時間の陥穽272
宇宙マイクロ波背景放射の観測では、宇宙誕生の直後は非常に高温で、非相対論的な自由荷電粒子による電磁波の弾性散乱のうち、可視光などの低周波の電磁波の散乱で、散乱前後で波長の変化を伴わないトムソン散乱といわれる光が電子にぶつかり何も見えない不可視状況が続きます。此の状態も宇宙誕生から約37万年乃至約8万年後に温度が凡そ3000K(ケルビン)まで冷えてくると、電子と陽子が原子になり、光が直進でき得て宇宙を照らすようになります。これを「宇宙の晴れ上がり」と称しています。宇宙の晴れ上がりとは宇宙創成の約37万年後、赤方偏移にしてz=1090の頃、喩えれば「濃い霧がかかったようになにも見えなかった状態から霧が晴れてくっきり景色が見える状態」へと宇宙の状態が変化したのです。汎ゆる物質は其れ其れに持つ熱に応じた「熱放射」と言われる熱を放射します。電磁波は熱い物質ほど波長が短い。宇宙の晴れ上がりの時の光、約3000Kの物質が発する光が、宇宙の膨張で波長が伸び凡そ約3Kのマイクロ波になったものを発見したのがアーノ・アラン・ペンジアスとロバート・ウッドロウ・ウィルソンの「宇宙マイクロ波背景放射(CMB/Cosmic Microwave Background Radiatio)なのです。
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