ベル姉の鯉する日常ときどき妄想

Red Hell’s・・第1部(1~2)

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    ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
Red Hell’s Angels



第1部
1 訪問者


今日も真夏の陽射しが猛烈に強かった。
いや、それが辛いわけじゃない。
高校のときの練習はもっときつかった。

でも今のオレは高校生じゃない。
プロの選手だ。
1軍のメンバーは当然連日ナイターだ。
星空のもとカクテル光線を浴びながら試合をしている。

でも今年のオレは開幕から真っ昼間、山のてっぺんの球場で汗をながす毎日だ。
もちろんこうなったのも自分自身の責任だ。
そしてこの毎日が大事だということもわかっている。

だけど。。


1日の日程を終了し、オレは寮のベッドにどさっと体を投げだし呟いた。

(昼より夜にこそ活躍するのがプロだよな、、やっぱり。。)

昼間の疲れが心地いい睡魔に変わった。
まどろみかけているオレの耳元で誰かが囁く声がする。
誰だ?
目の前は乳白色の幕がかかっているようだ。
そこに人がいる。
なんだかよく見えない。
オレは眠ってるはずなんだ。
きっと夢に違いない。

夢の中のそいつはダークグレーのふさふさとした髪に日本人離れした風貌をしていた。
着てる服は、なんだかとっても大時代的なカンジがする。
まるで昔の映画の主人公のようだ。

変ナノ。。。

ま、夢だからな。。

と思っているとそいつの顔ががオレの顔に近づいてくる。
端正な顔だ。。
それだけはなぜかよくわかる。
そして、
そして、なんだか、とっても、
禍禍しい、、ような邪悪なような、匂いがする。
そのくせ、甘美な気持にさせる。
逃げた方がいい。いや、このままでいたい。オレの中のふたつの信号がかわるがわる点滅する。
結局オレはどちらかを選択するという意志を放棄し、本能に身を任せた。


記憶がとぎれる寸前、首筋にチクっとした痛みを覚えた。
「あ・・」
と確かに声を漏らした気がするがオレはそのまま深い眠りに落ちた。



2 目覚め


寒気がする。
それで目が覚めた。
ぶるぶるとオレは震え自分の肩を抱きしめた。

そこで今は真夏だということに気がついた。
そのことを自分に納得ができるように説明しようとしたができなかった。

カーテン越しに入る朝日をオレは反射的に避けた。
体の中の細胞がプチプチとなにかわけのわからないものに変化している。
音さえ聞える。
それがあのおぞましい陽の光りから逃げろと教えている。

恐いんだ。
オレは太陽が恐い。

ベッドから転がるように降り、陽射しとは反対方向に這ってゆく。
それだけで全力を使い果たしたように疲労を感じた。

誰か、、
助けてくれ。。


「呼んだか?」
声がする。
聞いたことがある声だ。
いつだ?
誰だ?

「まだ完全じゃない」
とその声は言った。
確かに聞いたことがある。
それもつい最近だ。


「変化はまだ完全じゃない、しかし、すぐ慣れる。日が落ちたら。ちゃんと落ち着く。それまで我慢しなさい」
オレはその声の持ち主をすがるように見上げた。

ふさふさのオールバックにしたダークグレーの髪。
古いイギリス映画に出てくる貴族のような衣装に身を包んでいる。
なぜかこのくそ暑いなかマントをはおっている。

プロ野球の2軍の選手の寮の一室になんでこんなヤツがいるのかさっぱりわからないが、でもこの男がオレを助けてくれるのは
間違いないとオレの「変化してゆく細胞」が教えていた。

「恐いんだ、苦しいんだ」
「今日は陽が落ちるまで眠っていなさい」
男は言った。
「そんなことはできない。みんな変に思う。いくら今日が練習が休みの日だっていっても、、」
オレは爆睡すると昼まで寝てるが、陽が落ちるまで寝ていたらいくらなんでも変だと思われる。
それに、、
飯は食わないと。
と思ったと同時に、それに対して嫌悪感を感じている自分に驚いた。

オレ、、、いったいナニになったんだ?
ナニになってしまったんだ?

「キミの望むものにだ」
声の主は言った。


オレ?
オレの望んだもの?
なんだ?オレはこんなものを望んだのか?


