Whims and Caprices - 気まぐれな日々

2005/06/22(水)18:29

郵便配達人の恐怖

私は都内のとある郵便局に勤めている。 最近配達係に転属になった。この辺りは古くからの町並みが残っているから、路地も多く、配達の管轄を隅々まで憶えるまでは、まだ時間がかかりそうだ。 しかし、時間は移り行くもので、古い家の間に、いつの間にやら新しい洋風の家が建てられていたりする。 今日配達する家もそんな家だった。 最近の新しい家は洋風の洒落たポストを立てているところが多い。アメリカの映画にでも出てきそうな足の高いアレだ。 しかしこのポスト、見た目は良いのだが、意外と物が入らない。定形外のちょっと膨らんだ封筒などは、まず入らない。そのままポストの脇にでも立て掛けて置いてきたい所だが、近頃の物騒なご時世ではそうもいかない。受け取るまでに紛失なんぞしてしまったら、郵便配達人の沽券(こけん)に関わるので、持って帰って再配達になるのだ。沽券なんぞといってみたが、紛失ばかりしてしまうと評価に響かない訳でもない。 今、手に持っているのは子供用の学習教材の袋だ。 小学生くらいだと、きっと楽しみに待っているのだろうな…等と思いながら、チャイムを押した。 しばらくしてインターフォンから声が聞こえた。 「郵便局ですが、お荷物のお届けです。」 「ちょっと待ってください」 つっけんどんに言うと、受話器をかけるがしゃんという音がした。 そのまま待っていたが、一向に出てくる様子が無い。少しじりじりしてきた頃に、家の中でガタガタという音がしたが、また静かになった。 いい加減に痺れを切らしてきた頃に、いきなり重い木のドアが開いた。 開いたドアの先に見えたのは銃を構えるまだ若い男の姿だった。 驚いて荷物を取り落としそうになった私は、「手を上げろ!」「荷物を渡せ!」の声に、片手を宙に上げたまま、もう一方の手で荷物を渡し、じりじりと後ずさりしていった。 その若い男はにやりと不敵に笑い、ドアはゆっくりと閉まった。 郵便屋さん、驚かしてごめんね。 私は料理から手が離せなかったし、子供達がチャレンジを早く見たくてすっ飛んでたのよ。あの銃は偶々子供達がその時に手に持っていたおもちゃなの。 でもね、手を上げながら後ろずさりする郵便屋さんの顔がインターフォンについているカメラに超ドアップに映った時には、思わずプッと吹き出しちゃった(笑)。 次は銃は置いて行かせるからね!

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