テーマ:家を建てたい!(9815)
カテゴリ:住宅革命
換気システム
一夜明け、朝日に浮かび上がった高山家は、りりしく輝いていた。昨日の感動がまたよみがえってくる。 家は外壁が仕上がるとほとんど完成したように見えるけれど、内部は全く手付かずの状態なのだ。今日からいよいよ作業は内部に入っていく。 僕たちは、未だ床のない室内の清掃を始めた。この家は床下が換気経路となるから基礎部分の清掃は念入りにしなければならない。鋸くずを箒で掃き、電気掃除機をかける。給排水配管は既に完了しているので、配管部分は更に丁寧に掃除をする。 ようやく清掃が終わりに近づいた頃、外に車の止まる気配がした。 運送会社のトラックだった。 「高山様はこちらですか、荷物ですがどちらに下ろしましょうか?」 運伝手は高山に伝票を渡しながら家の中をきょろきょろ見ている。 「すまないが、中におろしてください。」 高山の代わりに僕が答えだ。 到着した荷物は大きな段ボール箱が4個で、側面に「DELITE」と書かれている。僕たちが心待ちにしていた換気システムがやっと届いたのだった。このシステムのおかげで高山家は寒くならずに換気する事が可能になる。もちろん換気システムの力だけで暖かくなるわけではない。地中熱や居住状態での生活廃熱を有効利用することで無暖房生活を可能にしようと考えているのだけれど、そのためにこのシステムは不可欠な存在なのだった。 僕たちは早速、内容物を検品するために梱包を開いた。初めの箱から出てきたのは、銀色に輝く太いダクトだった。太さは直径10cm程だろうか。なんとそれは、合計120メートルも在り、一気に土間にあふれてしまった。個人住宅の換気装置にこれほどのダクトが必要なのかと、資材を目の当たりにして、初めて思う。しかもそれは自分自身で配管設計をしたのに・・。僕は自分の想像力のなさを実感した。現物を見ると、その実態は自分の想像を遥かに超えていた。 検品は問題なく完了し、僕たちは早速作業に取り掛かった。 施工マニュアルを何度も読み、配管図に忠実に施工していく。けして難しい作業ではなく、なぜか作業が楽しい。まるで大蛇のようにうねるダクトと格闘していると、だんだん自分が子供に帰っていくような気がしてくるのだった。 配管作業と換気装置本体の設置が完了したのは午後3時頃だった。土間床いっぱいに広がったダクトがチャンバーに集合している配管の全容を二階の梁の上から見たが、その姿は出雲の伝説、ヤマタノオロチが再来したかのようだった。 ぼくはその迫力に二度目の驚きを感じ、そして心が躍るような、自分のやろうとしている事がうまくいくような、そんな予感に包まれていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[住宅革命] カテゴリの最新記事
|
|