不動産アドバイザー事例紹介 ~奇跡の展開~
不動産アドバイザー養成講座の専任講師であり、実務家の志村孝次です。私は、こころざしのある不動産の実務家として、年間100件の相談対応とお客様目線の実行支援を目標として活動しております。 本日は、不動産アドバイザー事例紹介として、ある事情を抱えているご両親と二世帯住宅を建てる夢をもったお嬢様ご夫妻の奇跡のお話をさせていただきます。 これは、パートナー工務店さんからのご紹介でした。 ご両親の住んでいる古い家を二世帯住宅に建て換える計画を進めていました。ところが、住宅ローンをお嬢様ご夫妻で組もうとした時に出来ないことが判明しました。工務店さんには原因が分らず、ご本人たちも困っていたようです。そこで、私に原因解明と解決策がないか、という相談をいただくことになりました。 早速、ご実家でご両親にお目にかかり、これまでの経緯や現在の状況も確認することができました。ローンが組めないという理由はすぐに分りました。ご両親に借金があることが原因でした。 つまり、金融機関は融資をする代わりに不動産に抵当権の設定をします。そこに、お嬢様ご夫妻が同じ不動産を担保に住宅ローンを融資することは極めて難しいのです。ご両親がお金を返済しない限り住宅ローンの融資は、ほぼ不可能となります。ご両親が暮らす家を売却しない限り借金の返済はできません。一方で、お嬢様の夢は、実家の敷地に二世帯住宅を建てることです。というのもそのご実家は、おばあちゃんからお母さんに引き継がれ、お嬢さんもまた、そこで生まれ育った場所なので、売って他の場所では意味がないと言うことになります。ご両親の借金の返済=実家の売却が現実を襲います。 更にもっと深い事情が判明しました。 ご両親は、ご実家以外に自社ビルお持ちだったのです。バブルの頃に借金をして3階建の自社ビルを建て、ビル1階で自営業を営んでいました。ビルを建てて2階や3階を貸して、1階でご自分の仕事をすることは至って普通なことです。ただ、残念ながら、すでに固定資産税もう払えない状況まで追い詰められていました。これまで、何度となく銀行に借金返済の見直しもしてもらっていたようで、いよいよ差押も、と、いう状況だったのです。 お嬢様夫妻には、このことはお伝えできなかったようです。『娘が、二世帯住宅を建てたいということで、とても嬉しいのですが、借金返済にずっと追われていて、正直、苦しくてそれどころではない。』と、苦しい胸の内を話してくれました。ご両親からすると、借金返済と事業継続が最大の課題だったのです。30年以上仕事と借金返済に追われ、どん底だったのだと思います。 私はどうしたら良いかを考えぬいて、ついにある提案をしました。 まず、状況をお嬢様ご夫妻に話して、ご実家を購入してもらうことを考えつきました。しかし、銀行は親子間売買での住宅ローン融資は、原則認めていませんので、一旦弊社が購入した後に、弊社から購入してもらう提案です。当然、自社ビルの売却も提案しました。銀行は、借金の全額一括返済が条件で、実家とビルを同時に売却しないと借金が返しきれませんでした。事業は別の店舗を借りて継続できるかは資金的に微妙でしたが、もう、ご両親のお気持ちは売却が優先でした。 ビルは2階にテナントさんがいましたので、早速、売却に伴う立ち退きのお願いに、お父様と一緒に訪ねました。これまでの、貸主と借主の関係は良好だったようで、立ち退きに関しては、その場でご理解頂けました。ただ、希望に合う移転先を見つけることと、移転費用を保証することは当然の条件になります。ビルが売れなければ、話は進みません。私的には、移転先を見つけることや、買い手を探すこれからが頑張り時と、気を引き締めておりました。 ところが、いきなり神風が吹いたことを、今でも鮮明に覚えています。まるで、ドラマの主人公のようにスポットライトが当たったかのようでした。なんと、テナントさんがビルを買いたいと申し出てくれたのです。話の中で、更地にして売却することと合わせて、テナントがいる状態でオーナーチェンジとして売却できることもお話したことで、一気にお気持ちが固まったようです。ビルオーナーになることも夢だった!とお話されていました。 実は、雨漏りをしているビルなのです。そんなビルをオーナーチェンジで売るのは苦戦をすると考えていたので、私は鳥肌が立ちました。建物の状態も承知していて、しかも、1階店舗を、ご夫妻に2階の家賃と同じ額で貸してくれるというのです。空いている3階も使いたいと思っていたので、本当に好都合だったようです。 私の一生分の運も使い果たしてしまったぐらいの衝撃でした。 テナントさんご自身は、事業売り上げもよく、自己資金もお持ちだったことから、ビル購入後の賃貸事業としての収支も申し分なく、購入するための融資先もすぐに見つけることが出来ました。 そこでも、奇跡がありましたけどね。 飛び込みで入った地元の銀行でしたが、新規の法人契約が欲しかったらしく、担当者に案件の内容を話すと、ほぼ即答で融資できるよう準備します!との回答でした。『いいぞ!』私は、心の中で叫びました。 こうして、実家は、売主がお母様、第1次買主が弊社で同時に売主、同時に最終買主がお嬢様ご夫妻。購入後、新築住宅の建築。ビルは、売主がご両親で買主が2階のテナントさん、同時に、1階の借主がご両親で貸主が2階のテナント(新ビルオーナー)さんが実現することとなりました。実際は、両親の借金の一部をお嬢様ご夫妻が引き受けたことにはなります。でも、ご両親が長年苦しみ続けた借金返済から解放され、事業も余計な費用を掛けずに継続できました。 これから、家族4名で力を合わせていけば、明るい生活が待っていることと思います。新築の建物が完成した際に完成披露ということで、私もお呼びいただきました。お母様からすれば、自分の親から継いだその土地の上にお嬢様夫妻と、新しい家に同居できるなんて、夢みたいなお話だったようで、本当に感無量で泣かれていました。 私も、30年以上業務の中で、すごくいい仕事ができたなあって思います。これからも、困っているお客様の相談にのらせていただいて、お客様の幸せのための仕事を、これからも続けていきたいというふうに思っています。