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記憶の記録

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住宅革命

2009.08.29
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カテゴリ:住宅革命
僕たちは床の断熱を開始した。
断熱材は押し出し成型ポリスチレン板で厚さ80mmとした。
この厚さは床上を23℃に暖房したときに床面が20℃以上になるために必要な厚さとして算出した。
この断熱材は決して安価ではない
(価格が高いといっても床暖房設備の1/10程度だけれど)。
お世辞にも裕福とはいえない高山にとって手痛い出費となる。
しかし、この投資は、必ず暖房費の節約となって帰ってくるのだ。
他の建材のグレードを下げてでも十分な床断熱をやっておいたほうが良いと考えた。
床断熱の最も注意しなければならない点は、断熱材が床下地合板に密着していなければならないという点だ。
僕はこれまでの調査経験で、たった3mmほどの隙間が床板にカビを発生させたケースをたくさん見てきた。
もちろんそれらは、気密の基礎ではなく通気するタイプの基礎でのことだけれど、断熱材と床合板の間に隙間があれば、床下の空気が循環し、断熱材としての効果が全く失われてしまい、まるで意味のないものとなってしまう。

断熱材は何十年も人のいない空間で水平に維持され、床合板に密着し続けなければならないわけで、経年変化によるタルミも防がなければならない。そのため、ビスや接着剤を使用する事になる。
僕たちは、酢酸ビニール系の接着剤とビスを使って一枚一枚隙間なく断熱材を取り付けていった。(勿論、有害なガスが気化するようなことはないものを選定した。)
高山のアイディアで断熱材を合板に簡単に圧着する方法も考案し、たった2日で床の断熱と床下地合板の取り付けは完了したのだった。

(え?高山のアイディアを教えろですって? そうですねーこの小説が本になるときには、図解入りで御紹介しましょう。)



床板があるというだけで、工事現場の作業効率はとてもよくなり、安全性も増す。
それまでは基礎や土台を跨いで移動していたの疲れる作業の連続だったが、これからは効率よく作業が進められる。
電気屋さんや水道屋さんといった専門業者も加わって、だんだん活気のある現場になっていく。
普段、たくさんの工事現場に携わっている彼らも、高山邸の特殊性に興味津々のようだ。
床下の断熱や換気配管だけでも見るのがはじめてだとわざわざ床下にもぐって見ている。
どうして床下に設置するのかと熱心に質問してくる。
僕たちは一つ一つ丁寧に説明し、どんな効果があるのか、どれくらい省エネになるのかまで解説する。
その事が彼らの仕事に少しでも反映したら、日本の家は少しずつ良くなっていくと思ったからだ。

つづく






Last updated  2009.08.29 18:02:34
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2009.08.26
カテゴリ:住宅革命
床断熱

換気装置の床下配管は終わった。しかし、これで換気システムが完成したわけではない。床下に設置される機器の取り付けが終わっただけで、この後いたるところに仕掛けを施さなければならないのだけれど、そのまえに僕たちがやらなければならない次の工程は床の断熱だった。
床の断熱はとても重要な工事だ。居住者の体感だけでなく健康を維持するために、床面の表面温度を20℃以上に保ちたい(冬季)。
高山邸は基礎断熱をしているからそれだけで床下気温は13℃位(冬季)で安定するはずだが、13℃の床面ではまだまだ冷たい。その床板を通常の暖房だけで20℃以上にするためには床板の下に十分な断熱を施す必要がある。基礎断熱と床断熱の両方をする必要があるのだ。
しかし、国や住宅金融支援機構では、基礎を断熱した場合は床の断熱をしない方がよいという考えを持っていて、実際にそのような指導をしている。
これは、基礎断熱をした上で床断熱をすると床下空間は二重断熱をした事になり、結露や腐りの原因になるという考えかららしい。
しかし、この考え方は、地中熱という熱源が存在する事を忘れている。
地中からは常時、熱が供給される。その上にある基礎コンクリートと床を断熱するということは、断熱材で出来た巨大なお椀を伏せたような状態になる(勿論、お椀の下は防湿されなければならない。)。
そしてその内部の気温は、外気がマイナス5℃のときでも地中熱によって13℃以上を安定して維持し、真夏は26℃程度を維持する。
この温度帯域ならば冬も夏も露点を迎えない事が確認されていて、結露するような環境ではない。二重断熱がいけないのは、熱源のない状態で異常に低い気温が断熱によって保存されることで透過水蒸気による結露が発生する事を懸念してのことだろう(ということは水蒸気が断熱材を透過する事を国は知っているということだ。ならば防湿フィルムの施工を義務付けるほうがずっと大切だと僕は思う。)。
確かに小屋裏や長期間無人で無暖房の居室(たとえば別荘のような)は異常低温を保存してしまい、結露を招く。
結露を防ぐ方法は、冷やすことではなく暖めることなのだ。
暖めることで相対湿度は下がる。
(シケてはこまるコショウや海苔などを冷蔵庫にしまえば必ずシケてしまう。シケて困るものは絶えず室温より少しだけ高い温度に保つ事が必要なのだ。室温より2~3℃上がれば湿度は10%程度下がる。)
地中熱は暖房機の代わりにただで床下気温を上げてくれるのである。
僕は、以前その熱量がどの程度になるのかを測定した事があった。
結果は驚くべきものだった。
(測定データはこの小説が出版されるときに巻末に添付します。)
そのときに、日本の家は、暖房が必要なくなるかもしれないとおぼろげに感じたのだった。

