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2023/01/19(木)05:00

📹 映画名作選№83 「ウエスト・サイド物語」

映画専科(1488)

『ウエスト・サイド物語』('61)152分 米 「誰かと分かち合えない感動は私にとって無意味だ」(レナード・バーンスタイン)。今年、没後20周年を迎えるバーンスタインは、ライバルのカラヤンと共に20世紀後半のクラシック音楽界をリードした大指揮者。両親はロシアから米国に移住したユダヤ人であり、“共存”“寛容”の精神の大切さを人々に訴え続けた。1957年、指揮だけではなく作曲法も学んでいた彼は、39歳にして作曲家の才能を華々しく開花させる。シェークスピアの『ロミオとジュリエット』の舞台を現代アメリカに置き換えたミュージカル『ウエスト・サイド物語』の楽曲を書き上げたのだ。従来の明るい幸福感に満ちたミュージカルと異なり、アメリカが抱える社会問題を大胆に取り入れた異色作であったが、全編が素晴らしいナンバーが満ちており、ブロードウェーで大ヒットを記録。特に“トゥナイト”は世界中の人々に愛される名歌となった。その4年後、舞台は映画化され、若いエネルギーを爆発させたダンスが銀幕から人々を圧倒した。 ドラマが展開されるのはニューヨークのウエスト・サイド。プエルトリコ系移民のシャーク団と、イタリア系移民のジェット団は、縄張りを巡って毎日小競り合いを起こしている不良グループ。(以下ラストシーンまで言及)ある日、中立地帯で催されたダンス・パーティーで、シャーク団のリーダー・ベルナルド(ジョージ・チャキリス)の妹マリア(ナタリー・ウッド)と、ジェット団のリーダー・リフ(ラス・タンブリン)の親友トニー(リチャード・ベイマー)が、一目で恋に落ちてしまう。両グループの和解を願う2人だったが、対立は加速し、ついに全面対決となってしまう。トニーは決闘の現場に駆けつけ、皆に冷静を呼びかけるが、いきりたった若者たちは耳を貸さない。そして戦いの中でリフがベルナルドに刺殺されてしまう。親友リフの亡骸を前に我を失ったトニーは、ベルナルドの胸にナイフを突き立てた。兄を殺され嘆くマリアだが、彼女は深くトニーを愛しており、2人は遠い土地へ向かう約束を交わす。しかし、ベルナルドの仇としてトニーを恨むシャーク団のメンバー・チノが、マリアの目の前でトニーを射殺してしまう。その場に集まったジェット団、シャーク団のメンバーたちにマリアは叫ぶ「あなたたち全員が彼を殺したのよ!弾丸でも拳銃でもなく、憎しみによって!」。 --ハッピーエンドが常識のミュージカルにあって、悲劇的なラストは賛否を呼んだが、アカデミー協会は作品賞、監督賞をはじめ10部門という大量の賞で応えた。市街を縦横無尽に駆け巡る冒頭のダンス・バトル、情感たっぷりの楽曲、皮肉を効かせたコミカルな歌詞、「ミュージカル映画の金字塔」の称号に相応しい作品だ。バーンスタインはその後も音楽家としての名声をバックに様々な社会運動に取り組み、1985年には被爆40周年として広島で平和コンサートを開催した。死の前年にベルリンの壁が崩壊し、翌月ベルリンで催されたクリスマス・コンサートでは、東西ドイツ&アメリカ&ソ連&イギリス&フランス各国のオーケストラの混成メンバーを指揮し、ベートーヴェンの第九を演奏。この時、終楽章の「歓喜の歌」の歌詞を“Freude(歓び)”から“Freiheit(自由)”に変え、世紀の和解を祝福した。それは、マリアの想いを体現化したような生き方だった。 ※名曲『マリア』の歌詞が好き。「♪こんなに美しい響きは初めて聞いた。“マリア”…マリア、マリア、マリア。この言葉には世界の美しいものすべてがある。マリア…マリア、マリア、マリア。マリアという女性に出会った。すると突然“マリア”という言葉の意味が変わった。マリアという名の女性に口づけをした。すると突然、その名の響きが素晴らしくなっていくことに気付いた。マリア!大きな声で言えば、それはまるで音楽のよう。小さくささやけば、それはまるで祈りのよう。マリア、このまま言い続けたい!マリア…マリア、マリア、マリア」 ※アカデミー賞(1962)作品賞、助演男優賞、助演女優賞、撮影賞、ミュージカル映画音楽賞、美術監督・装置賞、衣装デザイン賞、編集賞、録音賞/NY批評家協会賞(1961)作品賞 トゥナイト (Tonight) - ウエストサイド物語 史上最強の超名作洋画 ベスト1000 名作映画ベスト100選!

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