時間の陥穽407
川合教授の研究グループのサイクリック宇宙論のような説が何処から生まれてくるかというと、まずその前提として、現在宇宙の遥かなる未来の宇宙についての思考を纏める必要があります。先ず第一に膨張を続ける宇宙が其のままに次第に膨張の度合いを増す「膨張宇宙」、 第二は膨張を続ける宇宙が或る時点から次々(じじ)に膨張が弱まって宇宙空間の大きさに変化が見られなく「定常宇宙」、第三は膨張が止まった或る時点から逆に収縮に転ずる「収縮宇宙」です。此の最後の宇宙である「収縮宇宙」はやがてビック・クランチ(大収縮)を引き起こします。現在宇宙の遥かなる未来の宇宙は此等のいずれであるかは、重力による収縮をもたらす宇宙の物質密度と、膨張をもたらす真空のエネルギーである宇宙項との比較の問題だとされます。観測衛星のWMAPを通じて現在の宇宙を観察した結果によると、驚くべきことに宇宙自体は膨張が収縮を含有し、膨張が収縮やや上回っているという状況だとされています。詰まるところ、現状宇宙の観測通りこのままに一方的に膨張が続いて行けば、将来我々の現在する宇宙は「膨張宇宙」で、引き続き膨張を続けて銀河の相互が引き離されていき、しまいには互いに見えなくなり、やがては何ものも動き得ない、光子さえも光を発さない「死の世界」になるとのことを仮想して批判的に捉えてみせます。
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