僕たちは迷わず床断熱をする事にした。床を断熱することで真冬の床面温度を20℃以上にしようと考えていたからだ。

最近の新築住宅では、床暖房設備を持った住宅が増えてきている。非常に高価で、燃費もかかる設備で富裕層にしか仕えない贅沢なものだ。いまや床暖房は住宅のステイタスシンボルになっているみたいだ。
しかし、僕は思う。
床暖房を付けるということは、それがなければ寒い家だという事ではないかと。
高価で高性能な暖房設備を備えたことで家の性能が高くなったと勘違いしているだけではないだろうか。僕には、「この家はそれほど断熱性能がダメな家なのだ!」と宣伝しているように感じられてならない。
正しい断熱が施されていれば、たった一台の暖房機で家中20℃以上を維持することは簡単なことだ。正しい間取りなら家中どこでも2℃以内の温度差でヒートショック(注)のない家になるはずなのだ。通常の暖房で床面も20℃以上になり、床暖房などという大げさな設備は決して必要にはならない。
床暖房を取り付けるということは、断熱工事の不備をごまかそうとしているとしか思えないのだ。

(注・ヒートショック: 部屋から出た瞬間、温度差で循環器系の疾病の発病・発作を起こす事がある。断熱欠損のある住宅を極端な暖房で補おうとする行為は、部屋間の温度差を大きくし、ヒートショックの危険性を作り出してしまう。暖かいと感じるのは過剰暖房、涼しいと感じるのは過剰冷房でしかない。快適な家とは、暖かさを殆ど感じない、涼しさを殆ど感じない、適正な温度を温度差なく維持できる家と言えるだろう。)







Last updated  2009.08.26 17:54:26
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カテゴリ:住宅革命
床断熱

換気装置の床下配管は終わった。しかし、これで換気システムが完成したわけではない。床下に設置される機器の取り付けが終わっただけで、この後いたるところに仕掛けを施さなければならないのだけれど、僕たちがやらなければならない次の工程は床の断熱だった。
床の断熱はとても重要な工事だ。
国や住宅金融支援機構では、基礎を断熱した場合は床の断熱をしない方がよいという考えを持っていて、実際にそのような指導をしている。
これは、基礎断熱をした上で床断熱をすると床下空間は二重断熱をした事になり、結露や腐りの原因になるという考えかららしい。
しかし、この考え方は、地中熱という熱源が存在する事を忘れている。
地中からは常時、熱が供給される。その上にある基礎コンクリートと床を断熱するということは、断熱材で出来た巨大なお椀を伏せたような状態になる(勿論、お椀の下は防湿されなければならない。)。
そしてその内部の気温は、外気がマイナス5℃のときでも地中熱によって13℃以上を安定して維持し、真夏は26℃程度を維持する。
この熱量は冬も夏も露点を迎えない事が確認されていて、結露するような環境ではない。二重断熱がいけないのは、熱源のない状態で異常に低い気温が断熱によって保存されることで、透過水蒸気による結露が発生する事を懸念しているということだろう(ということは水蒸気が断熱材を透過する事を国は知っているということだ。)。
確かに小屋裏や長期間無人で無暖房の居室(たとえば別荘のような)は異常低温を保存してしまい、結露を招く。
結露を防ぐ方法は、冷やすことではなく暖めることなのだ。
暖めることで相対湿度は下がる。
(シケてはこまるコショウや海苔などを冷蔵庫にしまえば必ずシケてしまう。シケて困るものは絶えず室温より少しだけ高い温度に保つ事が必要なのだ。2~3℃上がれば湿度は10%程度下がる。)
地中熱は暖房機の代わりにただで床下気温を上げてくれるのである。
僕は、以前その熱量がどの程度になるのかを測定した事があった。
結果は驚くべきものだった。
(測定データはこの小説が出版されるときに巻末に添付します。)
そのときに、日本の家は、暖房が必要なくなるかもしれないとおぼろげに感じたのだった。

