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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

November 5, 2018
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 METライブビューイングの新シーズンが始まりました。第1作は「アイーダ」(現場でのシーズンオープニングは、ライブビューイング第2作の「サムソンとデリラ」)。古典的で壮大な舞台と、女性2人の名唱で印象的な舞台になりました。以下、フェイスブックに投稿したものに少し手を加えて共有いたします。写真入り全文はフェイスブックをごらんください。

 METライブビューイング第1作「アイーダ」@東劇。METの定番のソニヤ・フリゼルのスケール大きな舞台に、ネトレプコはじめそうそうたるメンバーが集った、いかにもMETらしい見応え聴きごたえ満点の映像でした。

 タイトルロールのネトレプコ、この役は今の彼女の声にはあっているようで、クリスタルな高音(なぜかアムネリス役を得意とした往年の名メッゾ、コッソットを思い出しました)からくぐもった中音域(彼女の声のこもりがちなところは、ベルカントものでは気になってしまうのですが、「アイーダ」だと生きるような気がします)までむらなく、表情が細やかで情感のある声。インタビューで「ピエタ=憐みを」という言葉が何十回もでてくる、それをそのたびに変えて表現しなければならない、というようなことを言っていましたが、言葉通り表情の多彩さを追求しているのがよくわかりました。やっぱり様式美のベルカントものより、これくらい感情表現が求められるもののようが彼女の良さが生きる気がします。
 あと、これは彼女の大きな長所ですが、実際の演技での表情もゆきとどいていてはっとさせます。とりわけ、第1幕でラダメスに送る愛おしげな視線とか、第3幕でラダメスにせまる官能的な演技とか。その手の「色っぽい」演技は彼女をおいてなかなか他にいないのではと思わされました。
 第3幕は文字通り「アイーダの幕」。冒頭のアリアは圧巻。ピアニッシモで上り詰める高音。そして相手を変えながらの二重唱でも圧倒的な存在感でした。この幕は、以前福井敬さんが、「音楽的に難しい」とおっしゃっていたのですが、たしかに音楽が一番連続している幕だと思う。いろんなことが起きるし。その表現の中心にいたのがネトレプコでした。
 アムネリス役のラチヴェリシュヴィリ。「声」だけとったら私は彼女のほうが好みかも。豊麗でしっとりした女らしさもある魅力的な声です。彼女は「カルメン」でブレイクしたひとですが、たしかに声だけならカルメン役もいいのですが、雰囲気とか体型とかがいささか図太すぎて、カルメンのコケットリー、軽やかさという点ではちょっとものたりなかったのです。その点、アムネリス役は文句なしです。王女なんだから堂々と押し出しがあっていい。そして、これもインタビューで本人が言っていたのですが、「悪い女じゃない、恋して、妬いているだけ」。ほんとうにその通りの演技をしていました。第3幕で、アイーダとラダメスが駆け落ちしようとした現場を見つけた時の動揺。第4幕で、ラダメスが死刑判決を受けたあと、神官たちと対決する場面では、ランフィスの杖にすがって文字通り慈悲を乞う。これ、同じプロダクションで1989年に収録された映像があり、そこではザジックがアムネリスを歌っているのですが、彼女は動揺しまくり怒りまくり走りまくりなんですね。それと対照的な表現で、大変興味深かったし、このほうが共感できると思いました。アムネリスはリゴレットのように感情の底を見せるヴェルディらしい役なので。
 誰の発言か忘れましたが、インタビューで、「ギリシャ悲劇みたいなオペラ」だと言っていた歌手がいて、そうだなたしかに、と今回の公演を見て思ったのですが、その最大の理由は2人の女性主役にあったと思います。
 男性陣でよかったのはアモナズロ役のクイン・ケルシー。アモナズロって剛毅な武人に描かれることが多いのですが(1989年映像のミルンズもそう)、すごく人間的な、不安や迷いを抱えているようなアモナズロで、とても新鮮でした。第3幕でアイーダを脅すシーンだって、そんなに強引ではない。このひとは自軍の滅亡を予感しているのだ、そんな感じの役作りでした。そうですね、今回好演した歌手たちは、みんなとても人間味があったかもしれない。ギリシャ劇のような壮麗な舞台の上で。
 もうひとりよかったのは、エジプト国王を歌った若いバス、R・S・グリーン。フレッシュだけれどよく響く、輝きと深さのある堂々とした声で、これから大成してほしい魅力的な声の持ち主です。インタビューでも「威厳のある、人間というより神がかった存在」だと役柄の解釈について述べていて、とても説得力がありました。ウィーンで「ラインの黄金」(なんの役かは言わず)などにも出ているようで、今後が楽しみです。
 ニコラ・ルイゾッティの指揮は素晴らしく、ドラマを抱きしめるような前奏曲から吸い込まれました。とくに後半は劇的統一感があり、緊張と弛緩のバランスが抜群で、なかでも緊迫した場面での、劇的感情の爆発の表現が絶妙。とても雄弁な音楽づくりだったと思います。
 バレエの振り付けも、当然ながら1989年の映像とは変わっており、はるかに洗練されたものになっていました。
 カメラワークの多様さ、迫力も特筆もの。今回はとくに上からの撮影が多く、METの舞台の巨大さがよくわかるカメラ演出になっていて、圧倒されました。「凱旋の場」などでの舞台のせりあがりも惜しみなく見せてくれて驚嘆(高所恐怖症だとだめですね。。。)こういうのはライブビューイングでなければ体験できません。
 
 ナビゲーターは美人!ソプラノのイザベル・レナード。バレリーナのようにスタイルもよく、ファッションセンスも抜群。ただインタビューの尺が長すぎたみたいで、似たような質問が繰り返される場面あり。一考の必要があると感じました。
 
 「アイーダ」、今週木曜日まで。東劇ではあと1週間上映しています。圧倒的な舞台です。詳細は以下から。

 ​METライブビューイング







最終更新日  November 5, 2018 09:30:45 AM
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