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カテゴリ:暮らし
こういう内容のラテン語の碑文が、1505年にヴェネツィア共和国の「水の行政官」庁の壁に刻まれました。人文学者ジャンバッティスタ・チペッリによる文で、現在、この大理石の碑文は、コッレール美術館に保存されています。 この文章からもわかるように、特殊な沼沢地にある都にとって、「水の扱い」は最重要事項でした。具体的には、淡水と海水の流れの調節と、飲料水と水路の確保です。 この水路の目印となっているのが、写真の「ブリコラ」または「ブリッコラ」と呼ばれる杭です。ヴェネツィアの運河にあるのは、ほとんどが「パーリ」「パリーナ」と呼ばれる、舟を繋ぎ止めるための棒杭ですが、「ブリコラ」は、広いラグーナ上の通行可能な水路があることを示す標識で、島から舟で少し外に出てみると、すぐに目にすることが出来ます。 だいたい三本くらいの太い杭を、金属のベルトで結びつけてあり、先端部分には浸食を防ぐためのタールが塗られています。その中で「ダーマ」(写真右)と呼ばれているのは、三本もしくは四本のうちの一本が、長く突き出ていて、水路の始まりを示しています。 これらの材料には、穴を開け害を与えるフナクイムシに強いことから、カシやクリの木が使われています。 カモメの止まり木にもなっているこのブリコラは、 それでも、バクテリアとフナクイムシが原因で、十年程で朽ち果てるので、新しい物に立て替えられます。舟を係留するための、「パーリ」は、太さにもよりますが、二、三年から七、八年で取り替え時期が来ます。 最近は、運河の中にある「パーリ」の中で、プラスティックのものが出て来ました。表面には木目のような加工もしてあって、よく見ないことには、その材質が木なのかプラスティックなのかはわかりません。材料費は木材より高くつきますが、立て替えがほとんど必要ないので、結果的には経済的だからです。 夕暮れのラグーナで、朽ち果てたブリコラに、カモメがとまっているのはそれなりの風情があるのですが、それは旅人的な感傷というものかもしれません。経済的な上に、新たに木を消費しなくて済むという「エコ商品」となれば、反対する理由もなくなるでしょう。 まだ今は、正式には認可されていないプラスティックのパーリは、その材質ゆえにちょっと見下されている感じですが、そのうち「エコ-パーリ」「エコ-ブリコラ」などという名前がついて、少しずつ、木にとって替わって行くのではないかと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/08/01 03:58:01 PM
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