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2005/06/11(土)00:08

レイアウトを考える

 原稿を一通り読み終えた編集者は、その原稿に割付という作業を行なっていきます。割付とは、本文全体のレイアウトを考えて、その仕上りになるように、原稿に設計図を書き入れていくようなものと言えます。具体的には、    1. 見出し文字について、書体や大きさ、配置を指定する    2. 本文自身のアクセントを考えながら、本文の活字の大きさや書体、配置を指定する    3. 図をどこにどのように配置するかを指定する などといった作業を指します。  割付に当っては、まず、その本全体の仕上りのイメージを頭に描くことから始めます。そのため、その本を読もうとする読者をイメージすること、その本の位置づけなど (入門書か教科書的な本なのか、あるいは専門書なのかなど) も考える必要があります。もちろん、これらのことは、本を企画した時点で決まっていることではあるのですが、割付に入るときに、今一度、自分自身で整理することが必要です。  全く同じ原稿であっても、割付の仕方によって、その本の読みやすさや印象は全くと言っていいほど変ってしまいます。このことは、本の編集者でなくても、自分でホームページやブログを立ち上げている人ならば経験していることだと思うのですが、例えば、同じ原稿を、    レイアウトA    見出し : ポップな感じの書体で、本文の活字よりも、かなり大きなサイズ    本 文 : 文章で強調したいところは、その前後の行間を広く空けて、見出しに負けないくらいの大きさに、あるいは罫線で囲んで    図 版 : 本文との間隔もゆったりとって、中央にドーンと配置       レイアウトB    見出し : ゴシック体で、本文よりも少し大きなサイズ    本 文 : 全体を通して、大きな変化はつけずに同じような調子で    図 版 : 基本的に、左右どちらかのワキに配置 の2つのレイアウトで組んだとします。上のAとBのレイアウトで組まれた2冊の本をパッと見て、どちらが易しそうな印象を持つかといったら、おそらく皆さんの多くがAの方を選ぶのではないかと思います。 (ここでは、第一印象をどう思うかということで考えて下さい。)  つまり何が言いたいのかというと、その本の狙いや読んで欲しい読者層をきちんと押さえて、それに合ったレイアウトをしていかないと、レイアウトの方向性を間違ったがために、売れるものも売れなくなってしまうことが起こるということなのです。  これは一つの例ですが、あなたが今、何かあるテーマについて勉強したいと思っているとします。最初は、まず入門書レベルのようなものから読んでみようと考えるかと思います。そして、それを一通り読破して、さて、いよいよ本格的に専門的な部分を勉強してみようと考えたときに、例えばレイアウトAのような本だと、 「この本は入門書みたいで、専門書としては頼りない内容かも・・・」 という第一印象を持つのではないでしょうか。 “内容自体は、あなたのような方に読んで欲しいレベルであるにもかかわらず” 、レイアウトから受ける印象で、読者に買われなくなってしまうということが起こります。逆を返せば、たとえ難しい内容の原稿でも、レイアウトの工夫次第で、読者に易しい本という印象を与えることもできるということになります。  “原稿の内容、読者対象に合ったレイアウトを考える” というのは言葉で言うほど簡単なことではなく、特に編集者として駆け出しの頃は、仕上りの状態がイメージできずに、なかなか思うように割付ができなかったり、割付して入稿した原稿が組版されたゲラを見て、指定があまかったことに気がついて直したりということがよくあります。もちろん、経験を積んだ編集者であっても、ゲラを見てから、 「やっぱり、こっちのスタイルの方がいいかなー」 と思い直して、赤を入れることはよくあることです。  「読んでもらいたいと考える読者の方々に手にとってもらえるレイアウトは、これだ!」 と答えを導き出せるような方程式があればどんなに便利だろうとは思うのですが、こればかりは、多くの経験を積んで、多くの本を参考にして、そしていっぱい悩んで、自分なりの方程式を見つけていくしかないのかなーと思ったりもする、今日この頃です。

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