僕たちは迷わず床断熱をする事にした。床を断熱することで真冬の床面温度を20℃以上にしようと考えている。

最近の新築住宅では、床暖房設備を持った住宅が増えてきている。非常に高価で、燃費もかかる設備だ。富裕層にしか仕えない贅沢なものだ。いまや床暖房は住宅のステイタスシンボルになっているみたいだ。
しかし、僕は思う。
床暖房を付けるということは、それがなければ寒い家だという事ではないかと。
正しい断熱が施されていればたった一台の暖房機で家中20℃以上を維持する個は容易で、通常の暖房で床面も20℃以上になり、床暖房などという大げさな設備は決して必要にはならない。
床暖房を取り付けるということは、断熱工事の不備をごまかそうとしているとしか思えないのだ。

つづく






Last updated  2009.08.26 09:47:54
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2009.08.24
カテゴリ:住宅革命
僕たちは排気口を床面に取り付けたけれど、それらは殆んど見えない場所になった。

たとえば、
キッチンは生ごみバケツを置く収納の奥の床でバケツの陰になる。排気口と人間の鼻の間に汚染物がある。汚染物は鼻から離れる方向へ流れていくから、僕たちはいつでも風上にいることになる。この考え方が換気の基本になる。

たとえば、
玄関には下駄箱がある。下駄箱は臭い。ならば、排気口は、下駄箱の中に設置する。とうぜん、下駄箱の臭いが出てくることは無い。下駄箱の容積は小さいから、あっという間に換気され、下駄箱が玄関ホールの空気を吸い、換気している状態になる。この下駄箱に仕舞われた一日履いた靴は、明日の朝にはきちんと乾いている。

たとえば、
押入れはカビやすい。断熱力のある荷物を扉を締め切りで長時間収納するからだ。朝起きたときに、外に干して、ふっくらと乾いた布団も、押入れに仕舞っておくと、夜には湿っぽくなっている。24時間換気装置の排気口が押入れの中にあれば、押入れは、24時間換気されるのだ。

たとえば、
今流行のウォークイン・クローゼットも大切な洋服を守る為に有害な防虫剤が使われていることが多い。クローゼットの中に排気口があれば、有害物質が居室側に流れ出ることは無いから、寝ている間に吸い込む心配も無くなる。

たとえば、
トイレには通常、換気扇を付ける。汚物が下にあるのに、使用者の鼻先を通過して排気するべく、天井に取り付けられる。汚物は暖かいから上昇するという先入観からそうしているのだろうが、現代のトイレは、殆んどが洋式で水洗だ。汚物は冷たい水の中ですぐに冷やされるのだ。トイレの排気口も便器の奥の床面に有るべきで、しかも24時間換気するべきなのだ。トイレ専用の換気扇を付けずに住むことで、換気扇から逆流する外気によるトイレの気温低下も防ぐことが出来、使用するたびに換気扇のスイッチを入り切りすることも無くなる。

排気口を床面に取り付けるという、ただ位置の選定をしただけでこれだけの、いや、実はもっとたくさんの恩恵を得ることが出来る。
住宅内の空気環境を保全することは、家族の健康に直接影響する重要課題の一つなのだ。
 僕は、住宅の革命ともいえる未来の住環境に、一歩近づいたような気がして、身体のどこかにゾクリと鳥肌が立ったようだった。

