3310056 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
February 13, 2009
XML
カテゴリ:音楽

 東京二期会の新制作「ラ・トラヴィアータ(=椿姫)」を観ました。
 宮本亜門演出のプロダクションです。

 観たのはBキャストの日。主役ヴィオレッタの安藤赴美子さんに、興味があったからです。
 安藤さんは以前、私が企画してい朝日カルチャーセンターのレクチャーコンサートで、モーツァルト・オペラのアリアを4曲歌っていただいたのですが、「コジ」のフィオルディリージの大アリアを危なげなく歌えるテクニックと、リリカルで美しい声、華のある容姿で、「大型新人」の印象を持ちました。
 今回はオーディションで主役を射止めたとのこと、ぜひ聴いて見たいと思ったのです。

 果たして、大健闘でした。
 第1幕では、高音域でのコロラトゥーラにちょっと危うさを感じたものの、その後は安定。やや細い、リリカルでみずみずしい声は聴いていて快く(ちょっとエヴァ・メイを思わせます)、また第3幕のアリアでは、聴衆を引き込む表現力を発揮、新しいプリマが誕生したことを感じさせました。
 これまで大きな役は、二期会の「ボエーム」のムゼッタくらいだったといいますから、大型の可能性十分です。
 夏には、佐渡裕プロデュース「カルメン」で、ミカエラを歌う予定だそうで、これは聴いてみたいものです。

 さて、そのほかの歌手ですが、残念ながら満足とはいいがたいものでした。
 アルフレード役の井ノ上了吏は、「不調」だけでは割り切れないものを感じましたし(いい時はいいのですが)、ジェルモン役の青戸知は、この役にあっているか疑問でした。
 ほかの歌手はいないのだろうか、と思ってしまったのは残念です。

 対照的に素晴らしかったのは、指揮のアントネッロ・アッレマンディ。ダイナミックレンジが広いのですが過剰でなく、自然で、リズム感があり、弱音も美しいし、「間」の取り方も絶妙。アッレマンディは2005年の二期会のトラヴィアータも振っていますが、まるで精彩がなかったそのときとは別人のようでした。

 演出は、あまりいいとは思えませんでした。
 まず舞台が地味で暗く、見えづらい。演出上の意図は別にして、見えにくいほど暗い舞台というのは、あまり観客に親切とは思えません。
 舞台上に、右上がりで大きく傾斜をつけた装置は、なんだかウィリー・デッカーのよう(新国の「軍人たち」を思い出しました)。会場であった某記者いわく、「デッカーとクレーマーをまぜたよう」。
 色彩感覚も、ドイツの亜流のようでした。
 演技上でとくに気になったのは第1幕。動きが多すぎ(アルフレードとドゥフォールが取っ組み合いのようなことばかりやっている)、戦闘的なのです。やはりミュージカルを得意とするひとの感覚なのでしょうか。ヴェルディは「トラヴィアータ」で、戦闘的な音楽は書いていないと思うので、違和感がありました。
 また、第1幕で、パーティの参加者がみな全身を黒塗りにしていましたが、これは「ヴィオレッタの回想なので、参加者は亡霊なのだ」という解説を会場で知人からききましたが、暗い舞台がよけい暗くなり、あまり効果が出ているようには感じられませんでした。 
 よかったのは第2幕第2場。皆にせめられるアルフレードを、ヴィオレッタがかばって彼に寄り添う。その部分は、音楽とも調和して納得でした。

 主役の奮闘と指揮のよさでもった舞台。もう少し、全体的な水準が上がるといいのですが。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  February 14, 2009 11:31:58 PM


PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

プロフィール

CasaHIRO

CasaHIRO

フリーページ

コメント新着

バックナンバー

April , 2024

© Rakuten Group, Inc.