」って言うんだから。」 って事件。 私が話しても最初、旦那は信じなかった。 一体、何の為にわざわざイクさんの家に雪を捨てに来るんだ? そんな労力を使ってまで・・・?って。 でも、今なら納得できる。 わざわざ労力を使って雪を捨てに行く 嫌がらせをしたくなるほどの 何かがあったんじゃないだろうか。 それと、今まで来てくれた大工さんが 突然、来なくなってしまった事。 知人が、知り合いを寄こす、と言っていたのに、 いつまでたっても連絡が無い事。 私も最初、体調が悪くなった時、 ちゃんと自分を信じるべきだった。 *** 私達が感じるのはお友達が 何かを彼女にアドバイスした事。 彼女も彼女自身のフィーリングを信じず、 お友達を頭から信じてしまったんではないだろうか。 そんな彼女の心の弱さ、 お金(彼女の場合はストックマーケット)が 心に与える影響の大きさを感じずにはいられない。 一度は、仕事が終わってもあなた達との関係は大切だわ、と 言ってくれていたのに。 この関係が修復される事はないけど、 いつの日か、イクさんがこの間違いに気づいてくれる事を祈ります。 P.S.書いてなかったと思ってたけど、 以前に書いていたのねー、イクさんの事。 ああ、あの頃は楽しかった、としみじみ思います。

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