春のまなざし

恋に落ちてしまった。 口数は少ないが、賢そうな顔つきと、もの言いたげな目をしている。 一目見た途端、そのたたずまいに惚れてしまった。 どう見ても13、14歳の少年の面影のくせに、ビール瓶を片手に持ち、 平気で大人の中に座っている。 タバコは吸うのか？と聞くと、「吸いたくない」と言う。 初めから至近距離で撮った。カメラを向けても抵抗がなく、 おどけてみたり、フェンスによじ登ったり、注文にはなんでも応じる。 夢中になってシャッターを切り続け、何を喋っていいのか わからないまま必死で話しかけた。なぜ魅かれたのかなど 考える暇はなかった。名前も聞かなかったけれど、またどこかで 会ってみたい。彼は、なんて美しい存在なんだろうか。