「霊魂論」エチカ詳解94
コナトゥスは、個体そのものの作用を規定するとした本性の法則は、作出原因の作用をその内側から指示する因果法則によって定められており、其れ故、作出原因の作用を内側から受け、そこから生じる結果すなわち自己維持への努力に基づく選択は必然的なものになります。片や、人間の自由意志説は作出因を考慮に入れず選択を非決定な儘に止め置くのであり、原理的には、我々は意志の絶対的な力によって、自らの利益を求めることを保留したり、さらにはそうしたものを敢えて避けることが出来得るとしています。此処にスピノザの「目的論」の奔放的だともいえる自由思考への批判があるのです。言い換えれば、別件で扱うスピノザが言う「決定論」が遡上します。スピノザの「決定論」とは、「人間には、自由意志はなく、神が全て決めた通りに動いている」とする判断、否(いな)、決してそういうことではあり得ません。何故なら、全てが「神の決定」ならば此の世界の経緯は現実ではなく永遠の瞬間である「神の夢想」、其れこそ我々は「虚無世界」に生きる仮想の意識です。スピノザの描く世界論を理解するには、一般的理解としての神ではなく「エチカ」で演繹論法、定義に始まり、公理・定理・証明の連鎖からなっており、あたかもユークリッド(Euclid)幾何学の論文で定義される「神」であり、其処から全てが始まります。
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