住宅革命その47
僕たちは床の断熱を開始した。断熱材は押し出し成型ポリスチレン板で厚さ80mmとした。この厚さは床上を23℃に暖房したときに床面が20℃以上になるために必要な厚さとして算出した。この断熱材は決して安価ではない(価格が高いといっても床暖房設備の1/10程度だけれど)。お世辞にも裕福とはいえない高山にとって手痛い出費となる。しかし、この投資は、必ず暖房費の節約となって帰ってくるのだ。他の建材のグレードを下げてでも十分な床断熱をやっておいたほうが良いと考えた。床断熱の最も注意しなければならない点は、断熱材が床下地合板に密着していなければならないという点だ。僕はこれまでの調査経験で、たった3mmほどの隙間が床板にカビを発生させたケースをたくさん見てきた。もちろんそれらは、気密の基礎ではなく通気するタイプの基礎でのことだけれど、断熱材と床合板の間に隙間があれば、床下の空気が循環し、断熱材としての効果が全く失われてしまい、まるで意味のないものとなってしまう。断熱材は何十年も人のいない空間で水平に維持され、床合板に密着し続けなければならないわけで、経年変化によるタルミも防がなければならない。そのため、ビスや接着剤を使用する事になる。僕たちは、酢酸ビニール系の接着剤とビスを使って一枚一枚隙間なく断熱材を取り付けていった。(勿論、有害なガスが気化するようなことはないものを選定した。)高山のアイディアで断熱材を合板に簡単に圧着する方法も考案し、たった2日で床の断熱と床下地合板の取り付けは完了したのだった。(え?高山のアイディアを教えろですって? そうですねーこの小説が本になるときには、図解入りで御紹介しましょう。)床板があるというだけで、工事現場の作業効率はとてもよくなり、安全性も増す。それまでは基礎や土台を跨いで移動していたの疲れる作業の連続だったが、これからは効率よく作業が進められる。電気屋さんや水道屋さんといった専門業者も加わって、だんだん活気のある現場になっていく。普段、たくさんの工事現場に携わっている彼らも、高山邸の特殊性に興味津々のようだ。床下の断熱や換気配管だけでも見るのがはじめてだとわざわざ床下にもぐって見ている。どうして床下に設置するのかと熱心に質問してくる。僕たちは一つ一つ丁寧に説明し、どんな効果があるのか、どれくらい省エネになるのかまで解説する。その事が彼らの仕事に少しでも反映したら、日本の家は少しずつ良くなっていくと思ったからだ。つづく