「霊魂論」エチカ詳解71
スピノザ哲学の立ち位置からすれば、スピノザの云う範囲での「もの」の運動には物理学的・精神学的要素の全体像が含有されてており、其のことを鑑みるれば、スピノザのコナトゥスの概念は、ヘーゲルのいうような否定を欠いた一元的な楽観論に対してもも一定の反発があります。つまり、全体がコナトゥスのもつ人生をより充実したものにするための運動原理によって突き動かされこと、自己保全を成し遂げていく経緯を導入しているからです。ヘーゲルの二律背反的な弁証論にしろスピノザのコナトゥス概念にしろ、厳密に検討すれば、コナトゥスの全体像が、限りなく細分化され、無限に広がる個体のコナトゥスの競り合いから成立しており、個々のレベルでは、闘争がヘーゲルが批判するにも関わらず原理としては存在しています。更には、同時にこの闘争は、幾つかの個体を併せ持った共闘に昇華させることも出来得るという、単純な意味での否定性と肯定性といった二元論では分け隔てることが出来得ない思想的精緻さをもっていることから、スピノザの汎神論的統一論の正当性とヘーゲルの二律背反的な弁証論に統一的解があるのかどうかを見極めることは現代にあっても其の解をでどこまで示せるのかに困難が伴います。
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