カテゴリ:音楽
石原慎太郎東京都知事といえば、かつての芥川賞作家。「文化人」知事のイメージもあるのではないだろうか。
けれど、私見によれば、いささか疑問である。 先ごろ音楽界で問題になっていたのが、「東京のオペラの森」という催しをめぐる騒動。東京文化会館を舞台に、今年の3月に始動する(来年以降も続くらしい)、オペラを中心にした音楽フェスティバルなのだが、石原知事と指揮者、小澤征爾氏の「友情」とやらで開催が決まったという。 ところが開催が決定された時点で、会期にあたる2月下旬から3月下旬にかけて、会場に指定された東京文化会館には、二期会をはじめ他のオペラ団体などの公演予定が入っていた。それも東京都主催の「都民芸術フェスティバル」の関連公演である。そのことを知っていたのか知らなかったのかはともかく、先約団体はすべて文化会館を追い出された。当時東京文化会館の館長だった作曲家の三善晃氏は、このできごとに抗議して館長を辞任している(後日、「読売新聞」のインタビューでそのことを問われた小澤氏は、「知らなかった、来年からは練習場を他に借りる」と言っている)。 そもそも、「東京のオペラの森」は、東京都にとって本当に必要なフェスティバルなのだろうか。東京でのオペラ公演など、気が遠くなるほどたくさんある。さらに付け加えるというのなら、それなりの理由が必要だろう。 日本人を中心としたキャスティングを組むならまだわかる。でもメインとなるオペラ「エレクトラ」のソリスト(独唱歌手)はほぼ全員が外人。それも小澤氏が活躍しているウィーン国立歌劇場でおなじみのソリストばかりだ。 このプロダクションは後でウィーンでも上演されるらしく、噂によると、ウィーン側では制作費をかけずに1作できたと喜んでいるとか。都税をつぎ込んでウィーンを潤すのではしゃれにもならない。 またオーケストラも、本来なら都が運営する東京都交響楽団を入れるべきだと思うのだが、「東京のオペラの森管弦楽団」という、このために集めた楽団を使うという。どう見ても、東京都の音楽界の発展に寄与する催しとは思えないのである。本当の意味で自国の文化を保護する、振興するというのは、まず自分の国の芸術家を応援するのが筋というものだろう。 音楽ばかりでなく、3つある都立の図書館の所蔵本を、3館でだぶっているものを捨てさせるなど、石原氏の文化政策は「文化人」知事にふさわしいとは思えない。「東京のオペラの森」にしても、東京の音楽家と聴衆のためを考えているというより、派手なアドバルーンをあげて目立ちたいという意志の方が強いのではないか。日の丸、君が代ばかりが日本の文化ではない。世界に誇れる音楽家を育てることも、自国の文化の振興なのではないだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
February 24, 2005 12:56:27 AM
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