ユヌスさんに再会
世界女性フォーラムのファウンダー(創設者)の一人、ムハマド・ユヌス氏は私にとって忘れられない人です。貧者の銀行として有名なグラミン銀行を創設し、バングラディシュの貧しい女性達の経済的自立を援助し、その仕組みは世界60か国以上の国で採用され、多くの女性達に力を与えてきました。昨年、ノーベル平和賞も受賞されました。最近では、グラミン銀行だけではなく、グラミンフォンという携帯電話事業や住宅融資なども手がけ、社会起業家としてますます活躍されています。数年前、所属していたNPOが「女性と金融」をテーマにシンポジウムを開催した際に、ユヌス氏を呼びたいということになりました。お金もコネもない小さなNPOがそんなことができるだろうかと誰もが思うでしょうが、やってみなければわかりません。ダメモトでチャレンジする・それが私の信念です。そして、発信した1つのメールがユヌス氏へとつながったのです。私の必死の説明ににこやかに「OK」といってくれた彼の笑顔を忘れることが出来ません。シンポジウムはもちろん大成功。参加者もユヌス氏の理念に深く共感していました。拍手の嵐に彼の想い、私達の想いが確実に参加者に届いたことを確信した出来事でした。そして、今回の再会。数年前、一瞬だけつながった糸がまたつながる機会を得ることが出来ました。基調講演終了後、駆け寄った私が「覚えていらっしゃいますか」と声をかけると「もちろんです」とあの時と同じ笑顔で答えてくれました。前回はできなかったツーショットの写真もばっちりとれました。彼のすばらしいところは、人を信じ、未来を信じること。そして明るく粘り強く実現していくことでしょう。彼の生き方は私の羅針盤でもあります。私も未来を信じて、変革を起こす小さな一滴となります。ユヌスさんとの再会は、今回のフォーラムでの一番の収穫でした。最近出版されたグラミンフォンという奇跡(英治出版)もぜひ読んでみてください。グラミンフォン事業は、特別な低価格料金プランを適用し、村に住む女性に携帯電話を販売しています。携帯電話を手に入れた女性は「フォーン・レディース」という名前で、1通話当たり数タカ[バングラデシュの通貨単位:1タカ=約2円]の料金を徴収して村中の共同利用に提供することができる。グラミンフォン事業は女性を貧困から助け出すだけでなく地域や社会をも変える力を持っているのです。