続・家政婦は見た

2003/03/06/(Thu)


確かにオレも悪かった。

3月5日(VS近鉄@大阪ドーム)
初回先頭打者にヒットを打たれたあと連続2四球はまずかった。
一死満塁だ。
ここはゲッツーをとるしかない。
この日はとにかく低めに球を集めることを意識して投げた。
それがなかなか決まらないのだが、この場面こそ逃げてはいけない。
だから絵に描いたようなゲッツーコースに打球が飛んだときはやった!と思ったのだ。
S-ツが難なくさばきアキヒロ兄さんにトス。あとは見なくてもわかる展開だ。計算どおりだ。
と思った瞬間、オレは恐ろしいものをみてしまった。
アキヒロ兄さんの肩に乗っかっている、おぞましいモノ。

「それはさっそくご供養しないといけませんですわ、お坊ちゃま」
と家政婦さんは言った。
「なんなの?テツト」とタカヤがきいた。
「アキヒロ兄さんにとり憑いてるアレだよ。ここ読んでみなよ。
あ~~思い出しただけでもぞっとする」













「読んだよ」
「はえ~~なっ!」

「そう言えばアキヒロ兄さん昨日の朝げっそりしてた、睡眠不足かなぁと思ったんだけど、
あんなことがあったんだね」
「あのときは兄さんの気力で封じ込めたと思ったんだが、ちょっと隙を見せるとこれだ。
しつこいヤツだ。なんとかしないと」
「アキヒロ様は生真面目なんでございましょうね」
と家政婦さんは紅茶を入れながら言った。
「考えすぎなんだよ。タカヒロ兄さんの爪の垢を煎じて飲ませてあげたいよ」とオレはため息をつきながら言った。
「じゃぁそうしようよ」とタカヤが言った。
「は?」
とオレと家政婦さんはちょっとハモって言った。
「タカヒロ兄さんの爪の垢もらうんだよ」
タカヤはにっこり笑った。
オレと家政婦さんは顔を見合わせた。


タカヒロ兄さんの部屋を訪ねると兄さんは鏡に向かっていた。
「やっとここまで伸びてきたぜ。あ~早く元のかっこいいオレになりたい」と
頭を撫でながらわけわからないことを言っていた。
「で、なんか用?タカヤとテツトが揃ってさぁ、相変わらず仲がいいなぁおい~」
とオレとタカヤの胸をツンツクとつついた。
(相変わらず陽気だなぁ悩みはねぇのか?)
「なんか言ったか?」
「あ、、い、いや」(まぁそこがタカヒロ兄さんのいいところだ)
「アキヒロ兄さんのことなんだけど」
「それだよっ!!!!」
といきなり叫んだ(びっくするじゃねぇか!)
「オレの相方は真面目すぎていけねぇ、もっとポジティブシンキングしないとよ~。
エラーのひとつやふたついちいち気にしてちゃ~やっていけねぇ、なぁ!がっはっはっは♪」
「やっぱり二人を足して2で割るとちょうどいいのにね、テツト」
「まったくだ」


オレはいくらなんでも相手にしないだろうと思ったがタカヤが提案するとタカヒロ兄さんは
「そりゃ、おもしれ~な、いくらでも取ってくれ」と手を出した。
「よかった~断られるかと思ったんだけど」
(この二人はどういうアタマしてるんだ?)
「なんなら耳の垢やヘソのごまってのはどうだ?」
タカヒロ兄さんはワルノリしている。




タカヒロ兄さんの「爪の垢」もらったオレたちは家政婦さんに煎じてもらうことにした。
「まぁなんでも気持ち次第でございますからね。ただのふくらし粉も信じれば恋の薬になると
ユーミンの唄にもございますでしょ」と家政婦さんは言った。
「へぇ、そんな唄知らないなぁ、それに家政婦さんとはイメージが違うな」
「あらいやだ!『流線型80」っていうアルバムに入ってるんでございますよ。
なんなら唄ってみましょうか?♪~」
「あ~~~、いい!いい!」
家政婦さんのレパトリーは都はるみだけかと思ったが意外に若い趣味だ。
そんなことはどうでもいい。

オレたちはアキヒロ兄さんの部屋を訪ねた。
アキヒロ兄さんは案の定元気がなかった。
オヤジに特大のカミナリを落とされたのだ。
「みんなに迷惑かけちゃって」と兄さんは蚊の泣くような声で言った。
「いいんだよ~~そんなこと。昨日はテツトが四球ばっか出すから、そりゃ~守りの
リズムも崩れるよね~」
(く、くそ~!しかし当っているからしょうがねぇ)
「でも、。あの日は長打はなかったし、ゴロや併殺コースが多かったし、まぁまぁだったんじゃないの?」
(コイツ、オープン戦2試合続けていい内容だったんで・・・2試合目は自分で納得してないようだが・・・余裕だぜ)
「お茶持ってきたんだ一緒に飲もうよ」とタカヤはアキヒロ兄さんに優しく言った。
「気持ちが前向きになるお茶なんだってさ。中国4千年のってヤツらしいよ。
なにしろあのタカヒロ兄さんが毎日飲んでるらしい」とオレが言うとアキヒロ兄さんは目を輝かせた。
「ほんと?」
「そうだよ。だから大丈夫だよアキヒロ兄さん」
「そうそう!もう明日っからばっちりさ!」
オレたちは嬉しそうに飲むアキヒロ兄さんの顔を見ながらこれで自信回復するようにと
心の中で願った。



(しかし、どういう味がするんだろ、こわい)(笑)




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