「昼よりも夜に生きることが望みだ・・とキミは言った」

そうだ、、、なんだか合っているような気がした。
が、すぐにそれは違っていると思った。
根本的なところが致命的に違っている。

そして、それが絶望的な誤解の産物だと気づいた。

「アンタは、、、」とオレは言った。
「まさか、、とは思ってるんだ。でも、もし、もしそうだとしたら、ものすごくタチの悪い最悪な冗談に違いない。だって、それはあり得ない。
現実にはあり得ない。絶対あり得ない。あってたまるか!」
最後はもう絶叫だった。

「現実には存在しないよ」
オレは力なく言った。
「しない・・はずだったんだ」
くそっ!!

いくら否定してもオレの体がもう昨日までとはまったく違うモノになってしまったことは朝目覚めてすぐ気がついていた。
ただ説明がつかない、、ついたとしても納得する気はない、、。

「キミは望んだものを手に入れて喜んでくれると思ったがそんな状態ではないようだな。わたしはひょっとしたら間違えたのかね?」
「間違えてるよ」オレはやけくそ気味につぶやいた。

「しかし、、」と男は言った。
「夜に生きることこそ望みだ。それに気がつくものは少ない。なにもかも白日にさらす太陽ほど無粋なものはない。
明るいものは三流だ。奥深さがない。浅く単純だ。それに比べて闇ほど魅力的なものはない」
だから、と言ってオレのほうに向きなおり両手を広げ芝居がかった身振りで
「キミの夜は他の誰の昼より美しい」と詩の朗読のように言った。
そして、
「今にキミにもそれがわかる」
と微笑んだ。

オレは抗議をする気力も失せけだるい体を睡魔に預けた。                         

             ☆


今日2度目の覚醒をしたとき目の前にあった顔はあの男ではなくタカヤだった。
心配そうな顔をしている。
「1日中寝てたんだって?」
朝、ドアをノックしたけど返事がなかった。寝るのが趣味だっていうくらいのオマエだから今日も昼までは起きてきやしないな、と
思ってケンタだけ誘って温泉に行ったんだ。
帰ってきてどうもオマエの様子がおかしいって寮のひとが言ってたのを聞いて気になったんだ。
誰かと話してるような声も聞えるがノックをしても、声をかけても返事がない。
さっきまでドアも開かなかった。

そう言って不安そうに喋るタカヤの声の半分もオレの耳には入らない。
オレの関心はただ一点。
タカヤの首筋だ。
そうだ、あそこ、あのくぼみ。きっと柔らかい。
オレは知っている。
あそこにオレの欲しいものがあるということを。
そしてきっとそれは甘く芳醇なことに違いないということを。
そう思う自分に驚く一方で最初から全部知っていたという気もした。
朝の目覚めのあのけだるさと不安と恐怖はすっかり消えていた。
こんな体にしたあの男に対して抱いていた憎しみもすっかり消えていた。
いや、それよりも邪悪ともいえる快楽にこれから身を任せることに湧きあがる悦びを感じているのだ。

「テツト?」
タカヤは怯えている。
(ナニミテルンダ、ナンテイウ目ヲシテオレヲミルンダテツト、、、、ナンテ、、、)


「やめ・・・・・」
近づくオレをタカヤは撥ねつけようとする。
顔は恐怖というより混乱しているせいでゆがんでいる。


「だいじょうぶだよ、恐くないよ」
そう恐くないよ。オレだってそうだった。あのとき恐いというより心地よささえ感じたのだ。
少し困惑はしたが。
「だ・か・ら、、だいじょうぶだよタカヤ。目をつぶって。だいじょうぶだから」
オレの声は催眠術のように効いたらしくタカヤは目を閉じた。
オレはタカヤの首筋にそっと歯をたてた。
やわらかいそこにソレを突き刺すと、なまぬるく赤く甘くしたたるものがオレのからだ全体に沁み渡ってくるのがわかる。
タカヤが「あ。。。」と声を漏らした。
だがもう抵抗することはなかった。
タカヤはオレを受け入れた。
オレははっきりとソレを感じた。

「上出来だテツト、やはりわたしが目をつけただけある」

後ろから声が聞えたがそれよりオレはタカヤを仲間に引き入れた悦びに浸っていた。
窓の外の闇が祝福している。
青白い月の光がベッドに横たわるオレとタカヤを見守っている。

これでいいんだ。


とその時思った。


そしてこれが後に「赤い地獄の天使たち」と呼ばれることになる軍団をつくり上げる記念すべき最初の夜になったのだ。


つづく



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