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なにが見えてる?

2007年7月14日の日記の一部


扉をあけると中には夜の草原が広がっていた。
月が頭上高く出ている。
ひざくらいまで草に埋まりながら歩き続けていくと、
一匹の狼が何もいわずに横をついてきた。

これは・・・キーラット?
キーラットは今私のそばにいる羽の生えた狼の子だが、
これは普通の雄の狼で、子供ではない。かなり大きい。
少し安心する。

少し上り坂を行くと、先は崖になっていて、
向こうは海だった。

そして、崖の端にまた石の塔。
塔、といっても低い。塔がついた石造りの家
といった所か。城、というほどではない。
ずいぶん古いものらしく、あちこちがくずれている。

古い木の扉に黒い丸い金属の取っ手があり、
それをおそるおそる引くと重いドアが開いた。
そっと覗くと真っ暗だった。

何十年、いやもしかしたら何百年も開けられてなかったような、
土ぼこりにまみれた部屋。殆どの家具が朽ちているものの、
あちこちには生活していたままの道具類がそのまま残っている。

目がなれてくると、どうやらそこには錬金術師か魔術師でも
住んでいたのだろう、というような物ばかり。
置いてあった本を手にとろうとすると、ボロボロにくずれてしまう。
見たことのない不思議な、模様のような文字がならんでいる。

奥にある階段を上ってみる。

2階に上がったようだが、天上は崩れていて、
月あかりがそのまま入ってくる。石の床、壁の他には
なにもない。崩れた石が転がっているだけだ。

・・・そこでなにをしているのだ

暗闇にオレンジ色を帯びた影が浮かんだ。
ぼやけた像ではっきりしないが、白い髭の老人だ。
ここに住んでいた人なのか?

キーラットが一瞬うなり声をあげる。
・・が、敵意は感じないので、すぐに大人しくなる。

なぜもどってきた。
お前はここにはもうもどってくる必要はない。

このままでは永遠に闇に閉じ込められた精霊でしかない。
このような地の果ての森に閉じこもって
侵入してくる人間を襲って生気を奪うようなことをしてる
ばかりではいつまでも先にはすすめない。
どこにも行き着く先がない。
そう言ってお前は人間になりたいと言った。

そして私はお前に命に限りのある人としての肉体を与えた。
出て行ったはずだろう?もっと他の世界が見たい、と言って。

私ももうここにはいない。
あの後はどうしていたのだ?

・・・答えられない。確かにここにいたような気はする。
老人も知っていたような気はする。でも、何も覚えてはいない。

棚の上に乗っているサークレットに見覚えのあるような気もする。
銀細工のサークレットの中央には青みがかった虹色に光る
暗い色の石がはまっている。

サークレットを額に嵌めてみると、一瞬明るくなってなんだかわからなくなり、
気がつくと、髪が膝あたりまで伸びていた。その石のような青っぽい虹色に
かすかに光るプラチナブロンドのような、不思議な色の髪。衣服は何もつけていないか、
霧でもまとっているような感じで、自分の手を見ると白く透けている。

その精霊は、半人間・半精霊として魔法使いと暮らしていたり、他の人間の街でくらそうと出て行ったり、
再びもどってきたりしていたが、自分を森から解き放ってくれた魔法使いが年を取っていくのに対し、
あまり年を取らなかった。魔法つかいはある日亡くなってしまった。
戻ってきたときにはもうどこにもいなかった。

人間の街に行ってもけっきょくはうまくとけこめず、いろんな町や村を転々としていたが、
ついにもどってくる場所もなくなってしまった。孤独に耐えかねて、もといた森に戻ってみる。

たしかに元の仲間は自分を拒否することはしなかったが、もう木に入ることもかなわず、
精霊にもどることもできなかった。もうどこにも行くところがない。
唯一受け入れてくれた人間もいなくなった。

そういう悲しみの気持ちだけが湧き上がってきた。そのあとはどうしたんだろう?
半人間で、肉体があるのだから、ゆっくりと年をとって結局は死んだのだろうか?

あわててサークレットをはずすと、もとにもどる。



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