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Last updated  2009.08.24 16:45:46
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2009.08.23
カテゴリ:住宅革命
当たり前のことだけれど、換気というのは家の中の空気と外の空気を入れ替える作業だ。
ここのところがとても大切だ。
空気を入れ替えるということは、屋外の空気のほうが室内より清浄だということが前提になっている。そしてそれは間違いの無い事実なのだ。
屋内の空気を汚しているのは僕たち人間であり、人間が生活する以上、汗、化粧品、洋服の防虫剤、呼吸や調理から出るCO2、綿埃などで空気は汚染され続ける。
 このことから、家の中の空気を循環させてはいけないことがわかる。吉良の田代邸では、まさに屋内の空気が循環し、汚染物質も循環していた。空気は、対流が起きているときは勢いがあって攪拌され、ほぼ均一に汚染されるが、空気が水平に流れる場所ではVOCも浮遊粉塵も沈殿を起こす。その場所は、天井裏、床上や床下などの水平部分だ。当然、床面の空気が一番汚い。しかし床は、いくらでも掃除できるが、天井裏や床下は掃除できない。
 循環する家では、小児喘息で苦しむ子供の母親がどんなに掃除をしても無駄なのである。
家の中の空気を循環させるということは、汚染物質を循環させ、蓄積させることに他なら無い。
 換気とは、空気を循環させず一方通行で排気し続ける行為なのだ。
とはいえ、屋外の空気がまったく汚染されていないというわけでもない。
 花粉や土埃が大量に含まれている。
 これらは濾過してから室内に取り入れなければならない。
 ならば空気のフィルターは屋外になければならない。しかも、フィルターは外気の通り道だから外気温と同じ温度なってしまう。
 もしも冬、外気温と同じ温度のフィルターが屋内にあったら、たちまち結露してしまう。
 結露でぬれたフィルターは空気を通さないばかりか、すぐに目詰まりして、使用不能になるしかない。フィルターを安全に乾いた上体で維持するためののベストポジションは屋外なのだ。
 そして、屋外ならば、汚れたフィルターのメンテナンスをすることも容易い。
 たれだって、家の中で花粉だらけのフィルターを取り出したくは無い。
 フィルターは取り付ける位置がとても重要だが、駐車場や浄化槽を避ければ、あまり神経質になる必要は無い。大抵はメンテナンスしやすくて、あまり目立たないところに落ち着く。

 換気装置として、フィルターと同様に最も重要な要素の一つとして、室内排気口の位置が上げられる。
 よく天井や壁の高いところに換気扇や排気口が取り付けられているが、キッチンのレンジフードならいざ知らず、24時間換気システムの排気口を天井に取り付けるなんて、まったく見当違いと言わざるを得ない。
 きっと、キッチンの換気扇が煙の出る上に取り付けられることから、換気装置は高所につりつけるという先入観があり、正しい位置を検討したことが無かったのだろう。
 おかげで、世界中で殆んど効果のない換気が行われている。


 室内空気は、人間や太陽光やエアコン、風などによって攪拌されている。
攪拌されている間は、空気は均一に汚れた状態であり、排気口が何処に有っても問題なく希釈換気が行われる。
 しかし、住宅とは、無人の状態が長時間続く環境なのだ。住人が寝てしまえば体温による換気が寝室で起きているだけで、他の居室ではゆっくりと汚染物質が沈殿していく。
床上30cm付近の空気は汚れが最も濃い状態になる。
 畳に布団を敷いて寝ている人は、その空気を呼吸しながら寝ていることになる。
朝になれば、居住者が空気を攪拌して、また均一に汚染が広がるが、すぐにほとんどの人が会社や学校へ行くために家を出て行く。ここからまた長時間攪拌されない時間が続く。
 浮遊粉塵の中でも最も軽いものに発ガン物質のアスベストやタバコの煙の粒子がある。これらの落下速度は5時間で1メートルほどである。 残念ながら、地球上の空気には、確実にアスベストが浮遊していて、われわれの家の中にも存在する。
 天井にある排気口は、天井付近の最もきれいな空気を排気し、わずかに攪拌された汚染空気を希釈しているに過ぎないのだ。
 なんと愚かで無駄な行為なのだろう。

