神の存在-365
神の存否-365 付録:感情の諸定義 二:喜び 三:悲しみ 二 喜びとは人間がより小なる完全性からより大なる完全性へ移行することである。 三 悲しみとは人間がより大なる完全性からより小なる完全性へ移行することである。 説明 私は移行と言う。なぜなら喜びは完全性そのものではないからである。すなわちもし人間がその移行する完全性を生まれながら持っていたとしたら、彼は喜びの感情なしにそれを所有したであろう。このことは喜びの感情と対立する悲しみの感情からいっそう明瞭になる。なぜなら、悲しみがより小なる完全性への移行に存し、より小なる完全性そのものではないことは誰しも否定しえない。人間はある程度の完全性を分有する限りにおいては悲しみを感じえないからである。また悲しみはより大なる完全性の欠乏に存するとも言えない。というのは欠乏は無であるが悲しみの感情は一個の積極的な状態だからである。ゆえに悲しみの感情はより小なる完全性へ移行する状態、言いかえれば人間の活動能力が減少しあるいは阻害される状態(この部の定理一一の備考要約:精神がもろもろの大なる変化を受けて時にはより大なる完全性へ、また時にはより小なる完全性へ移行しうることが分かる。この受動が我々に喜びおよび悲しみの感情を説明してくれる云々。を見よ)以外のものではありえない。 そのほか快活、快感、憂鬱、および苦痛の定義は省略する。これらは主として身体に関係し、また喜びもしくは悲しみの種類にすぎないからである。哲学・思想ランキング