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カテゴリ:日本語教官
朝が苦手な私は、下っ端の分際で、またもや少し遅れて着く。
既に学生がホールの外まで溢れ出していて入れない。 「うっ、今年も1年生だけでこんなに?」と思いながら、学生を押し分けて前に入っていき、ようやく教壇の前にたどりつく。その時点で、このホールには教壇の脇にもう一つ入り口があって、そちらのほうが空いていたことにはじめて気が付くがもう遅し。同僚Aが、その空いたほうの出入り口から出て、他の教室から椅子を持ってきてくれる。教壇上には横にずらりと教官が並んでいる。フランス人講師陣には見たこともない人もいる。 既に学部長が説明をはじめている。「場所など物質的条件はハードですが、それに負けないように頑張って下さい」と、彼女は新入生に心の準備をさせつつも優しく励ます。 それをききながら私は「学部長~、あまり励まさないで~」と心の底で思う。ホールをざっと見渡しただけでも300人はいる。同僚Bによると今年は800人ぐらい1年生に登録しているのではないかということ。もちろん登録しただけで来ない人もいるが、それでも昨年の1回目の1年生の試験は400人ぐらい出てきている。それを、必修授業一個につき4~5人で採点したり面接試験したりするのである。 以下はあくまでも私個人の作戦だが、とにかく1回目の授業において与える印象が肝心だと思う。中途半端な希望を与えずに、中途半端な動機で来ている学生にはあきらめて貰ったほうが人数が減って後々楽なのだ。 同様の理由で、今日は最近気に入ってるプチやくざファッションを思いとどまり、地味で教師臭い格好にした。学生の好奇心を刺激して、集中して来られたりすると困るからである。 人数を減らすための作戦1 「日本語の学習は生半可な気持ちでは出来ない。決死の覚悟で勉強するのでなければ来るな。帝国軍人たるものは…」と、訓戒やウンチクを長々と垂れる。 人数を減らすための作戦2 学生たちの人生を案じているふりをしながら「ただ日本語を勉強しても勉強するのが大変なわりには御飯食べられませんよ。」と厳然たる事実をありのままに、しかしコンコンと説く。 人数を減らすための作戦3 日本語しかしゃべらない。学生がフランス語で話しかけてきてもわからないふりをする。 …など第一回目の授業における作戦をいろいろ考えるが、どれが一番効率的だろうか。 昨年は「別に勉強しろとは言わないから。あきらめる人は早くあきらめたほうがいいですよ~」と、無関心・放任主義をアピールして人数を減らそうとしたが、あまり効果がなかった。それどころか、ある学生に「センセーってGTOみたい♪」と言われて、かなり間違ったイメージを投影されてしまっていたことに気が付いた。GTOはニヒルを装うが結局のところ熱血教師ではなかったか?熱血なのはちょっとカッコワルそうでいやだなと思うポーザーな私はそういうのは目指したくないのであった。 ちなみになぜGTOなんて知ってるのかしらんと思ってきいてみたら、フランス語に翻訳された漫画を読んでいたそうだ。だから別に反町に似ているという世辞ではなかったようだ。でもよく考えてみると、女で反町に似ていると言われても全然嬉しくないのでまあ別にいいです。 無関心や放任主義よりも、「私はあなたたちのためを考えて言ってるのよ」と、教育熱心さ・説教臭さをアピールしたほうがむしろ敬遠されやすいようだ。しかし、情熱系でないし情熱系になりたいという願望もない私にはこれはちょっときついものがある。 だから今年はバーネット女史『小公女』に出てくるがめつくて心の冷たい学院長ミンチン先生をお手本に行こうかと思っている。もちろん最初だけの話だが。最初怖くて嫌な先生だというイメージをつくり上げてしまえば、あとは普通にしていても大丈夫だ。半年もたつと、厳しいカリキュラムの中でまだあきらめずヒイヒイいってる学生が段々かわいそうになってしまって意地悪できなくなってしまうから、心を鬼にするなら今のうち。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2004年08月31日 05時38分44秒
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