 僕たちは20立方メートルの空気を排気することの出来る排気口を12個取り付けた。
その12個は全て床面にである。
 排気口が床にあれば、たとえひとたびでも汚染物質の沈殿が起これば、その最も濃い汚染空気を効率よく廃棄することが出来る。
 もちろん、攪拌されている時は希釈換気でしかないが、住宅に長時間存在する沈殿時間には、殆んど問題の無い空気環境を実現できる。
 家に帰った時の空気のよどんだ感じや、朝起きたときのくしゃみは、当たり前のことだと誰もが感じていることだけれど、家は、身体を休める場所なのだ。

 清浄な環境を作るのに遠慮などは要らない。








Last updated  2009.08.23 17:28:07
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2009.08.22
カテゴリ:住宅革命
換気システム

一夜明け、朝日に浮かび上がった高山家は、りりしく輝いていた。昨日の感動がまたよみがえってくる。
家は外壁が仕上がるとほとんど完成したように見えるけれど、内部は全く手付かずの状態なのだ。今日からいよいよ作業は内部に入っていく。
僕たちは、未だ床のない室内の清掃を始めた。この家は床下が換気経路となるから基礎部分の清掃は念入りにしなければならない。鋸くずを箒で掃き、電気掃除機をかける。給排水配管は既に完了しているので、配管部分は更に丁寧に掃除をする。
ようやく清掃が終わりに近づいた頃、外に車の止まる気配がした。
運送会社のトラックだった。
「高山様はこちらですか、荷物ですがどちらに下ろしましょうか?」
運伝手は高山に伝票を渡しながら家の中をきょろきょろ見ている。
「すまないが、中におろしてください。」
高山の代わりに僕が答えだ。

到着した荷物は大きな段ボール箱が4個で、側面に「DELITE」と書かれている。僕たちが心待ちにしていた換気システムがやっと届いたのだった。このシステムのおかげで高山家は寒くならずに換気する事が可能になる。もちろん換気システムの力だけで暖かくなるわけではない。地中熱や居住状態での生活廃熱を有効利用することで無暖房生活を可能にしようと考えているのだけれど、そのためにこのシステムは不可欠な存在なのだった。
僕たちは早速、内容物を検品するために梱包を開いた。初めの箱から出てきたのは、銀色に輝く太いダクトだった。太さは直径10cm程だろうか。なんとそれは、合計120メートルも在り、一気に土間にあふれてしまった。個人住宅の換気装置にこれほどのダクトが必要なのかと、資材を目の当たりにして、初めて思う。しかもそれは自分自身で配管設計をしたのに・・。僕は自分の想像力のなさを実感した。現物を見ると、その実態は自分の想像を遥かに超えていた。

検品は問題なく完了し、僕たちは早速作業に取り掛かった。
施工マニュアルを何度も読み、配管図に忠実に施工していく。けして難しい作業ではなく、なぜか作業が楽しい。まるで大蛇のようにうねるダクトと格闘していると、だんだん自分が子供に帰っていくような気がしてくるのだった。
配管作業と換気装置本体の設置が完了したのは午後3時頃だった。土間床いっぱいに広がったダクトがチャンバーに集合している配管の全容を二階の梁の上から見たが、その姿は出雲の伝説、ヤマタノオロチが再来したかのようだった。
ぼくはその迫力に二度目の驚きを感じ、そして心が躍るような、自分のやろうとしている事がうまくいくような、そんな予感に包まれていた。


