印刷・製本の工程を終えると、出来上がった本が出版社の倉庫に納本されてきます。 そして、そのうちの数冊が担当編集者のデスクに届きます。 編集者にとっては待ちに待った瞬間であり、綺麗にカバーを巻かれて製本された本を手にするのは本当に嬉しいものです。
さて、献本とは、出来上がった本に 「謹呈」 と書かれた短冊を挟み、お礼状や挨拶状とともに
1. 著者
2. 本の完成までにお世話になった方々
3. 新聞社や、雑誌の発行元である出版社
に届ける (発送する) ことを言います。
まず1つ目は、本が無事に出来上がったという感謝の気持ちを込めて、著者への本の献本です。 著者に対してどのくらいの冊数を献本するかは出版社によって異なるとは思いますが、 おそらく、 5~10冊くらいが一般的なのではないかと思います。そして2つ目は、例えば、図や表などの転載を許可して頂いた出版社や著者、挿絵やイラストを書いて頂いたイラストレーターの方、装丁をお願いしたデザイナーの方などへの献本を意味します。
3つ目は、宣伝を目的とした献本です。 皆さんの中にも、新聞や雑誌の書評欄を参考に本を購入したという経験を持つ方がいらっしゃると思います。 特に、全国紙の書評欄に掲載されると、その本の売り上げにも大きな違いが出てきます。 ただ、書評欄に載るにしても、それは本が発売になってからしばらくして (数ヶ月遅れて) ということはよくあることです。 しかしそれでも、書評欄に載ることで多くの読者の方々にその本を知って頂くことができますし、また、書店の店員の方々にも大きな関心を持って頂くことができるという点で、その宣伝効果はとても大きいと言えます。
昨今の新刊ラッシュにおいては、書店さんも本を並べるための棚の確保に大変苦労しています。 そのため、そうした数多くの本の中で、少しでも話題性のある本は長期的に置いて頂けるということがあります。また、皆さんも見たことがあると思いますが、“書評で紹介された本” というコーナーを設けて読者に対して積極的にアピールをして下さるところも多く、それは出版社にとっても大きくプラスになります。
そのようなこともあって、編集者は、書評欄を持った媒体には積極的に献本を行います。 これはよく言われることですが、 「下手な広告を出すよりも、書評が掲載されたり、クチコミで広まる方が圧倒的に宣伝効果が高い」 からです。 ただ、業界新聞や専門雑誌など、かなり専門的な分野に限られた媒体の書評欄に載った場合には、書店の方にもそれほど大きくは関心を持って頂けないとは言えるでしょうが、その分野に関心を持っている人たちにアピールできるという点では効果は大きいと言えます。
このように、献本というのは編集者の仕事の中では一見雑用的なものに見えるのですが、とても大切な仕事の一つとなっています。