時間の陥穽151
我々人間は社会生活を送っており、誰に教えられることもなく、時間が時々刻々と過ぎ去り、流れ去って行くようにと感じる感性を「心」に抱いています。「渡り」を行う雁や白鳥の類(たぐい)や蝶が時間の流れを感じているのではありません。まして時刻を生活に取り入れた人類、此れが顕著に表面化するのは英国の産業革命が齎したものです。農業や漁業の第一次産業に見られるように、其れ迄の人間社会は恒星である太陽や、その惑星である地球の公転と自転、其の衛星の月の見欠けで時間の流れを何となく観想していたものが、産業革命は経済活動の一環として集団行為の一致が要求されるために人間の生理的時間(体内時計)に反しても時刻が優先されます。中世では時計塔や振り子時計を、産業革命以降は時間の流れを刻みとして象徴(記号化」する携帯時計、即ち、懐中時計や腕時計を普及させ、社会生活が否が応でも時間の流れを意識化せしめます。其れ故、古代人のように、明日の朝には太陽が昇れば取り入れや漁場に入るといった悠長な時間ではなく、経済社会の維持の要請から猟期がの解禁日が定められています、現代人はのべつ幕無し時間の流れを象徴化した時計に生活を終われ、時間の流れを単に象徴化された時計を観想して日々を過ごしていますが、アウスグチヌスの「告白」が生じます。
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