デライト施工写真4.JPG






Last updated  2009.08.22 10:11:56
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2009.08.20
カテゴリ:住宅革命
 僕たちが杉板に塗ったキシラデコールは有害な成分を含む木材防腐塗料だから、屋外にしか使用しないと僕は個人的に決めている。
当然、この塗料を使用する塗装工事は要注意だ。
 本来なら防毒マスクを着用するべきだが、僕は活性炭入りのN95マスクを着用して作業をした。
シックハウス法施行以後、VOCを含有する建材がバッシングに会い、ホルムアルデヒドなどは殆ど検出されなくなった。
住環境を健全なものとするためにはとても良い事だけれど、住宅には、長持ちしなければならないと言う使命もある。
 室内側に使用する建材がVOCを気化するのは困りものだが、防湿フィルムを隔てた外側に使用する建材は、防腐・防虫効果の高いものを使用しなければならない。
 いつの間にか建築・建材業界は、シックハウス法が室内環境を健全に維持するためのものなのだという事を忘れてしまっているようだ。そして、VOCなどの有害物質の透過・侵入を防いでくれる効果の高い防湿フィルムを使用せずに建築する事を助長する風潮が出てきている。しかもその理由は、防湿フィルム不使用での安全性の確認をしたわけではなく、単に面倒くさいという理由からなのだ。
防湿フィルムは、VOCの侵入を防ぐためだけでなく、水蒸気の侵入も防ぎ、室内空気のエンタルピーの上昇も抑えてくれる熱エネルギーのダムといっても良いほど省エネ効果が高いのにだ。

島根県産の杉は美しい。それほどきめが細かいわけではないし、節が少ないわけでもない。本職の大工さんが好む赤身ばかりでもない。
高山が選んだ杉は白太と赤身が半々の源平と呼ばれる二等材だ。
少し目は粗いが、その細かすぎない適度な間隔の木目がキシラデコールを塗ることで浅めに着色され白太と赤身が落ち着きのある変化を見せる。
僕たちは塗り上げた杉板を一枚一枚、丁寧に貼っていった。
この時はなぜか二人とも無言で作業をしていた。理由はわからない。ただ黙々と、板の長さを合わせ、切り、釘を打った。山に響く玄翁の音が、あたかも自分の言葉であるかのように、何日も作業は続いていった。

外壁の杉板貼りが終わったときに、僕たちはなぜか涙が止まらなかった。
外から見た家の姿が完成形に近づいたからではない。
自分たちのがんばりに感動したわけでもない。
ただ、自分たちが、この国の自然の中で生きていて、この国の自然の恩恵で住まいを作る事が出来る。
他の誰でもない、自分がそれをしているのだという事を身体全体で感じる事が出来たからなのだと思う。
僕たちはただ感謝していたのだ。山に、木に、大自然に。







Last updated  2009.08.20 07:53:58
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2009.08.18
カテゴリ:住宅革命
島根に来て十日が過ぎた。
すでに明け方は涼しくなり、秋の深まりを実感させてくれる。
大自然の中で働いていると人間本来の生き方をあらためて考えるようになる。
自分の生き方は間違っていない。
今を生きているが、今生きる事が未来を作っている。
未来のために生きているのではないが、未来は、今という行動が連続した積み木のピラミッドの頂上のように、今は未だ空中に浮遊している。

工事現場では赤とんぼがのんびりと飛び、鳥たちは勝手気ままに歌っている。
僕と高山は一週間かけて外壁を張り終える事が出来た。
外壁は島根県自生の杉板を下見張りし、キシラデコールのスブルース色で塗装した。
杉材は乾燥によって幅がかなり縮むから、取り付ける前に塗装を済ませておき、乾燥を待って貼り付けていった。
外壁内の水分が乾燥しやすいように、24mm厚の通気胴ぶちで外部通気層も確保した。
この辺り一帯は、昆虫が多いから、通気層の下部にはステンレス製の防虫網も忘れずに取り付けた。

