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カテゴリ:映画専科
『ブラッド・ダイヤモンド』('06)143分 米 あ、あ、圧巻!百点なんてものじゃない、1億点ッス!作品の舞台は内戦下のアフリカ・シエラレオネ。“ブラッド・ダイヤモンド(血のダイヤ)”とは、武装勢力が武器購入の資金としている密輸ダイヤのこと。各地で内戦が続くアフリカでは、ダイヤ、象牙、ゴールド、石油といった資源を、政府や反政府ゲリラが奪い合っている。栄養失調で倒れる子どもがいる一方で、外国製の最新の機関銃やバズーカがふんだんにある。明らかに異常事態なのに、武器取引や資源の輸入で莫大な利益が生まれる為に、西洋諸国はこの問題に真剣に向き合おうとしない。この映画は1個の巨大ピンク・ダイヤをめぐる、ダイヤの密売人(ディカプリオ)、採掘した男、ジャーナリストという、3人の運命を描く。冒頭から緊張の連続で、3人とも何時死んでもおかしくない状況がずっと続き、見ている間生きた心地がしなかった。 ピンク・ダイヤは3人にとって最後の切り札。密売人は“神が見捨てた”アフリカから脱出する為のパスポートとしてダイヤを欲し、採掘者は内戦でバラバラになった家族を捜す為に情報収集の取引に使い、ジャーナリストにとっては闇社会の流通ルートを暴く証拠となった。この映画は、紛争ダイヤだけでなく、貧困、ドラッグ、難民、利権問題、先進国の無関心など、アフリカの様々な問題に触れている点でも高い評価を得ている。特に深刻な少年兵問題が詳しく描かれていたことは、アフリカの悲劇を世界に伝える強力なメッセージとなった。現在、アフリカには6歳~10歳前後の少年兵が20万人もいる。みんな、武装勢力が村を襲撃した際に誘拐した子ども達。まだ善悪の判断がハッキリとついてないところを、洗脳&ドラッグで感情を奪い去り、実の親でさえ平気で殺せる恐ろしい兵士に育て上げてしまう。この悲惨な事実は時々報道されてはいたけれど、ハリウッド映画で正面から描いたのは初めてだと思う。ゲリラに襲撃された村民が「石油が出なくてよかった」と言った台詞も胸にズシリときた。すでにシエラレオネは荒廃しているのに、“石油が出ればもっと破滅的な状態になった”とその男は言うのだ。 この映画がスゴイのは、テーマが非常にヘビーなのに、立派なエンターテインメント作品として仕上がっていること!決して政治的主張を押し付けてくることはなく、手に汗握るアクションと、所々に挿入されるユーモアにより、堂々たる娯楽作になっている。しかも観客がアフリカの問題に無関心でいることが恥と感じるほどに、現実を叩き付けてくる。制作サイドの手腕は見事としかいいようがない。撮影は実際にアフリカで行われ、緑の魔境と化したジャングル、野生動物、雄大な山脈など、スクリーンに映った大自然はそれだけで観る者を圧倒した。2時間23分の長丁場がアッという間だったのは、出演俳優の熱演も大きい。この映画でディカプリオは完全に“タイタニックの…”という枕詞を葬り去った。タイタニックの時に23歳だった彼も今は33歳。無精ヒゲを生やしてアフリカなまりの英語を話す密売人に、アイドルタレントの面影はない。いつオスカーを受賞しても良いと思う。 監督は『ラストサムライ』で時代に逆らい滅び行く侍たちを、『グローリー』では南北戦争に散った黒人部隊を描き、深い人間愛と共に鋭い視点で世界を描写する名匠エドワード・ズウィック。監督いわく「この映画のダイヤは象徴だ。我々が見えない部分で(国境を越えて)いかに影響を与え合っているかを描いている」。アフリカはあまりに西側先進国と別世界であり、そこに生きる人々の苦難は他人事に思われがちだ。ダイヤは確かに美しいし、ダイヤ自身に何の罪もない。でも、この映画を見た人は、ダイヤをめぐって流れたアフリカの血を思わずにはいられないと思う。一本の映画を公開したところで、アフリカの悲惨が解決される訳じゃない。だけど、これでほんの少しでも、世界が良い方向に向かう可能性は十分にある。それくらい、観た人間には強烈なインパクトを持つ作品だった。この映画の主演がディカプリオで良かった。彼が出ているから全国でロードショーされたけど、他の俳優ならシリアスな内容が敬遠され、ミニ・シアターでひっそり公開されて終わっていたかも知れない。劇中の「白人がダイヤを欲しがるのは分かる。しかし、なぜ、アフリカ人同士が争わなければならないのだ?」という言葉があまりに重い。 ※ダイヤ業界は国際条約によって紛争ダイヤが激減したと主張しているが、依然としてアフリカ諸国が公表する産出量と、実際の流通量には大きな開きがあり、「密輸が根絶されていない」とパンフには書いてあった。ちなみに世界で流通するダイヤの3分の2がアメリカに入っている。 映画 ブラッド・ダイヤモンド 予告編 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.10.28 05:00:08
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