 僕が島根に来て4日目に高山は僕をドライブに誘ってくれた。
ドライブといってもダイハツハイゼット軽トラック4WDだ。大の男が二人でドライブするにはちょっと乗り心地が厳しい。高山は、愛車の乗り心地は一向に気にせず、どんどん山道を登っていく。
「どこへ行くんだ?」という僕の質問には答えず、鼻歌交じりで軽快に飛ばしていく。
一時間半ほど走って到着したところは、山深い谷あいの平坦地で、そこだけが辺りと違う雰囲気の世界を作り出していた。鉄筋コンクリート製の円形の、とても背の低い建物が2棟建っている。高山は、駐車場脇の小屋で入場券を買い、「こっちだ!」と、手招きして、件の背の低い建物に向かって歩いてゆく。
看板には「三瓶小豆原埋没林」と書かれている。
「まいぼつりん?」僕は意味もわからず高山の後について背の低い建物に入っていった。
内部に入ったとたんに僕は建物の背が低かった理由を理解した。そこには、露天掘りした巨大な穴をコンクリートで固めた地下空間が広がっていたのだ
僕たちは20メートルほど階段を下りていった。階段を下りるにつれて気温が下がっていく。次第に全貌が見えてくる。そして僕は、地下の冷気の中に立つ巨大な杉の古木を目の当たりにした。直径約1.5メートルの古木はしっかりと根を張り、自立している。3500年ほど前、縄文時代後期、三瓶火山が噴火し、火砕流や火山泥流(土石流)で自生していた巨木が立ったまま埋没し、現代になって発掘されたものだった。表面は火砕流のためにかすかに炭化している。縄文時代から地下に埋もれたまま腐らずに耐え続けたのだった。高山は地下で3500年の孤独に耐えた杉の木を僕に見せたかったのだった。
「シード、俺はここに来ると元気が出るんだ。この杉の木を見ているとどんなに孤独でもがんばれる気がしてくる。だから、俺の家には、島根の杉を使いたいのだ。構造材だけでなく、仕上げ材も地元の材料で作りたい。」高山の目は少し濡れているようだった。

駐車場に戻る途中、僕は売店で古代杉の欠片で作った箸を買った。3500年前に枯れたその杉の箸は、今でも、酒樽の杉で作られたかのように若々しい香りを湛えている。なんという生命力だろう。僕が嗅いだのは、縄文時代の臭いなのだ。
帰り道、ダイハツハイゼット軽トラック4WDに揺られながら、僕の心は遥か3500年前の世界を旅していた。

埋没林







Last updated  2009.08.18 19:26:30
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2009.08.17
カテゴリ:住宅革命
基礎断熱の貼り付け工事は二人で丸一日かかって完成した。
俗にサブロク板という畳一枚分のサイズのポリスチレンフォームを基礎の高さにあわせて切る。接着剤は柔らかめに練ったセメントを使用した。
のりとして使うのでペースト状に練る。マヨネーズくらいが使いやすかった。
ポリスチレンフォームの全面にグレーのマヨネーズをたっぷり塗り、基礎コンクリートに貼り付ける。
手のひらに「ぐちゃ!」という感触が伝わる。この感じで接着面に隙間が生じていないかを確認しながら作業を進める。ポリスチレンフォーム材料に多少の捩れがあるので、セメントが固まるまで角材で突っ張る。
高山邸は山が近いので蚊が多い。夕方になると大量の蚊が出没する。蚊取り線香をいたる所に置いて作業をしているが体中を刺される。ぼくも高山も人相が変わるほど顔が腫れ上がってしまった。やはり住宅の気密化は必要なのだと痛切に思う。それにしても工事中の労働環境改善のために早く網戸を取り付けなければならないと意見の一致を見て、この日の作業は終了した。

勝部家の納屋では簡易式のユニットバスが待っていてくれた。一人住まいではありえない環境だ。家庭を持つということは良いことだなあなどと思いにふけりながら風呂に入っても僕にそのような状況が訪れるのいつの日になるのだろうか。
僕は、風呂から出て体中にかゆみ止めを塗り、冷えたビールにたどり着くと、高山に一つの提案をした。
「次の工程は一階の床貼りになる。床貼りを開始する前に上下水の配管のチェックと換気システムの検討と配管、給排気口の設置が必要になる。そこで相談だが、換気装置を僕に任せてほしいんだ。」
「換気装置?」
「うん、昨日言ったように、あの家を無暖房でも暮らせるようにしたい。そのためには換気装置の選定がとても重要になる。あの土地は蚊を初めとして虫がとても多い。それだけ自然環境が保全されているということだ。あの環境を壊さずに快適に暮らすには、殺虫剤など使用せずに防虫できて、しかもきちんと必要換気量を確保できる装置でなければならない。普通の換気装置では、蚊の数だけでフィルターが目詰まりしてしまうだろう。そこで、ある換気システムを使おうと思っているんだ。」
「ある換気システム?」
高山はビールを飲みながら僕の言う言葉をオオム返しに繰り返した。

「うん、そのシステムで、昨日話したように床下を換気経路として冬は地中熱を利用して吸気を13℃~15℃程度まで暖めてから居室に取り入れる事が可能になる。地中熱はその土地毎に差があるから、断定は出来ないが・・」
「ああそうだったな、地中熱を利用するという話だった。その件はお前に任せる。手配もしてくれないか。」
「了解した。早速手配する。何しろ床を貼る前に設置しなければならないんだ。」

つづく






Last updated  2009.08.17 18:55:39
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2009.08.13
カテゴリ:住宅革命
 僕たちは、基礎の断熱工事を開始した。
 布基礎と呼ばれる基礎コンクリートの立ち上がり部分のみを内側で断熱する。
 なぜ内側かというと、断熱材を住処にしてしまう虫たちがたくさんいるからだ。プラスチック系の断熱材、ウレタン、ビーズ発泡ポリスチレン、押し出し成型ポリスチレンなどがよく基礎断熱材料として採用される。
 これらは一般的に水は通さない、水蒸気も通さない、腐らない、断熱性能が高いと言われているけれど、僕が今まで見てきたこれらの断熱材を使用した基礎断熱の外張りは、ことごとく失敗している。

失敗例を挙げると、
■ 水は通さない⇒よく水を吸う(単独気泡のものでも)断熱材が水を含んだら断熱力は期待できない。
■ 水蒸気も通さない⇒ありえない。水よりもはるかに小さく、活発に動き回る水蒸気は、確実に透過する。そして断熱材内部に露点温度以下の部位が在れば、発泡内部に結露し、水泡となる。当然断熱力が低下してしまう。
■ 腐らない⇒微生物や昆虫、小動物に破壊される。基礎の外断熱では断熱材を紫外線から守るためにモルタルで仕上げ塗りを施す。基礎コンクリートとモルタルに挟まれ、土中と連絡の取れる暖かな断熱層は、虫たちにしてみれば越冬するために非常に好都合な場所だ。断熱材だから暖かいし、モルタルが外敵から守ってくれる。僕は、基礎の外断熱からダンゴムシの巨大なコロニーを何度も発見している。
等の理由で、基礎の外断熱は数年で性能の低下を招いてしまうから初期性能が高くても採用できないのだ。基礎コンクリートの内側ならば、物理的に虫害を防ぐ事になる。


EPSの虫害
写真は、シロアリとダンゴムシによる虫害を受けたポリスチレン断熱材
防蟻処理をしても、水分の給排水で効果が落ちてしまうのではないかと考えている。


 本来、基礎断熱は、基礎工事の時に断熱材を基礎の型枠に入れ、コンクリートと同時に打ち込むべきものだ。(そうすれば接着剤など使わなくてもコンクリートそのものの接着力でとても良くへばりついてくれる。)
 しかし高山邸の基礎は既に出来上がってしまっているから、何らかの接着剤を使って貼り付けるしかない。
 基礎断熱の後張りは難しい。
 コンクリートと断熱材の間に少しでも隙間が存在すると結露を生じやすいのだ。
 僕たちは接着剤の代わりにセメントのペーストを使用する事にした。隙間を生じさせないためには、接着剤を大量に使用することになる。
 化学系の接着剤ではVOC(揮発性有機化合物)が気化・流出する可能性もある。
 セメントならば化学物質も心配するレベルではなく、しかも安価であり、基礎の打設時に同時打ち込みをしたものと殆ど同じ環境となる。
 断熱材は押出法ポリスチレンフォーム1種B50mmを採用した。最も安価なポリスチレンフォームだ。安いということは性能もそれなりだが、ここには数字の罠が仕掛けられていて、消費者を高価な製品に誘導している。しかし僕は騙されない。その罠をシッカリ見抜き、最も適正な材料を選んだ。
 僕はこの罠のことは、高山には話さなかった。数日後には住宅全体の断熱をしなければならない。そのときには、もっと突っ込んだ検討をする事になる。

 躯体の断熱は基礎断熱以上に重要事項だから、その時のために一つのエピソードとして温存して置く事にしたのだ。

つづく






Last updated  2009.08.13 09:16:35
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